48、もう一人の追っ手
「はっ……はっ……くっ……」
ミリセント教会はロリポップからだとアルフォード邸と反対方向だ。
ネロとセリーヌは大通りに出て馬車の通る道を行った。
私は路地裏をくぐり抜け、人目につかない道を行く。
ネロたちよりはずいぶん遠回りになるが、走っているので同じぐらいに到着するだろうか。
ロリポップから離れてから、大通りを少しだけ覗いて見たが、店の前はたくさんの馬と軍服のような衣装の男たちが取り囲んでいた。
それを見ただけでぞっとした。
あんな物々しい人たちに捕まって無事に帰れるわけがない。
やっぱり牢屋に入れられて、もしかして絵の具の出所を白状させるために拷問でもされるんだろうか。
拷問されたところで、異世界から持ってきましたなんて、誰が信じるだろう。
きっと酷い目にあって殺されるんだ。
ともかくケンの言うようにアルフォード領から離れるしかない。
今のところはケンが長く留めておいてくれたらしく、追いかけてくる気配はない。
たぶんスランの工房か、ヨハンの家を探しに行ってるんだろう。
だが馬の足では見つかったら終わりだ。
今の内に出来るだけ遠くに行かなければ。
私は路地裏をひたすら駆けていた。
その後ろ姿を見つめる男にも気付かずに……。
◇
「やはりロイ様のおっしゃった通り、裏口から出てきましたね」
目立たない場所に停めた地味な黒馬車の中で、ウッズは向かいに座る主人に告げた。
「ご命令通り、配下の者数名で絵師の行方を追わせています」
ロイは指輪の光る手で頬杖をついた。
「だが……レナルドには先を越されてしまったな。レナルドがロリポップに着く前に彼女を確保しておきたかったんだが……」
「はい。先駆けが到着した時には、店の前にレナルド様の私兵が群がっていたようです」
ロイは眉間を寄せて考え込んだ。
「あいつは彼女をどうするつもりなんだ?」
「分かりませんが、あの物々しい様子から考えると、やはり捕えて拷問するつもりかもしれません。あの方なら充分ありえるでしょう」
「……」
ロイはふうっとため息をついた。
「レナルドが彼女を捕えたなら面倒なことになる。かと言って私があからさまにあいつの邪魔をするわけにもいかない。私と知れぬようにレナルドの邪魔をして彼女を逃がすんだ」
ウッズは心得ていたように頷いた。
「はい。すでに配下の者にはそのように伝えています」
「それから絵師と一緒にロリポップを出たという銀のケースを持った少年。その者の行く先も追ってるんだろうな」
「はい。もう一人若い女性と一緒に北西に向かっているようです」
「絵師の行く手と……方角は同じか……」
「どこかで落ち合うつもりかもしれません」
ロイは頷いた。
「よし。我々も北西に向かって出発しよう。レナルドに見つからぬようにこっそりな」
「はい。かしこまりました」
ウッズは深く頭を下げた。
次話タイトルは「まさか」です




