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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第二章 レイラ、ちょっと金持ちになる
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46、追っ手

「アルフォード様のご子息が? どうして?」


 ケンは驚いた顔で聞き返した。


「分かりませんが、ずいぶん物々しい様子なんです。軍人のような男たちを大勢従えて、まるで大罪人でも捕えにきたかのようで……」


「大罪人……」


 セリーヌが青ざめた。


「ま、まさか、私が飴のケースを盗んだことがアルフォード様の耳に?」


 そんな、まさか。

 飴のケース一個で、そこまでするはずが……。


 なんだかとても嫌な予感がしてきたのだけど。


「いいえ。ご子息は、ブリキのケースの絵を描いた絵師を連れて来いとおっしゃってまして」


「絵師を?」


 ケンは私に視線を向けた。


 や、やっぱり?


 やっぱり、あのこと?


「レイラ、何か心当たりはあるのか?」


「あると言えばあるような……」


 ど、どうしよう。

 もはやケンと婚約とか、ヨハンの家を出るとか、そんなレベルの話ではない。


 もしかして、私はエミリアの言ってた大罪人?

 門外不出の絵の具を盗んだ大罪人になってるの?


「レイラ、一体どういうことなんだ?」


「試作品のケースに描いたサインのことだと思うの」


「サイン?」


「その絵の具がアルフォード家の門外不出の絵の具と同じ色らしいの」


「なんだって?!!」


 その場の全員が叫んだ。


「なんでそんな絵の具をレイラが持ってるんだ?」


「そ、それは……今は話しているヒマはないんだけど……、とにかく、そのことで捕えに来たんなら、たぶん死罪だと思うの……」


「まさか……」


 どうしよう。

 ここまでなの?

 美少女生活は苦労も多かったけど、結構楽しんできたのに。

 ネロを置いて、私は牢屋に行くしかないの?

 こんな中途半端なままに……。



「逃げるんだ、レイラ」


 沈黙の中、ケンが決心したように告げた。


「で、でも逃げたりしたらケンに迷惑が……」


「俺のことはいい。俺がごまかしてる間に、裏口から逃げるんだ」


「裏口……」


 どうやら店と反対側にも出口があるらしい。


「どこか……目立たない空き家にでも身をかくしてるんだ。ほとぼりが冷めた頃に俺が迎えに行く。それから馬車でアルフォード領を離れるんだ」


「そんなことが……出来るかしら……。見つかったらあなたまで捕えられるわ」


「俺は大丈夫だ。レイラは自分のことだけ考えろ。どこか……隠れられそうな場所は……」


 その時、今まで黙っていたセリーヌが声を上げた。


「私がいい場所を知ってるわ。街外れの古い教会なの。そこの牧師さんは私の叔父だから、私が頼んであげる。ミリセント教会というの」


「ミリセント教会か。聞いたことはある」


「とても古い教会だから、ボロっちいわりに有名なの。人に聞けばすぐに見つけられるわ」


「だが、お前はレイラを陥れるようなことばかりしてきたくせに、なんだって急に……」


 ケンが怪しんだ。


「私はレイラに美人にしてもらって、心を入れ替えたの。助けてもらった恩人だと思ってるわ。今度は私がレイラを助けてあげたいの」


「セリーヌ……」


 まさかセリーヌに助けられるとは思わなかった。


「よし! じゃあそこにしばらく隠れていろ」


「私が案内するわ」


 セリーヌが告げて、私は急いでジュラルミンケースにメイク道具を収めた。

 鍵を閉めて手に持つ。これだけは何があっても持っていく。


 でも……。


 ネロは……。


 犯罪者として追われる私が連れていくわけにはいかない。

 こんな私と一緒に行くぐらいなら、ヨハンの家にいた方がマシだ。


 不安そうに見上げるネロの頬にそっと手を当てる。

 僅かの間だったけど、愛すべき弟だった。


 素直で真面目で、そして誰よりも優しい弟。


 ネロの純真な心にブス(じょ)二十年の暗く(すさ)んだ心がどれほど清く洗い流されたことか。

 じわりと涙が溢れる。


「ごめんね、ネロ。あなたを幸せにしたいと思ってたのに……。私の力が足りないばかりに……結局何も出来なかったわね。ごめんね」


 ネロを力一杯に抱き締め、ケンを見上げる。


「ケン、最後のお願い。ネロをお願い。ネロのことをどうかお願いします」


 深く深く頭を下げた。



「レイラ……。分かった。任せろ」


 ケンが頷き、私は覚悟を決めて立ち上がった。

 そしてセリーヌと共に部屋の出口に向かう。


 だが。


 その私の背にネロが言った。




「僕も行く!」



次話タイトルは「ネロの選んだ道」です

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