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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第二章 レイラ、ちょっと金持ちになる

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24、出発の朝

「飴のケースは全部馬車に詰め込んだし……これで用意はいいな」


 ロリポップの店内には朝もまだ暗いうちに従業員全員が集まっていた。

 ケンはグレーのスリーピースに蝶ネクタイをしている。

 スリーピースと言っても、膝までの短パンだ。

 それがこの世界の正装らしい。

 そして白いタイツに茶色の革靴を履いている。

 頭には前世でいうところのハンチング帽。


 前世で出会ったら笑ってしまうような恰好だが、もう慣れた。

 慣れるとオシャレに見えてくるから不思議だ。

 ケンはよく似合っていた。


「坊ちゃん頼みましたよ。絶対最後まで残って下さいね」

「平民の店からアルフォード家に商品を納めるなんて凄いことです」

「俺たち坊ちゃんに一生ついていきますから」


 職人たちはよほど名誉なことなのか、意気込んでいる。

 飴職人なんていうと優男をイメージしがちだが、みんな筋肉隆々のまっちょマンだ。

 飴をのばすのは結構な筋力を使うらしく、鍛えなくともみんなこうなるらしい。


「お、あんた以前に会った貧民の子供じゃねえか」


 前にケンと一緒に私を追い払おうとした職人が驚いたように私を見た。

 ロリポップには何度か訪れていたものの、あれ以来会ってなかった。


「そうか。あんたがあの綺麗なケースを描いたのか。しかもすっかり綺麗になって見違えたじゃねえか。あの時は失礼なことを言って悪かったな」

「いえ、もう昔のことですから……」


 私はエミリアのワンピースにエプロンをつけ、布靴に白タイツを履いて、手袋と帽子も身につけた。ワンピースと同じブルーを基調とした帽子には緑のリボンがついている。

 エミリアのセンスは垢抜けていて、出しゃばりすぎず、清潔感のあるもので揃えてくれた。


「これが貧民の子供だって? うそだろ? どこの令嬢かと思ったぜ」

「ケン坊ちゃんもすみにおけねえ。二人で並んでるとお似合いじゃないっすか」

「この綺麗なおじょうちゃんが、あのケースの絵を描いたのか? すげえな」


 みんな口々に褒め称えてくれた。


 ただ一人、あの女店員だけが唇を噛みしめ、憎々しげに私を見ている。


 うう、そんなに睨まないで。

 誰よりも彼女の気持ちが分かるから苦しい。


 だがさらに追い討ちをかけるようにロリポップの店主でもあるケンの養父が言った。


「ケンは自分に厳しく他人にも冷たいところがあったが、最近少し丸くなったと思っていた。そうかい、お嬢さんみたいな子がそばにいてくれたからじゃな。ありがとう、レイラさん」


 好好爺といった雰囲気の店主と会ったのも今日が初めてだった。

 ニコニコと嬉しそうに私の手を取ってくれた。

 ケンを自分の本当の息子のように可愛がっているのがよく分かる。


「どうかケンのことをよろしく頼みます。こいつは口下手で不器用なところがあるから、他人から誤解を受けやすいんです。でも本当は気のいいやつなんです」


「は、はい。分かります」


 店主はケンのことをよく分かっている。私もだいたい同じ意見だ。

 そして私の返事を聞いて、心底ホッとしたように微笑んだ。


「あなたはケンのことをちゃんと分かってくれてるようだ。いやあ、良かった。本当に良かった。これで安心して店を任せて冥土に行ける」


 いや、そこまで安心しないで。安心しすぎでしょ。


「親父さん、やめて下さいよ。冥土なんて縁起でもない」


「親っさん、早まり過ぎですよ」

「まるでレイラさんが嫁にきたみたいっすよ」

「今から飴を納品に行くだけですからね」

「まあ、せっかく正装してるし、このまま結婚式を挙げてもいいっすけどね」


「ちょっ……、何言ってんですか、みんなして!」


 大人の職人たちにからかわれて、ケンが真っ赤になっている。


「ははっ。ケン坊ちゃん真っ赤ですよ」

「これは現実になる日も近いっすね」


「ばっ! 勝手に話を進めないで下さいよ。レイラが困ってるじゃないですか!」


 ケンはちらりと私を見て、頭を掻いた。


 みんなはそれを見て、さらにヒューヒューと冷やかす。


 あの皆さん……大事な納品を前に盛り上がるのはいいんだけど……。

 私はおそるおそる女店員を見た。


 そこには今にも私を刺し殺さんばかりの憎しみに満ちた目があった。

 そして耐え切れなくなったのか、ぷいっと身を翻してドアを開けて出て行った。


「あ、ちょっと待って……」


 思わず呼び止めたけど、何を言っていいかも分からない。

 何を言われたところで一層腹が立つだけだ。

 悲しいぐらいよく分かるの。


「なんだ、セリーヌのやつ」

「どうしたんだ、急に出て行って」

「あいつ最近イライラしてんだよな」

「俺たちにも偉そうで感じ悪いんだって」


 セ、セリーヌなんてしゃれた名前だったのね。

 やっと名前が分かったわ。今頃だけど。


「セリーヌ? 誰?」


 ケンが首を傾げた。


 いや、あんたよ!

 あんたは知ってなさいよ。


 気のいいやつではあるけど、ブスに無関心すぎるのよ!


 そこは頼むから直して!





   ………………………………………………………………


※現在のレイラの所持金 


    前回残金      ―  560

    ヨハンに二日分   ―  400

     (渡さなかった日もある)

    食費、湯宿代、他  ―  450

     (あまり風呂に入れてない)

    ブリキの絵付け   +  420

              ―――――――――――

               ― 990ルッコラ

                  (スランに借金)




次話タイトルは「ケンの告白?」です

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