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ブス女ですけど転生して美少女になりましたの。ほほほ。  作者: 夢見るライオン
第二章 レイラ、ちょっと金持ちになる

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21、ケンが優しい

 立ち去る女店員を見ながら、私の気持ちは複雑だった。


 名前も知らない女店員は、正直に、正直に言わせてもらうと……。



 ブスだった……。



 いや、彼女の名誉のために言うと、前世の私よりは何十倍もマシな希望あるブスだ。

 でも前世では紛れもなく同志であり、傷を舐め合い、時には恩を次のブスへと受け継ぎ合いながら悲しみを共有し合った仲間だった。


 なんか前世の自分を見ているようで辛い。


 いや、私ってあんなだった?

 美人を敵対視は……うん、してたな。


 私だって、あんたと同じルックスがあれば……とは、いつも思ってたな。


 美人を非難して陥れてやろうとは……したっけ?

 いや、それはしなかったと思うけど。


 ブスの度合いが違うものね。

 彼女の場合は私と違って希望あるブスであって、もしかしたら万が一にもケンが振り向いてくれるかもという淡い期待があるものね。


 だから私を蹴落としたいんだろう。


 希望も伸びしろもなかった私とは立場が違う。


 そうだとしてもブスは性格も悪い、なんて言われるような生き方はして欲しくない。

 最下層のブスを、とりあえず二十年間生き抜いてきた私としては……。


 あの程度のブスなら私のメイク術があれば、ちょっと美人かも……、ぐらいには仕上げる自信がある。


 人を蹴落とすよりも前向きに生きて欲しい。


「なんかうちの店員が酷いことばっか言って悪かったな」


 ケンは二人になると私に謝ってくれた。


「もしあいつのせいで嫌な思いをしてるならやめさせてもいいぞ。うちで働きたい平民は山ほどいる。親父さんの知り合いの娘だから雇ってるが、そこまで義理のある相手じゃない」


「そ、そんなことしなくていいわ。私なら大丈夫だから。彼女をやめさせたりしないで」


 私のために言ってくれてるのは分かるけど、前世の私のことを言われてるようで胸が痛む。

 前世の私はきっと彼女と同じ立場だ。


 好きな人に名前も覚えてもらえず、気に入らなければいつでもクビにして心も痛まない。

 前世の野球部男の私への扱いは、まさにそれだった。


「レイラは優しいな。ヨハンの家で苦労してきただろうに、真っ直ぐで……そして綺麗だ」


「え?」


 見上げる先にはケンの熱のこもったブルーの瞳があった。

 ドキンと心臓が跳ね上がる。


 前世ではそんな熱い目を向けられたことなんてなかった。

 こういう時はどうすればいいの?


 あわてて顔をうつむける。


 そして話をそらそうとして、今一番私の心に渦巻いている悩みが口からこぼれてしまった。


「わ、私、ヨハンの家を出ようと思うの」


 誰かに聞いて欲しかった。

 でもスランはネロと近過ぎて話せなかった。


「ヨハンの家を?」


 ケンは驚いたように私を見た。


「アンナ……母親が三日前に出て行ったわ。ヨハンは毎日酒びたりで、私が売上の200ルッコラを渡して生活してるの。生活って言っても食事も何もくれないわ。私とネロはブリキのケースを売ったお金で生活してるの」


「ヨハンのやつ……そこまで落ちぶれたのか……」


 ケンは呆れたようにため息をついた。


「今はアンナが出て行ってメソメソ泣いてるばかりだけど、いつ豹変して暴力をふるうか分からない。ヨハンがいる限り、私とネロはこの貧しさから抜け出せないわ」


「そうだな。俺もそう思うぜ」


「でもネロが私についてきてくれるか分からない。ネロはあんな親でもヨハンのことを慕ってるの。私は……私はネロを置いては行けないわ……」


「レイラ……」


 どうすればいいのか本当に分からなくなっていた。

 ヨハンからは離れるべきだと思う。

 でもそれは、親としての愛着がまるでない私が俯瞰ふかんしてみて思うこと。

 ケンにしてもそうだ。


 他人の目から見れば答えなんて一つしかない。


 でも母親に捨てられ、一層愛着の拠り所となっている父親を見捨てて離れるのは、ネロには辛すぎる選択に違いない。


 それに私だって、絶対ネロを幸せに出来るのかと聞かれたら、分からない。

 私が父親から引き離して、さらに不幸にしてしまったら……。


 そう考えると、ひやりと心が凍りつく。


「俺も……両親が立て続けに死んで、どうしたらいいのか分からない時期があった。スランはすぐにブリキ職人の親父さんに気に入られて居場所を見つけたのに、俺は何もなくて街を彷徨っていた。もうどうでもいいや、このまま死んでもいいって街角にうずくまって震えてた時にこの店の親父さんが拾ってくれた」


「そうだったの……」


 スランの話から、ケンは順風満帆に平民の養子になれたんだと思ってた。

 ケンも苦労してたんだ。


「諦めるなよ、レイラ。きっと最善の道はどこかにある」


「ケン……」


「俺も考えてやるから。姉弟で暮らせる場所がないか探してやる。だから心配するな」


 ケンはそう言って私の頭をぽんぽんと撫ぜた。


 うう。

 ケンが優しい。


 泣いてしまいそうなほど優しい。


 いい人なんじゃない……。


 なによ。


 美人にはみんないい人なんじゃない。


 ブスの私には、そんな優しい一面、全然見せてくれなかったくせに。


 ケンが前世の野球部男とまったく同じ人間というわけではないのかもしれないけど。


 なんだか複雑な気持ちになってしまう。




次話タイトルは「アルフォード家の付き添い人」です

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― 新着の感想 ―
[一言] 充分主人公も性格ブスだと思う
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