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ステインガルドの魔犬 ~ただの犬だけど、俺は彼女の相棒です~  作者: 八波草三郎
放浪の旅路

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ザウバの豊穣祭(3)

 ギャスモントが勝ちたいと息巻いているのは特に商会管理部だ。曰く、交易管理部とは並行部署になるので、伝統的に対抗心が強いらしい。


 交易を管理しているのは交易管理部だけじゃない。むしろ扱っている物流量を問えば商会管理部のほうが遥かに大きい。

 これは、交易を行っているのが主に大規模から中規模商会であるからだ。その商会の交易部門まで関与しているのが商会管理部になるので、自動的に大部分の交易管理に携わる形になっちまう。

 そういう大規模交易は国家間交渉にも関わってくるから、王国との折衝なども必要になってくる。それを担ってきたのが商会管理部である以上、交易管理部が口出しはできない。


 じゃあ、交易管理部が何をやっているかといえば、親父さんのような個人及び小規模交易商の物品入出管理や斡旋などだ。

 王国の定める交易量規定を超えないよう個々の取引量を監視したり、国境を越えて物品を出荷したい商店などに交易手形を持つ交易商を紹介する業務を行ってるのさ。

 だからシェラードは交易管理部と親密な関係にあったってわけ。


「いつも強いのは商店管理部だ。ここに負けるのは仕方ない。はっきり言って、市民の流行り廃りを最も把握している商店には太刀打ちできない」

「あ、なるほど」

 一番需要を知ってるってわけか。

「それに緋牛(レッドカウ)牧場との関係も強い。素材確保には差を空けられてるんだ」


 王都ザウバの近郊にはこの緋牛牧場がある。王国管理の大規模牧場だけど、加工まで一括管理をしてるから顧客はほとんど商店になる。大手商会でも入り込む余地など無い。

 そこで生産される乳製品が王都の甘味を支えていると言っても過言じゃないらしい。そこと関係性の強い商店管理部は、素材調達の要を握っているようなもんなんだとさ。


「あそこ、今輪(ことし)もそうそうに商品の宣伝を始めましたもんね。ヨーグルトソースクッキーらしいっすよ」

 うお、何だその美味そうな響きは!

「な、名前だけでお腹が鳴っちゃいそうです」

 本当に鳴ったぞ、相棒。

「ああ、別容器のヨーグルトソースにクッキーを浸して食べる品物って話だ。若者や女性の購買意欲をそそる趣向をよく解っているよな?」

「食べたい……」

 おいおい、ここに既に虜になってる奴がいるぜ?


 それどころじゃないだろ? 本気で手を貸す気になってたんじゃないのかよ。とりあえず、その茶色いぴらぴらのは何なんだ? 食い物なら俺にもくれよ。

 相棒の肘を鼻先でつついて促す。なんか香ばしい匂いがして堪らないんだってば!


「あっ、忘れてた」

 忘れんな。

「それで、これが交易管理部の商品なんですか?」

「そうだよ。それが大麦クリームの素材なんだ」

 大麦クリーム? 荒い皮紙みたいにしか見えないぜ?

「これを巻いて、中にクリームを搾り込んで完成なんだ」


 ギャスモントはもう一枚手にしたそれをくるくると巻いて見せる。ぱりっとした見た目のわりに柔らかいのか。

 なるほど、その棘みたいな三角形の中にクリームを搾り込むわけだな。手に持って食べやすい、露店向きの品物になるって寸法か。


「この皮は、粥にして煮詰めた大麦を鉄板の上に広げて焼いた物。それだとぱりぱりに固くなってしまうから、カシナ小麦を加えて繋ぎにしてる。だからこのくらい柔らかくできてるんだ」

「へぇ、そうなんですね。それでかりかりの手触りなのに柔らかくもあるのかぁ」


 リーエは少しちぎって口にする。しばらくもぐもぐしてたが納得した風だ。

 俺にもくれよ、くれくれ。ふう、やっと分け前がきた。


「ぱりっとした食感なんだけど、そんなに固くないんですね? それでいてほのかに甘い」

 香ばしくて歯触りもあるのに、口の中でふやけて甘くなってくじゃん。こいつはなかなか。

「悪くないだろう? しかもこれは皮だから後味になるんだ。メインは二種類。モノリコートクリームとフルーツ入り生クリーム。如何なもんだね?」

「わあ、すごい! 選べる点は大きいですよ? 女の子の意見として」

「よし! 良い反応があったのは好材料だ」

 想像しただけで涎が垂れそうじゃん。


 でも妙な話だな? 話し合ってたってことはなんか問題があるってんだろ? メニューとしては出来上がってんじゃないのか?


「協議中って、他にもメニューを増やそうとなさってたのですか?」

 相棒に、若い娘の希望を聞きたがってるのか?

「いや、露店で売るんだから、それ以上増やすと捌くのに時間が掛かって、お客さんの回転が悪くなるから二種類で十分だと思ってるっす」

 おお、そんなことまで考えてんのか、若いの。

「ただ、お客さんの層をフュリーエンヌさんみたいな若い子とか子供を狙ってるっすから、単価を下げたいんすよ」

「そうですね。美味しくてもあまり高すぎると何度も食べたいって思えなくなっちゃいますね」

「豊穣祭は三陽(みっか)もやるんすから、毎陽(まいにち)でも買いに来てくれるようじゃないと数が稼げないから」

 勝負だもんな。

「おいくらに設定されているんですか?」

「今のところ80ガテ(八百円)なんだ」

 そりゃちょっと高いぜ、ギャスモントのおっちゃん。


 相棒が話に夢中な隙に大麦の皮は舐めるけどなぺろぺろぺろぺーろぺろぺろ。

第七十三話は交易管理部の商品の話でした。こんな風にフュリーエンヌは商品開発に関わっていくのです。次回は明らかになる問題点。

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