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ステインガルドの魔犬 ~ただの犬だけど、俺は彼女の相棒です~  作者: 八波草三郎
エピローグ

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145/146

肖像画

 ふぃー、やっぱり密林は暑いぜ。相棒が使ってた部屋は涼しー。


 帰ってきてすぐに入ったこの部屋は赤燐宮の中だから涼風乾燥刻印が施してある。外より断然過ごしやすい。絨毯の上に寝そべってもはぁはぁしないですむぜ。


 リーエはまだ荷物をほとんどここに置いてやがるな。目が回るほど忙しいのは分かるが、そろそろ新しい部屋に持ってけよ。


 壁の真ん中、目立つ場所には茶器箪笥(ティークローゼット)が据えてある。その上には額に入れられた三枚の肖像画が飾られてるんだ。


 一枚目は椅子に座った濃い紫の髪の美人が穏やかに微笑んでる。その人間の名はクレアヴィス。相棒のお袋さんだ。ずっと持ち歩いていた一枚目がそこにある。


 二枚目は十歳の頃の、無邪気な笑顔の相棒の横に俺が座ってる。リーエの両肩に優しく手を置いた茶色い髪の紳士はシェラード。親父さんだ。遺影になっちまった一枚もお袋さんの隣に置かれている。


 その隣は、芸術に優れたエルフィンが描いてくれた、大きめで真新しい一枚。

 若草の上に直接座ってる真ん中の相棒の右隣りで、緑の目を細めて笑いながら腰を抱いているノイン。

 左隣には、大胆に青髪を放り出して座るチャムが右腕を取って鮮やかに微笑んでいる。

 横に座って、鮮やかな白い羽を自慢するように胸を反らしているのはラウディ。

 皆の前に長々と寝そべっているのは俺。

 そして、後ろで前かがみに相棒とノインの肩に手を置いて笑っているのがあいつだ。


 黒髪黒瞳のそいつの名前はカイ・ルドウ。一部じゃ界渡りの武神って呼ばれている雄。あの武神教信徒が神と崇めているのがこいつだ。


 なんの因果か、この雄が妙に俺を気に入ってあっちこっちと連れ回しやがる。今だってやっと東方から帰ってきたところなんだ。

 面倒なんだけど、こいつも美味いもんは食わしてくれるし、相棒に本当の母親みたいに接してくれるチャムの頼みはどうにも断れない。俺を傍に置いといたら抑えが利くから都合がいいんだとさ。


 ノインも姉貴に呼び出された時には俺を探し回りやがる。構うのに夢中になれば、余計な用事を頼まれないで済むとか言ってな。

 ここの王家の皆もすっかり俺の尻尾の語り掛けを憶えてくれたから、そんなに苦労はしなくなった。それに、なぜだかどこの部屋に行っても俺用のブラシが備え付けられているじゃん。


 さてと、そろそろ相棒の様子でも見に行くか。


「ねえ、あなた。帰ってきたんならおちびちゃんたちと遊んであげてよ」

 ん? ライラ、ちょっと相棒をな……。

「もう! 結婚したばかりなんだから、二人っきりにさせてあげなさいって言ってるじゃない」

 そうは言ってもな……。

「いいから相手して。大変なんだから」

「おとうちゃんだー」

「おとうちゃん、あそぼー」

「しっぽふさふさー」

 お前らだってすぐにこうなるって。雲狼(クラウドウルフ)のライラと俺の仔なんだからな。


 わらわらとたかってくる仔狼を背中に乗せて外へと向かう。あの部屋で遊ばせたら色々壊しちまうじゃん。やんちゃな盛りだからな。


「頼まれたからって赤燐宮を空けすぎよ」

 そりゃ、あいつに言ってくれよ。

「カイ様にそんなこと言えないわ」

 俺にはいいのかよ。


 な、そんなにへそを曲げるなよ? 俺はもう何も要らないんだ。

 別嬪のお前が嬉しそうに尻尾を振っている姿と、あともう一つだけ……。


 あの肖像画、皆の真ん中で俺の子供五匹を腕いっぱいに抱き締めて、満面の笑みを浮かべている相棒の姿。それだけでもう十分なんだ。


 愛してるぜ、ライラぺろぺろぺろぺーろぺろぺろ。



  〈(ぺろん)

第百四十四話はその後の話でした。完結しました。ライラと番になったキグノには子供ができています。そして、きっとフュリーエンヌにも……。

この最終話と同時にあとがきが更新されています。そこで本作に関する仕掛けを公表してありますので、よろしければもう少しお時間をいただきたく存じます。

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