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7.女騎士 アンナ

四月のお客様ラッシュが始まって一週間、来店の濁流は激しくなるばかりだ。


笹森がうまく勇者を魔王にけしかけたものの効果はなく休む間もなく働く。


それでも気力を振り絞りがんばる。


結果、来客数がどんどん増える。異世界にも日本のおもてなし精神は通用するようだ。



「この店ってお釣りごまかさないよね〜。」


「ここの食品で腐ってるものとか見たことないよね〜。」



などとごく当たり前のようにことが高評価に繋がる。



異世界の、主に夜行性の種族の中高生の間で評判が広がっているようで加速度的に俺たちの仕事量は増えていった。





そうすると当然、変な客も増えるわけで……



ポロロンポロローン



鎧をつけた女騎士が入ってくる。


そしてーーーー


「この店を調査させて頂きます。」



何言ってんだ?



「お客様、いきなり調査と言われても……。」



俺も笹森も意味がわからず戸惑う。


女騎士もそれに気づいたようで



「あっ、急に失礼しました。私は魔法使い養成学校で生徒指導をしています、アンナと申します。」


「アンナさんですね。 それで調査というのはどういうことですか?」


「最近、魔法学校の生徒がこの店に大勢通っていると聞きまして。それでこの店に問題があるないか調査しに来たのです。」


なるほどな。学校の先生、しかも生徒指導の先生なら生徒の動向には注意しなきゃいけないしな。


営業の邪魔にならない範囲内で店内の調査を認める。



「ありがとうございます。では早速調査させていただきます。」


女騎士アンナはそう言ってお辞儀をし、店の商品をチェックする。



礼儀正しい感じだし特に問題はないだろ、そう思っていた。


しかしそれは大きな間違いだった。


雑誌コーナを見ていたアンナは顔を真っ赤にして


「店員さん! こんな雑誌、学生が来るところに置くなんて破廉恥です!」


そう言ってレジに雑誌を叩きつける。


俺は本棚の奥の方の成人雑誌か?と思ったのだが……


「このヤングジャ○プって本、なんで表紙に裸の女の人が描かれてるんですか⁈ 生徒に悪影響です!」



おいおい、まさかのヤングジャ○プ程度のエロでもダメなのか?


あと裸じゃなくてビキニな、それ。



どうやら異世界の不健全のラインは俺たちの世界より随分と低いらしい。



さらにアンナは別の商品にも目をつける。



「なんですかこれは! ゴムを売るなんて破廉恥です!」


うん、それ輪ゴムだよ?


「お客様、それのどこが破廉恥なんでしょうか……。」


「学生はこれでも破廉恥なことを連想するんです。」


そんなわけないだろ。


とは思ったがあくまでそれは俺達の基準の話だからな……。



「なんですかこれは!こんな白い液体を販売するなんて破廉恥です!」


うん、それはカルピスだね。


「それはジュースなのでどこも破廉恥ではないような気が……。」


「連想してしまうんです!」



ここら辺で俺はちょっと違和感を感じ始める。



アンナのチェックはまだまだ終わらない。



「なんですかこれは! 棒がうまいなんて破廉恥です!」


うまい棒にまで文句を言いはじめた。


ここで違和感は確信に変わる。



この女騎士がおかしいのだと。



アンナの理屈だとトウモロコシでさえ破廉恥だぞ? 常識に差があると言っても流石にこれはおかしすぎるだろう。



てゆーか、アンナ。ちょっと喜んでない?


なんかエロい知識を覚えはじめた中学生男子みたいだぞ?


今思えば成人雑誌がアンナのチェックから外れたのは恥ずかしかったからかもな。


中学生の頃は下ネタとか好きなくせにガチのエロには奥手って奴、結構いるからな。



この手のタイプの対処は簡単だ。



「お客様、お菓子や飲み物でそのような事を連想するなんて、連想する方が破廉恥なのでは?」



こういうタイプは自分が変態と思われるのを恥ずかしがる傾向がある。だからこう言ってしまえばーーーー



「なっ、なっ、そ、そんなことあるわけが……。あっ、そういえば仕事が残ってるんだった! では、失礼したな!」



アンナは顔を真っ赤にして逃げるように帰っていった。



これで一件落着、そう思ったのだが……



その後も定期的に店に来ては雑誌コーナを中心にチェックを入れる。


本人が言うには生徒の目が届く前にチェックしているらしいがどう考えても違うよなぁ……。



新たに面倒くさい常連が出来てしまったのであった。


日刊ランキング20位になりました!


前回より少し下がったもののそれでもとっても嬉しいです。


ブクマ、感想があると私のテンションとモチベーションが上がるのでよろしくお願いします!

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