3.魔王v s勇者
魔王、言うまでもなく魔物の中で最強の力を持つ存在だ。多分俺ぐらいデコピンで倒せるだろう。
俺は失礼がないように対応する。
「魔剣グラムの発送手続きですか? どちらに送るのでしょうか。」
てか、魔剣売っていいの? 勇者にかてなくなっちゃうんじゃない?
「えーとね、ここの住所、結構いい値段で落札されたんだよねー。」
魔王はオークションサイトの画面を見せる。
魔王がオークションて、イメージ崩壊待った無しだよ。
さっきのオークの逆だよ。真面目な優等生がちょっと乱暴な言葉使っただけで性格悪い奴みたくなる理論だよ。
ちょっと違うか。
どっちかっていうとマフィアのボスがブック○フで立ち読みしてたとかそんな感じか。
いや、そんなことはどうでもいい。
「魔剣グラム売って大丈夫なんですか? これってすごく価値のあるものなんじゃ……。」
「あーいいのいいの、やっぱ今って剣より情報の時代って感じじゃん? 勇者を切るよりもネットで叩いた方がダメージあるって気づいてさ。」
現代っ子か。 魔王がネットで戦うなよ。
「今の魔王軍の入軍基準もさ、剣術とか魔力よりプログラミングとか出来る方が評価高くてね。」
魔王軍、もはやただのIT企業だよ。
「あっ、ちょっと待って。魔剣の出品ツイッターに載せるから。」
魔王は剣と一緒に写真を撮る。
これ勇者にバレたら不味くないか?ネットにアップしたら速攻で討伐されるぞ。ネット語ってる割に全然ネットの危険な面を理解してないな。
もう面倒くさくなって何も考えず発送手続きを済ませる。
魔王は上機嫌で帰っていった。
てゆーか魔剣を発送していいのだろうか。思いっきり銃刀法違反を犯してる気がするのだが。
まぁいいか、バイトは後10分で終わる。次の人が来たらすぐに帰ってやる。
ポロロンポロローン
最後の客が来たようだ。
「すいません、店員さん。聖剣エクスカリバーの発送手続きお願いします。」
お前もか勇者。
「聖剣エクスカリバーを売ってもいいんですか? これって大事なものなんじゃないんですか?」
「いやさー、今ハマってるネットゲームがあってさ。それがけっこう課金要素多目でさ、金欠なんで売りに来た。」
魔王がまともに見える。魔王は一応勇者倒すこと考えていたもんな。
俺はもう面倒くさくなって手続きを済ませる。
ここは魔王と勇者の来店時間がずれてよかったと思うべきだろう。絶対喧嘩になっていたからーーーー
ポロロンポロローン
「店員さんごめーん。魔剣の鞘も送らなきゃいけないんだっ……勇者。」
「魔王か。」
最悪だ。出会ってはいけない2人が出会ってしまった。
いや、多分宿命とかあるだろうし出会わなければならない2人かもしれないけどさ……
なんでここで?
喧嘩なら魔王城とかでやれよ。
とはいえ、2人とも武器は出品済み、どうするんだ?
「おい勇者、ここでは店の迷惑になる。わかってるな?」
「ああ、もちろんだ。決着は……」
「「掲示板で!」」
バカかお前ら。
掲示板じゃ決着なんてつかねーよ。どっちも恥を晒して負けだよ。
まぁ、しかしここで喧嘩にならなくてよかった。何だかんだで魔王も勇者も最強の存在だからな。
俺はホッとする。
どうやら次のシフトの人が来たようだ。
取り敢えず今日は乗り切った。
明日からは2人体制なので少しは楽になるだろう。
なんて思っていたが、結果から言おう。
それは大きな間違いだった。