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1.異世界からのお客様

俺は(あたえ)(とおる)


19歳の大学生だ。


俺は三ヶ月前から近くのコンビニでアルバイトをしている。


初めは失敗ばかりで迷惑かけてばっかだったけど優しい先輩や店長のおかげでなんとか仕事にも慣れてきた。


だけど最近、一つ問題があって……。


「すいませーん、店員さん。矢ってどこにあるの?」


「矢、ですか? それはダーツとかに使うやつのことでしょうか。」


「君ねぇ、僕を見てよくそんな事が言えたねぇ。どう見ても僕、ケンタウロス族だろ?なら矢って言ったら狩りをするほうの矢に決まってるじゃないか。」


心の底から訳わかんねえよ。


なんでコンビニにケンタウロスが来るんだよ。


「さ、左様でございますか。申し訳ございません。当店では武器の類は扱っておりませんので……。」


「えっ⁈ ジェラルミン矢もないの?」


ねーよ。矢の種類言われてもわかんねーよ。


「申し訳ございません。」


「そうか、意外と品揃え悪いんだな。ここはいつでもなんでも買える店って聞いてたんだけどな。ないならいいや。」


品揃え悪くないから。そもそも日本で武器扱ってるコンビニなんて存在しないんだよ。


ケンタウロスのお客様はカッポカッポと帰ってゆく。


もうわかっただろ?


問題とは客のことだ。


一月ほど前から客に人間以外が混ざり始めたのだ。


理由は店長の新戦略。


深夜はどうしても客の数が減る。それを解消するため店長がーーーー


「日本は夜でもブラジルは昼だ!」


とか言い出した。


店長はもともと発明家気質だったため、コンビニの入り口とブラジルを自身の発明したワープホールでくっつけようとして失敗、異世界と繋がってしまった。


結果、このコンビニには異世界からの客が訪れることになったのだ。



ポロロンポロローン


おっ、話してるうちにまた新しい客が来たようだ。


「いらっしゃいませー。」


今度はちゃんと二足歩行だ。


なんか、フードは被っているけど見た目は普通だな。これは人間?


異世界とは言っても冒険者や村人だっている。一応人間が訪れることもあるのだ。


「あのー、店員さん。ちょっといいですか?」


可愛らしい声、女の子か?


「はい、どうしましたか?」


「えーと、今日はワイン買いに来たんですけど。千年物のワインって置いてますか?」


千年物?


「千年物って銘柄のワインってことですか?」


「やだなぁ、もう。千年前から寝かせてるワインに決まってじゃないですか。店員さんって天然なんですね。」


やだなぁ、千年前から寝かせてるワインがコンビニにあるわけないじゃないですか。


「申し訳ございません。当店では千年物は扱っておりませんので……。」


なんだこの子、さてはエルフか? 長寿で有名なエルフなのか?


「そうですか。なら五百年物で。」


なら、で提示する物じゃない。なんで五百年譲歩してまだ五百年のこってるんだよ。


「すいません、当店では百年を超えるワインは扱ってないんです。」


「えっ! よくそれでワインコーナーなんて設けましたね。エルフの里じゃ絶対やっていけませんよ?」


人間相手ならこれで充分なんですよ。


てかやっぱりエルフだったのか。


「じぁあビールでいいや、つまみは……」


ビールでいいんかい、とは思ったものの先程のケンタウロスのように何も買ってもらえないよりはマシだ。


俺はレジで会計する。


「ではお客様、全部で7点、合計2034円でございます。あと身分証のような物はお持ちですか? 」


エルフってスルメとか食べるんだな。なんかイメージと違う。


エルフの子は保険証? らしきものを財布から取り出す。


一応お酒を売るときは年齢確認しないとな。


なになに、エルフ歴20875年生まれか。


まず今年がエルフ歴何年かわかんねえよ。


「申し訳ございませんお客様。今年はエルフ歴何年ですか?」


しょうがないので聞いてみる。


するとエルフの子はクスッと笑って


「店員さんってほんと天然なんですね。今年はエルフ歴20890年ですよ。」




思いっきり未成年じゃねーか。




当然酒は売れない。


エルフは10歳から成年らしいがこのコンビニは日本に存在するからな。日本のルールに従ってもらおう。


とまあこんな感じだ。


俺は日々、理解不能な多様なニーズと戦っている。


これは俺と異世界からのお客様の奮闘記だ。



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