魔法少女マン ── 闘将!魔法少女男── 第一話 輝け!魔法少女マン! その1
ある人は愛の伝道師と褒め称え、またある人は深刻な変質者と罵る、
謎の人物『魔法少女マン』
少女なのに男?男なのに少女?
新世紀を揺さぶる価値の混迷、愛を見失った人間たち・・・・・・
闇の中から魔法少女マンは問いかける
「この世に果たしてロマンはあるか?人生を彩る愛はあるか?」
魔法少女マン ── 闘将!魔法少女男! ──
第一話『輝け!魔法少女マン!』※タイトルコール
八手いづみがカバンをかかえ、可燃ゴミの入った袋を持ち外に出ると
同じタイミングで隣室のドアが開き、黒く艶やかな長髪を緩やかに風になびかせながら
スラリとした長身の女性が出てきた。
「あ、おはようございます~」
「お、おはようございます!栄子さん!」
挨拶を受けたいづみは、少し緊張した面持ちで挨拶を返す。
そんないづみに女性は満面の笑顔で答えた。
「今日もお早いんですね」
「そ、そうですね、ハハハ」
赤くなった顔を気づかれないようにしながら、いづみはモジモジと照れ笑い。
『この女性の名は 古田栄子 城南女子大学に通う美人女子大生である。
モデルとしても活躍する栄子に魔法少女マン八手いづみは惚れているのだ!』
朝から栄子さんの笑顔が見れるとは!今日はツイてる!
嬉しさで顔がにやけそうになるのを必死にこらえるいづみ。
「あ、そうだ!ちょっと待っていてくださいね?」
「え?は、はい!」
栄子は一旦部屋の中に戻ると何かが入った袋をもって出てくる。
「はい!これ、」
「?これは?」
「田舎から送ってきた苺です。
よかったら会社の皆さんでどうぞ」
「おお~苺か~!僕大好きなんです!ありがとうございます!」
「うふふ、よかった!
それじゃあ、お仕事、頑張ってくださいね!」
「は、はい!頑張るます!」
「いってらっしゃい!」
「い、いってきま~す!」
栄子の激励にいづみの気分が高揚する。
いつにもまして舞い上がるいづみの足取りは軽い。
駅へ向かう途中にある商店街へと出た時、突如いづみの足が止まった。
そこは馴染みの玩具店『トキメキ屋』の前。
「んぁ?!こ・・・・・・これは?!」
そのウィンドウに新たに展示された一体の箱入りフィギュア。
箔押しのされた綺麗なパッケージにいづみの目が釘付けとなった。
「フフフ・・・・・・来たね、いづみちゃん」
店の中から中年の男性店主が現れ、いづみに声をかけてきた。
「おやっさん!」
『おやっさんと呼ばれた男の名は東堂三郎。
いづみの行きつけのこの玩具店『トキメキ屋』の主人である。
いづみのよき理解者であり、相談相手でもある彼は、
こう見えてけっこう謎多き人物なのだ!』
「おやっさん!これは、もしや!」
挨拶も忘れ、いづみが震える手でフィギュアを指し示す。
「そう」
いづみとおやっさんが同時に声を上げる。
「「魔法少女シリーズ第一作、魔法少女スウィーティーシュガーの終了記念超限定フィギュア!!」」
「ビンゴ!」
「しかもそのシリアルナンバー一桁!009!!」
「そのとーり!!」
彼らの言う『魔法少女スウィーティーシュガー』とは何か?
それは、
「TVで放送されている人気特撮TVドラマ『魔法少女スウィーティーシュガー』、
その作中で活躍する正義の魔法少女スウィーティーシュガーは
実は本当に実在する、本物の魔法少女だった!」
とのメタ設定でヒットしたTV番組。
この番組は大ヒットし映画も数本制作され
現在も派生シリーズが放送されている程の成功を収めた。
その始まり、偉大なるシリーズ第一作、
それが『魔法少女スウィーティーシュガー』なのである!
「そろそろいづみちゃんが来る頃だと思ってね・・・・・・
目立つ場所に展示しておいたんだよ」
「おやっさん・・・・・・あんたって人は・・・・・・!」
うるうると潤む目頭を抑えるいづみ。
「フフフ・・・・・どうだい?ハートキャッチされたかい?いづみちゃん?」
「オープンマイハートですよ!おやっさん!」
いづみが指でハートマークを作りポーズを決め
「ギュピーン!」
と、擬音を口にすると、おやっさんも同じポーズと擬音で返礼する。
「ギュピーン!」
『これが!心と心を結ぶハートとぅハート!魔法少女のキメポーズなのだ!』
「そうだろうそうだろう、うんうん」
ポーズをとったまま何やら悦に入っているおやっさんであったが
いづみは構わず、当然の疑問をぶつける。
「しかし、こんなレア物が放出されるなんて、いったいどんな経緯で此処に?」
「フフフフ・・・・・・それはね」
「それは?」
「シーーークレット!」
「も、もしや、何やらいわくつき?」
「ははは、なんてね、実はとあるお屋敷の個人ギャラリーが改装することになってね
そこからの放出品。
んで、それなりの値段で買い取ったわけ」
「ほうほう」
「いづみちゃんがほしがると思ってね」
ウインクするおやっさん。
「いづみちゃんなら買取価格ままでいいよ。
でも値段が値段だからね、無理には勧めないよ」
「おやっさん・・・」
したり顔で頷くおやっさんにいづみは深刻な面持ちで切り出した。
「それで、おやっさん・・・・・・これは一体おいくら万円です?」
おやっさんはいづみの耳に口を寄せてぼそっと囁く。
「・・・・・・」
「おう・・・・・・そんなに・・・・・・」
いづみの表情が深刻な影をおび、絞り出すような声で呟いたのをみて
おやっさんが不敵な笑みを浮かべ言った。
「分割払いも可能です」
『おやっさんの提案にいづみは考える!めっちゃ考える!
貯金を切り崩せば一括払いも可能だが、貯金は万が一の事態に備えた生命線!
安易に使う事はできない!!どうする?いづみ!ご利用は計画的に!!』
「・・・・・・・・・・・・分割払いで、お願いします」
涙で血の大河を渡るかのような決意で声を絞り出したいづみに、おやっさんがしれっと答えた。
「まいどあり~!」
二人は店内に入っていく。
早速、ウィンドウから取り出したフィギュアをいづみに手渡し、おやっさんが問い掛ける。
「んで、どうする?後で家に届けるかい?」
「いや、このまま持っていきます」
「そうかい?なくさないように気をつけてね」
「ははは、おやっさん、流石に無くしたりはしませんよ!じゃ!」
「は~い、いってらっしゃい!」
「いってきまーす!」
やはり今日は朝からツイている。
いや、神がかっているといってもいい。
やはり、日々の努力を魔法少女の神『魔法少女神』が認めてご褒美をくださったのだろうか?
ハートが温かみで満たされていく気がする・・・・・・
などと考えながら
「ほっこり!」
と、テンションマックスで奇声をあげながら喜び駆け出す彼を見る周囲の目が
ドン引きしている事も気にもとめず
いづみは会社へと向かい意気揚々と歩き出すのだった。
つづく




