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異世界。

・・・。

今俺は寝ているのか。


初めて眠りから覚める前に自分が就寝している事に気付いた。

きっと意識は覚醒したが体は寝ているんだろう。

目を開ければ俺は目覚める。開けなくてもそのうち体が勝手に動き出すだろう。

このまま寝ていてもいいのだがお腹が空いた。よし、チョコを食おうチョコを。

・・・分かってる、分かってるけどこれが慣れってやつなんだろうか。朝からチョコを食べようって発想になるのが怖い。ちゃんとした朝ごはんが食べられる時が来るのはいつになるんだろうか。

よし起き


ふと思った。俺のベッドはこんなにふかふかしていない。いいにおいもしない。あったかい掛布団なんてうちにはない。

・・・思い出した。俺は今外泊しているんだ。

外泊、いやむしろ野宿?どちらにせよ今は家じゃない。家の近くの外だ。

家の近くの外で寝ているを文字におこしたらさぞかし謎だろうな。

違うそうじゃない。まずは目を開けて外に出て家に入りチョコを食うんだろ。

まだ疲れているのか、そこそこ重たい瞼を開ける。


・・・あれ、作業員の皆は。

それよかこのベッド。何でうちの玄関前にあるんだ。それに昨日は家を取り囲むように配置されていたカラーコーンや重機も見当たらない。

加えて俺はきゅーけーじょの中で寝ていた筈だ。それが何で。

撤収作業に入るとしても俺の事は起こすはずだ。俺を起こさない為にわざわざベッドを置いて帰るような真似もしないだろう。

ここで振り出しに戻る。では何故。

疑問が解けないうちに俺はゆっくりとベッドから立つ。

そしてこの”不審物”を今一度見やる。

うーん、別段不思議な点はない。あるとすればこんな豪勢なベッド、どうやってこんなところまで運んできたか。


・・・運んできた?


あの、おじさんのような声の人はなんて言ってた?


「うちの奴が作ったんですよ多分」




作った、そう彼は言っていた。

そして「多分」と言っていることからして彼はベッド制作に関係していない。

更にはベッドが作られていることを普通かの様に振舞っていた。従業員がベッドを作るのが当然かの様に。

一般的に考えても野外作業でベッドを作るのは異常だ。泊まり込みの作業になるとしても寝袋程度が妥当だろう。


何より異常なのがこれを作ったという作業員だ。

こんな大それたものをたった数時間、俺がふらついている間に作ってのけた作業員が異常だ。

俺が家を出た時には作業をしていなかった。そのあとすぐに何の作業かは知らないが自宅の前で作業、そしてベッド工作を開始したとしても完成どころか骨組みすらまともに作れないだろう。

この金であろう支柱をここまで緻密に作り上げるには最低一週間前後は掛かる気がする。作ったことがないから正確な事は何一つ言えないが。

仮に加工のしやすいものであってもこれだけの速さで作り上げるのは不可能と考えていいだろう。


それを作ったという彼らは何者なのか。

知らない事は恐怖だと言うが、目の当たりにしてなお謎だというこの状況は何と言い表せばいいだろう。

恐怖なんて言う次元にはとうに居ない。分からないからだ。

今、何なのかが何も分かっていないのだ。分からない事すら分からない。

あれ、俺は今何が分からないのだろうか。

それすら分からなくなってきた。混乱しているのだろうか。

もういいや、わっかんね、俺なんもわっかんねえ。

脳内で自棄になるほどに混乱していることが分かる。が、本当に何も分からない。


「・・・とりあえず家に入りたい」

考えても無駄だ、ということとブドウ糖が勿体ないと言うことに気付き、一旦ベッドの件は忘れることにした。

ふらつき覚束ない足を玄関までの短い距離に、毎度のことながら息を切らしつつ移動する。

ポケットの中をごそごそ弄り、好きなキャラのホルダーが付いた鍵を取り出し、慣れた手つきで鍵穴に差し込み手首を捻る。

欠伸をしながらドアを開ける。


玄関を開けると目の前を廊下が走り、右手正面に階段が見える。

左手正面には木目調のトイレ。

右側は壁だが左側には扉、中はリビングだ。


靴を乱暴に脱ぎ捨て、素面の癖、酔った様にくらくらになりながら左側、リビングのドアを開ける。


なんだ・・・チュンチュンと小鳥が五月蠅いな。

耳障りな程に近くに聞こえるその鳴き声を、まさか家の中から聞こえてきているものだとは思う筈もない。



目の前の光景は。

本来リビングであるはずのこの扉の先が。


「・・・な」


草木生い茂る森林の中だとは。思う筈もないだろう。





自分、部屋、異世界。





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