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第3話:滅びの道

俺は拘束されていた女の子と隣にいた男性の縄を解いた。

その後もその他の人の縄も解いた。

縄を解いてもらった人たちは自分たちを殺そうとしていたリーダーの男とその手下たちを拘束した。


一段落すると、女の子の隣にいた男性が話しかけてきた。

「私はこのイラキ国の国王、ウロマンス・ジノ・ノヴ・イラキと申します。この子は私の娘のエマといいます。この度は私たちを救っていただき誠にありがとうございました」

男性はこの国の国王だった。

白いドレスを着た女の子はこの国のお姫様ということになる。

「いや、俺は何も」

感謝されても俺はただ剣を握っただけなので自分の力で救ったとは思えなかった。

それよりも何故こんなことが行われていたのか気になった。


「なぜ、皆さんは殺されそうになっていたんですか?」

国王に尋ねると国王は暗い面持ちで答えた。

「この国は昔から隣の国、ウタヅカリーと仲が悪いのだ。そして数日前、ウタヅカリーの兵士たちが突然この国に攻めてきたのだ。そして、この国の兵士たちは昨夜全滅したのだ。敵は城に火を放ち、城は今朝全焼し、避難していた私たちは捕まったのだ」

「そうだったんですか・・・」

酷い話だと思った。ウタヅカリーと言う国は何の罪もない民まで戦いに巻き込んだのだ。


「この国を救ってくれた恩人に頼むのも失礼な話だということは重々承知なのだが、私の願いを聞いてはもらえないだろうか?」

国王は突然願いを聞いてほしいと言ってきた。

「あ、はい。俺にできることなら・・・」

この臆病者の自分に何かできることがあるとは思えなかったが話だけでも聞くことにした。


「どうか、どうか娘と共にこの国から逃げてもらえないだろうか」

「!?」

国王の話を聞いた俺は予想の遥か上を行く内容で言葉もでなかった。


「もうこの国を守る兵士が1人もいないのだよ。次に敵が攻めて来たら今度こそ間違いなくこの国は滅びる。滅びる前に娘と共にこの国から逃げてもらえないだろうか」

「そ、そんな、俺にお姫様を守る力なんてありません!」

「つい先ほど、私たちを救ってくださった貴方様にしか頼めないのです。お願いいたします」

お姫様を守り抜く自信も逃げ切れる自信もない。

何せ俺は死恐怖症(タナトフォビア)であり、つい先ほどこの世界に来たばかりなのだ。地理など全くわからない。


「あ、あれは・・・たまたま」

「お願いいたします」

国王は深く頭を下げてきたのだが、俺は国王にまともな返事を返すことができなかった。

そんな時、ふと思ったことがあった。

「あ、あと・・・お姫様の気持ちはどうなんですか?お姫様はそれでいいのですか?それに逃げた後、あなたたちはどうなるのですか?」

苦し紛れの中、国王に尋ねると国王は娘に優しく声をかけた。


「エマ、この御方と共に逃げてくれるな?」

「お父様・・・私は・・・」

エマという金髪黄緑眼の少女は今にも泣きそうだ。

「エマ、お前だけでも生きてくれ」

「お父様・・・私は・・・これからもお父様と暮らしたいです」

お姫様から涙が零れ落ちた。

「エマ、それは無理だ。わかるだろう」

「そんな・・・」

「大丈夫、生きてさえいればいつか必ず幸せになれる。今は苦しいだろうが、いずれ時間が解決してくれる」

「・・・」

お姫様が黙り込むと国王は笑顔で言った。

「私の幸せはエムの幸せだ。だからエマ、生きてくれ」

「お父様・・・」

「彼は黒の双色者(そうしょくしゃ)だが、私たちを救ってくれた。とてもいい人だ。だから、彼とこの国を出るんだ」

「・・・わかりました。お父様」

お姫様は国王の顔を真っ直ぐ視て言った。


「この通りだ。お願いできないだろうか?」

「わかり・・・ました。あなたは?」

俺は二人の会話を聞いて引くに引けなくなってしまった。

「私はウタヅカリーの兵士に殺されるだろう」

国王は清々しい表情を浮かべてそう言った。

死ぬことなんて怖くないも何ともないとでも言いたげな顔だ。

「そんな・・・なら、あなたも一緒に逃げましょう」

「それはできない。私はこの国の王なのだから」

国王も一緒にというもあっさりと断られてしまった。

「死ぬってわかっていているのにですか?」

「ああ。覚悟はできている」

「死ぬのが怖くないんですか?」

「怖くなんかないさ」

「なぜですか・・・」

「天界へ行くからさ」

天界というものが存在すると言える自信は何なのか聞いてみた。

「そんなの・・・そんなのあるかなんてわからないじゃないですか」

「あるさ」

「なぜ、言い切れるんですか?」

「この世の多くの人が天界はあると信じている。人の信じるという力は強大なもの。信じていればきっと叶うさ」

「・・・」

天界が存在するという根拠なんてないのに、ただ信じているだけかとあまり納得できなかった。

「君は死ぬのが怖いのか?」

「・・・はい。怖いですよ。とてつもなく怖いです」

国王の質問に俺は正直に答えた。

「そうか・・・それはきっとあなた様は自分の人生とちゃんと向き合っているということなのだろう。人間らしいではないか」

「どういうことですか?」

「ふふ、私は天界で待っている。君は死など考えず、自分の生きたいように、ただ真っ直ぐ進めばいいさ」

「・・・」

「さっ今は時間が惜しい。はやくこの国から逃げなさい」

誤魔化すように国王が強制的に話を終わらせた。


俺も男だ。覚悟を決めよう。彼女を守り抜いてみせると。

「この命に代えてもお姫様を守って見せます」

「誠にありがとうございます。娘をよろしくお願いいたします」

国王は心から感謝の気持ちを言っていると感じ取る事が出来た。

「はい!」



「お父様・・・」

お姫様は悲しそうに国王に話しかけた。

「エマ、幸せにな」

「お父様、私・・・お父様と一緒に過ごせて幸せでした」

「ああ、私もだよ、エマ」

2人は抱き合い、エマと呼ばれているお姫様は涙を流していた。

「ほら、いきなさい」

「はい」


国王は従者と思われる男性から巾着を受け取った。

「これを持って行くといい」

そういって国王は金貨数枚の入った巾着を手渡してきた。

「これは」

「金貨が入っている。これで少しは楽になると思う。役立ててください」

「ありがとうございます」

「さっ、はやく行くのだ!」

「わかりました」

国王は俺の背中を押すように強い口調で言った。その強い口調が俺に勇気をくれた。

そして、俺はお姫様を連れて再び森の中へ入った。

国王はお姫様が見えなくなるまで目をそらさすにずっと視ていた。






―イラキ国王―

娘たちが森の中へ消えていき数分が経った。

「彼はどんな理由でも人は殺してはいけないと言っていたが・・・私はやらなければならない。娘を守るために・・・剣を持ってきてくれ!」

「はい!」

「娘の顔を知っているこやつらを生かしてはおけぬ。殺さねば娘が殺されてしまうだろう」

「やめろ!誰にも言わないし、後も追わない!だから助けてくれ!」

「ふざけるな!お前たちは民の命を奪い娘の命までを奪おうとした!信用などできるか!」

兵から剣を受け取ると剣を空にかざした。

「や、やめ・・・ああああああ!!!!!」

そのまま男の首を刎ねた。

その後も一人残らず敵兵の首を落とした。


「エマ、元気でな」

国王は小さい声でつぶやいた。


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