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第2話:ここもまた

「いけない!寝ちゃった!」


ケデアは目をゆっくり開けると、現状を思いだし、急激に意識が戻っていく。

目の前にはベッドで寝ているジンとジンを見守っているヒカリの姿が見えた。

いきなり大声を出したことでヒナタとハナが起きてしまった。


「ケデア?あ、ジンは!?」

「ジン!」


ヒナタとハナもジンの様子が気になり、すぐにジンの姿を確認したがまだ寝ていたため気が沈んだ。


「おはよう。みんな」


対してヒカリは明るく言った。


「私、どのくらい寝てた?」


ケデアは申し訳なさそうにヒカリに聞いた。


「1、2時間くらいですよ」


「ごめん・・・」


「いいえ、それより一度、ジンが目を覚ましました」


「「「本当!?」」」


ケデア、ヒナタ、ハナは驚き揃って言った。

そして、みんなは安堵した。


「はい。でも、またすぐに寝ちゃいましたけど・・・」


「そうだったんだ。ジンにはまだゆっくり眠って休んでいてほしいね」


「そうですね」


ジンの顔はまだ腫れていて痛々しい。


「ところでさ、すごーく今さらなんだけどさ、ジンって本当に何者なのかな?」


「私たちと何も変わらないごく普通の人です」


「でも、初めてジンの力を目の当たりにして思ったんだけど、あんなすごい力を持った人が同じ人間だって言えるのかなって」


「ケデア、何を言って・・・」


ケデアはジンの能力を見て、恐怖を覚えたのかと思ったがそうではなかった。


「ジンは、特別な人間だよ」


「確かに、私たちには無いものを持っています。私もジンに助けられた時はとても驚きました。しかし、心は私たちと同じです」


ヒカリはケデアに言った。死を恐れるジンは私たちと何も変わらないと。

ジンはいつしか死が、死ぬのが怖いと言うことはなくなった。

しかし、ジンはきっと一人で抱えているのだとヒカリは思っている。

今回の逃走でジンの心の傷がさらに開いてしまうのではないかと心配している。


「私、ジンにたくさん負担かけちゃってるのかな?」


ケデアは座りながら床を見て悲しげに言った。


「それはジンにしかわかりませんが、ジンなら必ず否定すると思います」


「ジン、ホント優しいよね。一度くらい私に辛いこととか、悩みごとを話してほしいな」


「そうですね。私もそう思います」


ジンはいつも何でも一人で抱えて、私たちには何も相談してくれない。

頼られていないのかと思うと胸が痛くなる。

家族なのだからジンの悩みも聞いて、楽にしてあげたいと心からそう思う。


「ヒカリ、寝てないでしょ?大丈夫?」


「はい。ジンに比べればどうってことありません」


ケデアはヒカリを心配して声をかけてくれたが、ヒカリは断った。

ジンが苦しんでいるのに私が楽をしてはいけないと思ったからだ。


「相変わらず・・・ううん、なんでもない」


「え?なんですか?」


ケデアはヒカリを見て微笑んでいた。

言葉の意味が気になるがケデアはそれから微笑んでいるだけで教えてくれなかった。


そうこうしているとジンが苦しそうな声を出して起床した。


「う、ううっ」


『ジン!』


みんなは一斉に声をかける。


「みんな・・・無事で・・・良かった」


ジンの目には涙が浮かんでいた。

ジンは大切な人達を失わずに済み、みんなの顔を見てほっとした。


「ジン・・・無事で良かったです」


ヒカリはジンのそんな顔を見て、つられるように涙を流した。


「みんな・・・迷惑かけてごめん」


ジンはみんなに謝罪した。怖い思いをさせてしまったこと、完璧に守ることが出来なかったこと。様々な意味を込めて言った。


「ジン・・・ごめ゛んなさーい゛!」


ハナが号泣しながら大声で謝った。


「ジン。ごめんなさい。ごめんなさい」


ヒナタも泣きじゃくりながらジンにすがりよって言った。


「何でヒナタとハナが謝るんだい?」


「僕のせいだ」

「私のせいだ」

「「双子だから」」


ジンが二人に問うとヒナタとハナ双子だからと言った。


「僕が双子だから、ジンたちを不幸にさせちゃった」

「私が双子だから、やっぱり一緒にいない方がいいんだよ」


「それは違うよ。ヒナタ、ハナ」


「私も違うと断言します」


「私も」


ジンは右手でハナの頭を、左手でヒナタの頭を撫でながら言った。


「二人のせいじゃないよ。二人のせいじゃない。もし双子が不幸になるなんていうことがあるのなら、双子はそもそも生まれてこないと思うな。必要とされたから産まれてきたんだ。ヒナタとハナはこの世界にいなくちゃいけない存在なんだ。俺もヒナタとハナを必要としてる。これからもずっと一緒にいたい。もちろん、5人一緒にね」


『ジン』


「僕もジンと、みんなとこれから先も一緒にいたい。一緒にいてもいい?」


「もちろん!」


「私も一緒にいてもいいの?」


「もちろん!」


「私もずっとみんなと一緒にいたいです」


「私も一緒にいたい!」


「みんなの気持ちは1つ。本当の家族より本物の家族なんだから」


ヒナタ、ハナ、ヒカリ、ケデアはそれぞれ自分の思いを口にした。




「ところで、ここはどこなの?」


「ここはアドゥータムの隣の国、イジュフという小さな国です。そして、イジュフ城です」


目が覚めたジンだが、見慣れない場所に寝ていたため、気になり質問してみた。

するとヒカリが丁寧に教えてくれた。


「え?何でお城にいるの?」


「アドゥータムで何が起こったのか教える代わりにここで休ませてくれるって国様王が」


「国王様?すごい人に助けてもらったんだね。感謝しないと」


「それがですね。ジンが目を覚ましたらはやくここから出ていくように言われたんです。なぜなら、この国はアドゥータムの弟国だからいつ敵が襲ってくるかわからないんですって」


「そうなんだ」


ヒカリは国王から教えてもらった情報をジンに伝えた。


「今日中には出ていった方がいいとイジュフ国王がおっしゃっていました」


「それじゃあ寝てなんていられないね」


「無理はしないでください」


「多少の無理は仕方ないよ」


ヒカリはジンの言葉を聞いて自分の気持ちを素直に言った。


「ジンは無理をしすぎではありませんか?辛いことがあるのなら私にも、私たちにも言ってくださいね」


「ありがと。辛いことがあったら言うから心配しなくていいよ」


「それでは私と、いいえ、私たちと約束してくれませんか」


「わかった、“約束”するね」


ジンは辛いことがあるときは相談すると言った。



「それで今日中にここを出るって言ってもどこへ行けばいいのかわからないね」


「そのことについてはイジュフ国王から教えていただきました」


「あ、そうだったんだ。親切な人なんだね。俺は助けてあげられないのか。また逃げるのか」


「生きるためならば仕方のないことです」


「生きるため、か」


何のために生きているなかわからなくなってしまいそうなったジンだが、すぐさま考えるのをやめた。


「そういえば俺の白い剣はどうしたの?」


他にも気になること。

この世界に来たときからずっと持っていた剣が見当たらなかったため、またヒカリに質問した。


「それは・・・申し訳ございません!置いてきてしまいました!」


「そっか」


ヒカリはかなり申し訳なさそうに言ったが、ジンはあまり気にしていなかった。

剣よりもみんなの命の方な大事だからだ。みんなが無事でいてくれたことが何よりも大切なことなのだ。


「本当にごめんなさい」


「気にしないで。剣より命の方が大事だよ。命を置いてこなくて本当によかった」



「タエンさんはどうなっちゃったんだろう。無事だといいんだけど・・・」


「そうですね。しかし、あの状況で生き延びるのは容易なことではありません。最悪命を落としていることも・・・」


「そうだよね・・・」


「私、国王様にジンが起きたことを伝えてきます」


「ごめん。ありがと」


せっかく仲良くなった人たちに何も言えずに逃げてしまった。

あの状況では仕方のないことだが、お礼など感謝の気持ちを伝えたかった。


「ジン。本当に辛いことがあったら、言ってね。ジンは一人じゃないんだから」


「うん。ありがと」


ヒカリが立ち去った後、ケデアもジンにそう言った。辛いことがあるときは相談するようにと。






「よく無事でいてくれた。はじめまして。私はこの国の王、アカタス・ジノ・ノヴ・イジュフだ。ほぉう、長いこと生きてきたが初めて双色者をこの目で見た。思っていた以上に迫力があるな」


王からの威圧感を感じるのだが、どこからか優しさが伝わってくる。

ジンは速やかに国王に感謝の気持ちを伝えた。


「この度は私たちを救っていただきありがとうございました。心より感謝申し上げます」


「大変だっただろう?ゆっくりさせてあげたいが、敵がすでにこちらへ向かって来ている可能性があるのだ。辛いだろうがアグルス国へ向かった方がいい。ここも危険だ」


「何もできなくて申し訳ありません」


「いいのだ。ただし、黒の双色者よ。頼みがひとつある。聞いてくれないか?」


「はい。私にできることなら」


「たとえこの小さな国が滅んだとしてもこの国のことを忘れないでいてはもらえないだろうか?他国に呑まれて消えてしまったとしてもここには確かにイジュフという小さな国が存在したという証を」


国王の頼み、国を忘れないこと。

ジンはそれを守ると約束した。


「はい。わかりました。決して、決して、忘れません!」


「ありがとう」


「とんでもありません」


「時間が惜しい。動けるか?大丈夫か?」


「はい。たぶん、動けます」


「辛かったから休み休み進みなさい」


「はい。ありがとうございます」


「さあ、行きなさい」


国王は城の外まで見送ってくれた。

国王からアグルスまでの道を教えてもらった。

この国も亡ぶのか。

なぜ、争わなければならないのか。なぜ、民が血を流さなければならないのか。

そんなことを考えながら、ジンら5人はこの国をあとにした。


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