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若干胸糞悪いかもです。
もう悪役令嬢じゃなくて殺人兵器と化してます。
個人的には鉄血的な主人公の「ミカァ‼」みたいに淡々と戦闘を繰り返す感じにしたいです
翌朝。 サラーシャが馬を二頭用意して出迎えてくれた。
私は黒毛の方を選び、器用に跨がるとアルフォンスに見送られて王都から抜け出した。
向かうは北にある共和国である。
最近北の雄である帝国と国境を巡って小競り合いが起きているらしい。
高給で傭兵を雇っているらしいのだが、集まりが悪いらしく誰彼構わず雇っているらしい。
ならばと私もそこで雇ってもらおうと意気揚々と向かい始めたのだが、サラーシャからある事を告げられる。
「どうやら殿下から刺客が放たれたようです」
それを聞いて私は思わず笑みを浮かべる。
早速私の“戦争”が出来そうだ。
先にサラーシャを国境近くにある街に先へ行かせると私はワザと刺客の目に付きやすいように街道から外れてあまり人が使わない道を選んだ。
しばらく馬で走り、ある程度中に入ると私は小銃を取り出して銃剣をその先に付けて準備をする。
ほどなくして馬の蹄鉄の音が森の中に響き渡る。
追手ならば相手に気付かれずに追跡するのが常套手段である。
相変わらず雑な奴等だと思うと嘲笑しながら私は馬上から銃を構えて待ち構える。
先頭の一人がようやく見えた所で私は引き金に指を置く。
刺客達は無警戒で突っ込んでくるので、全員が私の視界に入ってきた。
彼らは腰に帯刀していた剣を抜き、私の方へ一直線にやってくる。
よろしい、ならば相手になってやろう。
私は引き金を躊躇わずに引くと、一発の銃声が響き渡った。
◇
何かが破裂したような音が響き渡ると先頭を走っていた先輩が落馬し、そのまま地面に転がっていた。
後ろを振り返れば頭の一部が抉られたように傷つけられており、穴のように開いていた。
それを見た者は戦慄した。
この世界には魔法はない。 そんなお伽噺に出てくるような代物はないのにもう一回破裂音が響き渡るとまた一人が落馬した。
音の出所はあの女が持っている武器であろう棒である。
あれが我々に向けられ、破裂音が響いた次には誰かが死ぬ。
恐怖の音から逃れる為に隊長が森の中に逃げて包囲しろと指示を出してきた。
皆が慌てて馬を捨て去り、身を低くして森の中を走り始める。
残り13名。 殿下から発せられた命により俺がいる部隊がかの公爵令嬢を暗殺する為に仕向けられた。
誰かが言った『たかが女一人に多すぎる』
と。
確か彼は結婚したばかりの新婚で、家で待つ腹を大きくした新妻とイチャイチャしたくて早く済ませて家に帰りたがっていた。
パンッ!!
再びあの音が響き渡るとそいつの目が抉られてぐったりと地面に伏していた。
『給金を貰っている以上は仕方ないでしょ?』と言ったのは同期の奴だった。
一緒に酒を飲む仲でこの仕事を終わらせたら酒を飲みに街へ行こうと話していた。
パンッ!!
「ぎゃああああ!!」
少し拓けた場所でそいつが足を押さえて悲鳴を上げていた。
膝の部分からは血が溢れ出ており必死になって押さえていた。
俺が助けに行こうと動こうとする前に他の二人が助けに身を乗り出した瞬間だった。
パンッ!!パンッ!!
救出に向かった仲間があの音の餌食になる。
近くにいた隊長があれは罠だと気が付くと身を潜めて待つように命令してきた。
だから全員がその命令に従った。 つまりはアイツを見放した。
パンッ!!
「ぐぁぁぁぁ!!」
パンッ!!
「やめろぉぉぉ!!」
パンッ!!
「いっその事殺せぇぇぇ!!」
アイツに何度も何度も音が襲う。
体の一部が赤く染まり上がり周囲に絶叫が響き渡る中、俺達はどうする事も出来ないまま彼の最期の言葉を耳に焼き付けられた。
「…だ、れ、か…た、す…け……」
物陰から様子を見ていた俺と目が合うと手をこちらに向けて伸ばしてきた。
だが無情にもそれは届く事叶わず力が全身から抜けていき、瞳孔が開いていくのが分かった。
すると女がゆっくりとアイツの死体の前へと近付いてくる。
何をするのかと思っていると徐に足を上げてアイツの頭をグリグリと踏みつけ始めた。
これは死者への冒涜。
騎士として鍛え上げられた者達への、騎士道の矜持を踏みいじった挑発。
「うぉぉぉぉ!!」
誰かが雑木の間から駆け抜けていった。
まだ入りたての若い後輩だ。 人一倍正義感の強い奴で、他に厳しく己に厳しい奴だ。
確か実家が将軍の家で、兄貴が国一番の猛者だったと記憶している。
父に憧れ、兄に憧れ、騎士に憧れ…そんな少年を俺達は可愛がった。
「はぁぁぁぁ!!」
やや乱雑ではあるが、鋭い一閃を公爵令嬢に振り翳す。
しかし女はそれを半歩だけで皮一枚の所で回避すると、持っていた棒の先に付いている矛を彼の首に鋭く刺した。
「かはっ…!!」
女が後輩を蹴飛ばして矛を彼から抜くと辺りに血の飛沫が舞った。
それを見てもう周りにいた仲間達が我慢の限界に達した。
「うぉぉぉぉ!!」
「待て早まるな!!」
一気に大勢で彼女に襲い掛かる。
隊長がそれを静止しようとしたが、それは遅かった。
しかしこれは捨て身の作戦でもある。
誰かが倒れても誰かがあの女を仕留めればいい。
皆は言葉で通じ合わせなかったが、考える事は一つだった。 仇を討つと。
しかし女は驚かなかった。
むしろ後輩の血飛沫を浴び、顔が赤く染まったにも関わらず、今まで見た事がないような人間離れした笑みを浮かべて実に余裕そうに構えていた。
次の瞬間、持っていた棒を高く投げ上げて放り捨てた。
俺達はそれに目を奪われ呆気に取られた。
それが油断だった。
俺はすぐさま彼女に視線を向けると、腰元から何かを一つずつ両手に持って身構えた。
それらは黒く良くは見えなかったが、嫌な予感がした。
それはすぐに的中する事になる。
彼女が両手に持っていた物はあの棒と似たような破裂音を鳴らした。
パンッ!!パンッ!!パンッ!!
先程の比ではない。 連続で音が響くと捨て身で向かっていった奴等が次々に死んでいく。
それら無慈悲に、そして的確に、俺達を追い詰めた。
結果、部隊15名の内残ったのは俺と隊長だけだった。
「…お前は逃げろ」
「隊長!!」
「お前が逃げて援軍を要請しろ。 アイツは化け物だ。 俺達の手では追えん」
隊長は俺にそう命令してきたが、俺はそれに従う気にはなれなかった。
だが隊長は俺の肩を強く掴んできた。
その瞳は何かを覚悟したような力強い眼差しをしていた。
隊長は迫る歳には勝てず、一月後には引退する予定だった。
一人娘を男手一つで育てた立派な父親で、そんな娘が孫を生んだと聞いて会いに行く前はいつもはつり上がった目がでれでれと垂れ下がっていた。
そんな男が今死を覚悟している。
「時間は稼ぐ。 お前が馬に乗って走り出せばあの女から逃げれる筈だ」
「しかし…」
「行け!!」
「…ッ!!」
隊長の命令に俺は従うしかなかった。
俺は姿勢を低くさせて駆け抜けながら隊長の背中を見送りながら逃げ出すしかなかった。
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