公爵令嬢は婚約破棄に狂喜する
クラウディアsideの視点です
場面があっちこっち飛んだりしているので注意。
ようやくこの長い茶番が終わったと思うと私は浮き足立ちながら舞踏会から去っていく。
能無しとアバズレは唖然として私を見送っていたのを見た時は思わず吹き出しそうになった。
私は前世の記憶がある。
それは甘ったれたあの女のとは違う刺激だらけの世界の記憶。
産まれた時から親無しの、玩具代わりに銃を持ち、人を殺せと教えられ、好きな物は殺してでも奪い取り、いつしか“金色の死神”と恐れられた。
だから私はこの脳が腐りそうな世界に飽き飽きしていた。
前世では人殺しの為に必死になって武器の使い方を覚えたが、こっちのクラウディアはダンスやら作法やらを来る日も来る日も覚えなければならなかった。
私は物覚えがいいから大した苦労はしなかったが、しなかったが故に毎日が退屈だった。
とりあえず影では前世で培った戦い方を鈍らせないように鍛練を重ねて、それらをいつかは使いたいと願いながら日々を過ごしているとある日父親である公爵が私に縁談を持ってきた。
それはこの国の王子との婚約であった。
吐き気を催した。 結婚なんて前世ではしなかったし、男女の関係なんて戦闘が終わり昂った体を冷やす為にそこら辺の男で良さそうなのを宛がうだけだったから嬉しくもなんともなかった。
母親は嬉しそうに「良かったわね」とかなんとか狂喜乱舞していたが、私が嫌そうにしているのを見てそう思っているのは目が腐ってるからか?脳が腐ってるのか?
だが断る事もいけないので私は両親にある条件を提案した。
『私が王子様に嫌われたら自由にさせてください』
両親は驚いていたが、すぐに私の約束を承諾してくれた。
子供の戯れ言と思っているのだろうか? それとも私が婚約破棄されないとでも思っていたのだろうか?
とりあえずその絶対的自信をいつかはへし折ってやると思い翌日婚約者へ会いに城へ向かった。
第一印象は“弱そう”である。
俗に“イケメン”と呼ばれる部類に入るのだろうか? 流石貴族の令嬢達が黄色い声を上げる訳だと納得した。
それでもコイツでは私の番いにはなれない。
その時は騎士の訓練を見せてくれたのだが、なんせ筋が悪い。
剣を持つなら筆持って後ろに下がってろと悪態を吐きたくなる位ヒョロヒョロの剣だった。
というよりも他の騎士を見ても総じて弱い。
ギリギリ隊長格が使えそうな位なので余程この国は平和ボケしているのだろう。
『どうですかクラウディア嬢?』
横にいた宰相の息子が私のエスコート役で付いてきて感想を聞いてきた。
恐らく王子様はカッコイイかと聞いてきているのだろう。
『素晴らしいお方ですね』
心の中では真逆の事を思いながら私は貼り付けたような笑みを顔に無理矢理貼り付けた。
(これってもしかして)恋愛じゃない…?