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安易に婚約破棄を企んではいけません  作者: テスタロッサ
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勢いで書きました。

文章が拙いので許してクレメンス‼

「クラウディア!! 貴様との婚約は破棄させてもらう!!」

豪華絢爛な舞踏会の最中、私の隣に立つ精悍な顔付きの青年が目の前にいる美女に向かって耳を塞ぎたくなるぐらいの剣幕で怒鳴った。

私はその後ろで猫を被りながら怯えるフリをしてその行く末を見守っていた。

私は乙女ゲーによく似た世界に転生し、そのゲームのヒロインとしてこの世に生を受けた。

このゲームのヒロインは貧乏な貴族の家庭に生まれながらも健気に振る舞いながら明るく生活しており、たまたま街に降りてきた王子様と恋に落ちてしまうのだ。

しかしそれをよく思わない王子様の婚約者“クラウディア公爵令嬢”はヒロインに対して悪質な嫌がらせを仕掛けてくる。

様々な苦難を乗り越え、結果的にはそれが露見し現在の舞踏会にてその罪が糾弾されて婚約は破棄、クラウディアは罪によって重い罰を受けるのである。

テンプレのような話ではあるが、最終的に私は国母になり三人の子供を産んで未来永劫仲睦まじく国王になった王子様を支えて暮らしていくのである。

つまりはこの国の頂点に立てるのだ。

現代人としては様々な不自由を感じるが、贅沢が出来てイケメン達に囲まれて生活出来るなら貧乏な貴族の暮らしよりはずっとマシである。

だから私はヒロインらしく“健気”に振る舞い、王子様に“一目惚れ”され、悪役令嬢を“糾弾”するのである。

それはゲームのシナリオ通りに…。

しかしシナリオ通りに沿ったとしても私には一つ懸念があった。

目の前にいるクラウディアである。

確かにクラウディアなのだが、私の知っている“クラウディア”ではない。

現に糾弾されている今も本来ならば“そんな事はない!!”とヒステリックを起こしながら弁明しようとするものだが、クラウディアは何も言わずにただ“笑っていた”

というかヒステリックを起こさなくても彼女は何も悪い事はしていない。

実は言うと彼女は私が王子様にべっとりとくっついていても何も手出しをして来なかったのだ。

周りにいた取り巻き達はとやかく言ってきたが、彼女だけはただ“笑っていた”

そう“笑っている”だけである。

二、三言喋っているのは聞いた事があるので声は知っているが、彼女はゲームとは違い多くを語らなかった。

もしやこの人も転生者なのか?と何気なくゲームの話題を振ったのだが、首を傾げて笑うだけであった。

「…お前がアリシアを階段から突き落としているのを見た者がいるのだぞ!!」

思考が別な場所に行っている内に話は佳境に移っていた。

今の私は所々怪我をしている。

クラウディアは最後まで私に手を出しては来なかったので、私が雇った旅役者の女にクラウディアの様な格好をさせて私を階段から突き落とさせた。

そして犯行現場を目撃させるように役者を逃走させて偽のイベントの完成である。

そして今まさに目撃者が「私はクラウディア様がアリシア様を突き落とした所を見ました!!」と糾弾すると辺りがざわついた。

クラウディアの父親の公爵も驚きのあまりクラウディアに訪ねたが、クラウディアは動揺する事なく変わらない笑みを浮かべていた。

何かがおかしい。

私は胸の奥でざわつく何かを感じていた。

「クラウディア!! 何か釈明はあるか!?」

ようやく王子様はクラウディアに尋ねた。

彼女は私が用意した全ての企てに何も反論する事はなかった。

しかし笑みを浮かべているクラウディアがようやく口を動かした。

「………婚約破棄、お受けいたしましょう」

「なっ…!?」

クラウディアは笑みを浮かべたままドレスのスカートの先を摘まんで精練された動作で頭を下げた。

あっさりと身を引いた事に驚く私だったが、彼女は言葉を続けた。

「私の罰はどうなるのでしょう?」

「…貴様がこの国に居たままではアリシアが落ち着かないであろう。 貴様にはこの国から早急に出ていってもらう」

「左様ですか」

クラウディアは淡々と己の今後の事を王子に尋ねた。

流石の王子様もクラウディアの様子にやや怪訝そうな表情を浮かべながら説明すると彼女はただただ頷いていた。

「それも受け入れましょう。 …ですが」

だが寡黙な彼女は今日だけは黙らなかった。

「一つだけ条件を提示したく」

「何? 貴様は条件が言える立場だと…」

「殿下!! 聞いて差し上げましょう…」

「アリシア…」

クラウディアは頭を下げて願いを乞う。

王子様はそれをはね除けようとするのだが、私は思わず制止した。

彼女は婚約破棄を受け入れ、しかも国を追放される事も受け入れた。

しかしそんな彼女が一つだけ願った条件が私は気になった。

「殿下、クラウディア様の条件を聞きましょう」

「…分かった。 心優しいアリシアの願いだ。 聞いてやろう」

「ありがとうございます」

王子様はその金色の眼差しで私を暖かく見つめてくれると頭を撫でてくれた。

クラウディアに向ける眼差しは冷たくなっていたが、クラウディアはそれを見て何も思わないのか?

辛く苦しい王妃教育を我慢して受けいれ、彼女は何の言われもない罪で罰せられそうな今、何を願うのか?

クラウディアは頭を上げて相変わらずの笑みで私達を見つめた。

「私が国を出る際は誰も追ってこないようにしてくださいまし」

彼女の提示した条件は最後まで己を蔑ろにするものだった。

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