カウントダウン
イラスト:伊燈秋良さま ( http://5506.mitemin.net/ )
指定ジャンル・必須要素:なし
→→ ジャンル:詩
この作品は690字となっております。
硬い地面に背中を這わせて 必要ない呼吸を繰り返す
吸い込んだ粗い砂埃は 金属の味がするらしい
失った部分がショートして 時折赤い火花が散るから
音もなくカウントダウンが始まって
脳の無い頭もショートして 時折歪な電子音が鳴くから
まだ生きてるらしいと何かが思う
メトロポリスを駆け抜けたのは 愛や正義の一投ではなくて
練りこまれた使命と義務と 借りてきた一粒の慈しみ
そこにわたしの何かがあるなら
居場所を守りたかっただけだった
きっと それすらも誰かの言葉だけれど
誕生の意味は 終わる瞬間に生まれ落ちる
終わって初めて 始まりがあって
終わった時に 栄光になる
何も残さず散った花に 果たして意味は生まれるのか
生命の息吹と程遠い ぶれる電子音が弱くなる
残る手を伸ばした太陽は 隠れるくらいに小さくて
それなのに掴めはしないから 近付く気もないらしい
千切れた部分がショートして ただの金属の塊になるから
カウントダウンの終わりが透けて
機械詰めの頭もショートして それでもまだ熱を帯びるから
まだ生きてるらしいと何かが思う
メトロポリスを切り裂いたのは 哀や憎悪の一撃ではなくて
埋め込まれた思想と義務と 借りてきた一片の寂寥感
そこにわたしの何かがあるなら
共に朽ち果てたかっただけだった
きっと それすらも誰かの言葉だけれど
この行く末は 散々飽きるほどに知っている
次の悲しまない悲しみが生まれ
意味を生まない終わりが来る
何も終わらず残った世界に 果たして幸福は生まれるのか
塵と呼ぶさえ程遠い 途切れる電子音が細くなる
意味を生まないわたしの終わりを 太陽だけが見届けて
その終わりが意味を生まなかったと
ここに刻んでくれるだろう
そうしてそれが明確な わたしの始まりになるだろう
伊燈秋良さま、ありがとうございました。
やはり重め……なのですが、終わりにある希望というか、ロボットだからこその感性みたいなものが出せていたらいいな、と思っています。
少々頑張って690字の詩。多分これまでで最長。たまには長く書くのも面白いですね。