君との口づけを夢に見る
イラスト:鍋弓わたさま ( http://6789.mitemin.net/ )
指定ジャンル・必須要素:なし
※備考:鍋弓わたさま著『星の帝国』が元となっている。「白い鳩」の記述。
→→ ジャンル:詩
この作品は字となっております。
君との口づけを夢に見る
触れられるのに近付けないこの距離が
交わしているのに混ざらないその吐息が
君との行方を夢に見る
隣り合っても並ばないこの足並みが
向かい合っても絡まないその視線が
君との繋がりを夢に見る
浮かんでは口癖と化す偽物の名が
浮かんでは口元で弾ける本当の名が
君との 君との 君と――
白き鳩に想いを乗せて
文字のない手紙を風に送る
偽りなき己を晒した君の
耳を飾るのは我の願い
すべてを捨てて君を攫うのは
望まれない憧憬
掴めない虚像
すべてを残して君に守られるのが
望まれた背中
掴まされた塵芥
震えるようなこの想いを禁忌としたのは誰なのか
同情や憐れみだと退けてしまわないで
そんな生温い感情なら とっくに君とは別の道
出会った頃のふたりとは 荷物の量は違うけれど
狂おしいようなこの想いが禁忌になったのは何故なのか
定められた偽者の君を受け入れてしまわないで
それがあるべき君だとしても それは決して君じゃない
出会った頃のふたりでは 身動きひとつも取れないけれど
叫ぶようなこの思いを禁忌にしたのは――この手だった
君との口づけを夢に見る
触れたいのに震えるこの指が
奪いたいのに奪われるこの思考が
君との口づけを夢に見る
浅はかな過去を捨て去れるほどの
愚かな今を覆すほどの
君との口づけを夢に見る
君との 未来を 夢に 見る
鍋弓わたさま、ありがとうございました。
元となる作品があったので、そちらも考慮に入れた詩にしてみました。作品の意図に反していましたら申し訳ない。別物ということにしよう。
主人公とヒロインの、近付きたいのに近付けない歯痒さが切なく、そんな心情が表れていれば、いいなぁ。




