間食
ごきげんよう、梅津です。
遅刻しましたぁああああああ!! すみません!!
実はこの作品、サークル参加のものなのです。期限が決められていたのですが、10時まででした。
間に合わせようと頑張ったのですが……おしくも遅れて……あと3分あれば!
「寒い日」が一文目とのご指定なので、そこは守らせていただきました。
ではでは、どうぞ。
手がかじかんで真っ赤になっちゃうような、寒い日。
そんな早朝に出かける私は馬鹿げているに違いない。
一人で歩く道はつまらなくて、ハァーと息を吐き出した。
「うわっ」
煙みたいに吐息が空を彩って、寒さがわかる。やんなきゃよかった。
巻いたマフラーに顔を埋めながら、足を動かし続ける。
「寒い、あり得ない、マジでない」
文句を、ブツブツこぼしながら。
カツカツとヒールがアスファルトを鳴らす。私を責め立てるようにリズムを刻むそれを聞きつつ、目的地へと急いだ。
朝と言うには早すぎるし、かといって夜と言うのには遅すぎる。
こんな微妙な時間だから、なんだかお腹がすいてしまう。
目的地に着いたら、なにを食べようか。
肉まんにチキン、それにおでん。頭に浮かんだ品々に、頬が一瞬緩んだ。
早く行こうって気持ちが強くなる。
一人で歩く時間を、妙に長く感じた。焦っても転んでしまうのはわかってるけど、どうしても歩調が速くなる。
毎度のことながら慣れない。冬の寒さから、余計にだ。すぐにでもあったかい場所に入りたい。
だけど、瞬間移動なんて便利な技は持ち合わせていないから、面倒でも歩くしかない。
「ちょーめんど」
やっぱり帰ろうか、いやでも。
そんなことをうだうだ考え迷っているうちに、目的地の明りが見えてきた。
結局、悩んでいたことが無駄になった。
そのことにため息をこぼして、後悔する。
寒いのに、また熱を出しちゃった。
目的地のコンビニ。入り口には、ありきたりに不良がたむろしてたりはない。そもそも、こんな冷える日にわざわざ外にいない。
店内からもれる明りは、辺りを照らしていた。
そういえば、昔はなんでこんなに明るいのに夜でガが集まってこないのか、不思議に思っていたっけ。
それについて、幼なじみと論議したおぼえがある。あいつは『ガはコンビニが怖いんだ』なんて変なことを主張していたな。ちなみに私は、『結界が張られてる』説を推してた。
正解は、コンビニに設置してある明りが、ガを呼び寄せないように特殊な光を出すようになってるんだっけ。
大人になって知って、ビックリした。
この店は、扉が手動と自動の二重構造になっている。かじかんだ手で扉の取っ手をつかむと、金属がてのひらにくっつきそうなくらい冷たいから、正直触りたくない。
でも、いつまでもそのままはきつい。仕方なく、取っ手をつかんで開いて、店内に入るとすぐに手をはなした。
そうすれば、後は簡単。目の前にある自動ドアをくぐるだけ。
店の中に入ると、暖房の効いた空間が広がっていた。うん、あったかい。
ほっとして、思わず息をついた。ここでなら、息を吐き出し放題。しないけど。
「いらっしゃいませー」
男性の店員の間延びしたあいさつで迎えられる。
それを聞きながら、私はさっそく店内を物色し始めた。
温かい缶コーヒーと新製品のチョコレートを持って、レジに向かう。
レジ横にあるショーケースを確認。……今日は肉まんとピザまんにしようかな。
レジ台に持ってきた缶とチョコを置くと、店員がすぐにレジ読み取りをし始めた。
ピッピッと機械的な音が響く。店内にはこの店員しかいなかった。深夜時間だから、当然かもしれない。
「あと、肉まん、ピザまんを1個ずつ」
「肉まん、ピザまんを1個ですねー」
気の抜けた言葉で復唱された。
「あと、セブンスター1箱」
タバコの注文をすると、肉まんを紙で包もうとしていた男の動きが停止した。
そいつの眉間には、しわが刻まれていた。
女がタバコを吸うのを嫌ってる人は多くいる。別段、彼の行動はおかしくなかった。
だけど、動作の止まった店員はわずらわしい。
「早く」
「……わかりましたー。お待たせして申し訳ありません」
渋々といった様子で動きを再開させた。あっという間に、レジ袋に商品が詰め込まれていく。もちろん、セブンスターも一緒に。
会計を済ませて、外へ出る。
あったかい所から出ると、寒さは一段と身体に染みた。
「あー……さむ」
早く春にならないのか。
むしろ冬なんてこなければいい。
そんなことを思いながら、店の外に立ちつくした。
ポケットに突っ込んだケイタイをいじり、メールをチェックする。それが終われば、アプリを起動してゲームをした。
そんなことをしていたら、バタンと扉が開く音がした。
「おつかれー」
「おつかれじゃないって。なんで来てんだ」
顔を上げれば、渋い顔をした男がいた。さっきの店員用の服装ではなく、ダッフルコートにジーンズの私服だ。仕事は無事、終わったみたいだ。
「危ないから来んな。家で寝てろって言ったよな?」
「そんなこと、言われた?」
「あのなぁー……」
ため息まじりに、奴は文句をこぼした。
いつものことなのに。毎回毎回うるさいやつ。
「あとタバコ。やめろって俺は何回言えばいいんだ」
「さぁ?」
無理だって。だって心配されるのが嬉しいんだからさ。
私のやる気のない返事に、奴はため息をついた。
幼なじみなんだから、いい加減私の性格くらいわかればいいのに。
「もういい。帰るぞ」
「はーい」
ぐちぐち文句やお叱りの言葉を聞き流しつつ、帰路につく。
こいつは気づいてるのかな。
私が、夜中にわざわざ来るのは、あんたに会うためだって。
二人だけの歩く時間が欲しいんだって。
私の片思いも、いつ届くんだろう。
そんなことを思いつつ、私はため息をつく。
その息も跡形なく、空に色をつけて消えた。
梅津は基本、ラブコメを書いています。珍しくも今回は違うジャンルとしました。
慣れないことに挑戦するもんじゃないですね。いえ、してもいいんでしょうけれど、時期を見計らうべきでした。失敗です。そのために、時間に間に合わなくなったので。
色々改善点はあるのですが、とりあえず。今回はこれで。
2~3週間などしたら、修筆・加筆しようかなと考えています。
では。
読んでくださったあなたに、最大限の感謝を。