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―R2―  作者: 真涼
6/6

第三幕2部 「……現実を見るって言うことは、そこまで難しい事なのかな。そんな事を思う今日この夜」

随分お待たせしました! 結局三部構成になってしまったので、次は早く書きます! 頑張りますよ!

 時刻は、手元の時計で二二時。怪盗稼業にしては、かなり早めの時間である。

 俺、鳴神(なるかみ)玲一(れいいち)御鶴城(みつるぎ)(せん)は……。


 海手線うみのてせんに乗っていた。


 ……え、なんであんなカッコよく出ていったのに、電車に乗っているかって? ……それを聞いちゃうと、こっちとしても、泣きたくなってくるんだけどね。

 ともかく、今まであった事をざっと説明するわ。


 飛び立ちました。

   ↓

 落ちました。

   ↓

 ドボン。バッシャーン。

   ↓

 寒さに震える夜。

   ↓

 着替えーの。

   ↓

 電車に乗る。


 ここまでが一連の流れだ。もっと詳しく言うと、あの飛行ユニットのエネルギーが、どうやら東海学園から出れるか出れないかくらいの量だったらしい。つまり、東海学園から出て、「海だー」と言ったところでエネルギー切れ。ドボンというわけだ。

「……長いモノローグだったな」

 読心術は反則だと思う。

「でもまさか―帰宅ラッシュに巻き込まれるとは……」

 海手線は、東京都内をグルッと回る電車、線路である。だから、帰宅ラッシュは日常茶飯事というわけだ。

 ちなみに、俺達は私服に着替えてある。

深代じんだいグランドホテルだっけ」

「ああ。海手線ならば、深代駅に降りて、歩いて10分くらいだろうな」

「ふーん。まあでも、入るくらいなら簡単だろうから、少し見てみようぜ」

「わかった」

《次は~深代~深代~お出口は~左側で~す》

「うっ」

「……ここまでは我慢できていたのに。もう少しだったのにな」

「う、うるせぇ。俺の三半規管は、先天的に未発達なんだよ」



「こ……ここ……か?」

「そうらしいな」

 スマホ片手に見るは、もうなんかこう……異常なほどデカイ建物。ありえない。そう、ありえない。

俺としては、こういうところには無縁な存在な訳で、正直深代グランドホテルは愚か、深代区に来たのも初めてという、典型の田舎っ子なんだ。いや別に、来雲市が田舎だとは思わないけど。寧ろ、なんでも揃うから他の所に行かなくて済んでいるかもしれない。……ビバ、来雲市。

 そんな冗談は置いておいて。

「は……入るか?」

「入らないと始まらないだろ?」

 お前のその根性はどこからやってくる?

「って、先に行かないでくれぇ!」

 スタスタスタと旋が先に歩いていってしまったのを、必死で追いかける。

 そしてさりげなーく、ホントさりげなーく入っていった。

「……」

 何も言えん。

「な、なんじゃこりゃ……」

 俺の見ている景色はこうだ。シャンデリア、シャンデリア、シャンデリア、フロントあって、シャンデリア。ソファーに机。エレベーター。奥行きは怖ろしい程遠く、多分ここから見て奥にある階段に行くまで50m以上はある。

 お、落ち着かネー……。

「ご予約はされておりますか?」

 まるで異世界を見る様な目で俺が内観を見ていたところ、フロントの女性の従業員が出てきて、そう聞いた。

 ……ウップス、どうしまひょ。

 俺が内心おろおろしていると、

「申し訳ありませんが、社会科見学の一環として内観を見せていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「社会科見学……そのような連絡はうけ―」

「社会科見学です」

「でも、この時間で―」

「社会科見学です」

「あ……はい。専務に訊いてきます」

 旋の真顔+無関心=虚ろな瞳で女性従業員を見ると、女性従業員は気圧され、電話口に走る。

 ……俺はお前が分からないよ。旋。

 俺が少し項垂(うなだ)れていると、女性従業員が走って戻ってくる。

「えっと、お名前を聞いて少し考えたいそうです」

 名前か。ここは少し偽名を使うべきか―

《玲。偽名じゃなく、普通に本名を言ってくれ。学校名もな》

 テレパシー!?

《ああ》

 ……俺はお前が人間であることなのかすら分からなくなってきたよ。

「え、えっと、し、私立東京海帝学園一学年。な、鳴神玲一です」

「……同じく、御鶴城旋です」

 お前緊張している俺に言わせて、楽しやがったな! ……まあいいか。

「わ、私立東京海帝学園、ですか……。あの高等学校偏差値トップの……。そ、それにお二人の名前、どこかで聞いた気が……」

 この展開はまずい。思い出される前に催促しよう。

「そ、それよりもほら、専務さんに言ってあげてください」

「あ、はい」

 タッタッタっと小走りで電話口に行く従業員さん。

「……ええ、ええそうです。東京海帝学園のナルカミさんとミツルギさんが―って、思い出しましたよ、専務! 鳴神さんは、あの陸上競技の方で、御鶴城さんは、あの成雅の貴公子(プリンス)ですよ! ええ! ええそうです! ……え、案内を入れたらいいってことですか? じゃあ私が案内します! と言うか寧ろ案内させてください! フロントの仕事? 他の人にやらせればいいんですよ!」

「……旋。これからどうするんだ?」

「とりあえず下見さ。少し見ておいた方がいいだろ? それに多分―」

「多分?」

 俺がそう訊き返そうと思った瞬間、女性従業員が―ルンルンでスキップしながらやってきた。……人はこれを豹変(逆)と言うのだろうな。変わったのは豹にじゃなくて猫だと思うけど。

「私が案内いたしますので、ついてきて下さい」

「「うぃーす」」

 ニッコニコ顔でこちらを振り向いた女性従業員(札には日向(ひゅうが)と書いてある)についていった。

 ……廊下を歩いても、シャンデリアの量がまったく変わらないのは、金を持ってるからだろうなー。

「こちらが通常の部屋です。一泊20万円で泊まる事が出来ます」

 ……通常部屋でその価格は、ぼったくりにしか感じられない。

「続いてスウィートルームです。こちらは一泊100万円で泊まる事が出来ます」

 ……俺にそのお金があったら、車を買ってます。

「そしてこのホテル一番の自慢である―」

 日向さんに連れられてやってきた三つ目の部屋は、とても厳重な警備をしているらしく、警備員が二人いる。

 日向さんが下げているタグを見せると、警備員は扉から少し離れる。そしてこちらへと近づき―体のあちこちを触り始めた。

「申し訳ありません。この部屋に入るには、身体チェックしていただかないといけないので」

 

……武器とか、駅のボックスに入れておいてよかった……。


「「……異常なし」」

「どうぞ」

 部屋に入ると……。


 眩い光を放つ―


 おっさんの頭があった。


「こ、ここにも警備員……」

 ええ、と、日向さんは饒舌に話し始める。

「何せ、超高級品ですからね。オーナーが買い取った時から警備が超強化されたんですよ。ここからまた身体チェックが、ここを含めて4回ほど続くので、用心しておいてください」


 ここは第3新東京市の国際環境機関法人、日本海洋生態系保存研究機構ですかっての……。


 妙に嫌気な態度を見せるため、ポケットに手を突っ込む。

 ……あれ? この左手に当たるよく分からない物体は……飛行ユニット?

「ダガスァ!」

「!? ど、どうかしましたか?」

「あ、いえ、別に……」

 まずい。まずいぞ。まずいよな。まずすぎるよな。これは……イケない事態だ。

 なんとかして検閲に引っ掛からないでくれよ!

 ビー。

 ……初っ端から引っ掛かりますかい。

「第二警備は金属探知なんですよ。携帯とかもここに置いていってくださいね。……って、これはなんですか?」

 気付かれた!? さりげなーく、ホントさりげなーくスマホと一緒に置いていこうと思ったのに。

「えっと、これは……そう! 小型全自動電気飛行機です!」

 そう言って、カシュっと翼を出す。

「……なんでそんなものを持っているんですか?」

「飛行機が好きだからです」

「は、はあ」

 ……咄嗟の誤魔化しって以外と効くもんだな。

「じゃあ、ここら辺のものは後で返却しますから。次行きましょう」

 

 第3警備―風圧。……髪の毛爆発状態だが、クリア。

    ↓

 第4警備―水流し。……まさか1時間ちょっとで2回もびしょびしょになるとは思わなかったが、クリア。

    ↓

 第5警備―脳内検査。……盗まなきゃいけないという気持ちを表に出さないよう、ひたすら飛行機の事を思った。検査員に引かれたが、クリア。


 そしてやっと到達。述べ30分程の長い時間だった。疲れ果てた目で見たものは―


 まるでこの世のものとは思えない程白く光る、大きなダイアモンドだった。


 といっても、人間でも余裕で持てそうだけど。大きさは手のひらスッポリ、またはそれよりも少し大きいくらい。他のダイアモンドと比べると、怖ろしく大きい事が分かる。

 こ、これを盗まなきゃいけないのか……。初っ端からハード過ぎやしませんか、紅ノ介さんや……。

 でも、ショーウィンドウのようにガラスケースには包まれておらず、相当警備に自信がある事をうかがえる。

「こちらの宝石は、白金剛石―プラチナジュエルと呼ばれる世界に一つしかない真っ白な金剛石です。時価では、兆を超える時もあるんですよ」

 ……すげぇな。確か、当分前に聞いた怪盗の話じゃ、時価5億円の宝石が盗まれたとか言っていたけど……悠々越えてね?

「……ところで、ここの警備とかどうなっているんですか? さすがに前までの警備じゃ物足りないというか―」

 旋がさりげなく訊く。

「この部屋には赤外線センサーと紫外線センサーが取り付けられています」

 ……出たか、紫外線センサー。

「これらのセンサーは、先ほどいた警備員と検査員が持つ許可スイッチが全部押されないと消える事はありません。なので、あの道を通らないと見ることすら叶わないんです」

 へ、へー……帰りたい。

「さて、次に行きましょうか」



 そんなこんなで1時間。ホテル内をしっかりと見させてもらった俺達は、一度ホテルから離れ、あるビルの天井に来ていた。

 もう、怪盗の姿に変わっていたりする。正直夜風が当たって―

「ハックシュン! うー、さびー。……旋、作戦は決まったか?」

「ある程度はな。まあ、といっても一つしか方法は無いけど」

「だよねー……」

「強行突破しか」「隠密行動しか」

 …………。

「意見、二つあったな……」

「でも、玲が言った強行突破は少し難しいな。さっき聞いたのだが、警備員は全員、合気道や柔道を(たしな)んでいるんだそうだ。それに監視カメラは何台もある。きびしいだろうな」

 なんとまあ、専門的な意見……いつの間にそんなに順応したんだよ、旋。

「ともかく、俺の立てた作戦はこうだ」

 旋は饒舌に話し始めた。

「まず、玲が俺のオペレートに合わせて監視カメラの回線を切ってくれ」

「え、いいのか?」

「あ。かなり早急に事を納めないといけないけどな。でもその前に、この銃で警備員の口にマー●ルチョコを撃ってくれ」

「でもそれだと、あんまり効かなくないか?」

「さっき調べたのだが、このマー●ルチョコには睡眠薬が封入されていて、銃で撃つと口の中で浸透して、3秒後には眠れるようだ」

 要するに普通のマーブルじゃないのね……。でも、撃った時―

「監視カメラの映る位置に警備員はいないみたいだぞ」

 ……反応はやーい。

「とりあえず分担をしようと思う。玲が機動。俺が支援だ。こっちの話はこのインカムで伝える。宝石の部屋に行ったら、合流しよう」

「りょーかい。じゃ、始めるか!」

「ああ」


   △


 それから10分後。全ての用意を終えた俺達は、潜入を開始していた。旋の指令は、常時送られてきている。

 さて……まずはあの警備員を仕留めるか。

 時間も時間のため、ここらの廊下の照明はすべて落とされている。……ちなみに、服は白が目立つので、黒いマントを羽織ってある。でも、ちらちらと見えてしまう可能性があるため、肝は冷や冷やだ。

 暗視スコープを装着し、部屋の前に立つ二人の警備員の方を向く。そしてサイレンサーと照準器を取り付けた銃で、警備員の欠伸をした瞬間を狙って―

 パスッ。

「うっ!」

「ん? どうかしたのか?」

 パスッ。

「うっ!」

「「……むにゃむにゃ」」

 ふっ。まずは2人。

 ここには幸い監視カメラが無いので、俺はすらっと抜けていく。

 俺は警備員の懐からセンサーを停止させるためのものだと予想できるスイッチを奪い、次の部屋へと急いだ。


 第2の部屋。

 金属探知機が次の部屋の前にあるため、少々厳しいところでもある。まあ、まずは警備員を眠らせて……。

 パスッ、パスッ。

「「うっ! ……すやすや」」

 さて、ここからが問題だ。俺はペンチを取り出し、監視カメラの方を見る。

 ……あそこまで、どうやって行こう。

 いや、まあね。ジャンプすれば、俺の脚力ならなんとかなりそうな位置にあるんだけど、なんというかこう、それを何回も続けるのは正直きつくてな。

『……R。作戦変更。そのまま走り去って』

 作戦時は、コードネームを使って話すように紅くんに言われたため、それを決行している。まあ、名前の頭文字のアルファベットっていう安直な考えだけど。

 俺は小声で答える。

「……え、でも、いいのか?」

『監視カメラの回線に割り込んで見てみたんだけど』

 お前は将来ハッカーになるべきだと思う。

『その黒マントだと意外と見えない』

 ほー。

『金属探知は、横から繋がっているコードを切れば、止まるから』

 バチン。

「……切ったぞ」

『あと、警備員の服をはいで、それを着たうえでマントを羽織ってくれ』

「……なぜに?」

『もしばれた場合、少しでも弁解できるようにな』

 ほーほー。俺はおっさんの着ている警備員の服をはぎ、汗臭いにおいを我慢しながらそれを着る。そして二人の懐からスイッチを取って、帽子を拝借し―

 くるりんぱ。

「さて、次だ」


 第3の部屋。

 ……もしかしたら、ここが一番難関かもしれない。なぜかって?

 マントが飛ぶからさ。

 ともかく、風が乱れる部屋に入る前の警備員を眠らせスイッチを取り、マントを取って部屋の前に仁王立ちする。

 ……ここはあれだね。2枚だけあるあのフィルターを使うしかないね。

 よく名探偵コ●ンで怪盗キ●ドが使ったりする、いつもの情景を見せるためにカメラにはめるフィルターレンズ。これを2枚だけ、旋に渡された。

 俺の考えだと、こことあと、次のいわゆる水の間で使うつもりである。

 さーて、部屋に入りますか。

 ビュォォォォォォォォォォ!!

 ……風が強くなっている気がする。まさか気付かれたのか!?

『R。さっきこの部屋で警備員から奪ったスイッチを押してみてくれ』

 旋にそう言われたので、さっきこの部屋で警備員から奪ったスイッチを押してみる。

 ビュ、ビュ、ビュゥー。ブウン。

 ここはダンジョンか何かなんでしょうかね!?

『……よし。このタイミングでフィルターを付けてくれ』

「……どうすればいい? さすがに高過ぎて無理っぽなんだけど」

『銃の設定をマーブルからワイヤーに設定して。―よし、やったな。そしたらワイヤーの先にフィルターを取り付けて、よく狙って撃ち込めばいい。上手く行けば勝手にはめ込むからな』

 パスッ。

 ……おおー。スッポリだ。

『……確認した。次の部屋だ』

「はいよ」


 第4の部屋。

 今までと同じように警備員をパスッと眠らせ、スイッチを奪い、ポチッと押して水を出し、またパスッとワイヤーでフィルターを付けて、そこから立ち去った。

 ……うん。かなり短く済んだな。


 第5の部屋。

「あ、あなた[パスッ]は……―すぅ」

 検査員の女性をマーブルで眠らせ、そのスイッチを奪う。さて、次に行こうか。


 宝石の部屋。

「確か、ここには監視カメラがないんだったな」

 早着替えで怪盗の姿に戻る。……うえっ、汗臭いのが染みついているな。帰って洗濯しよう。

『そうらしい。オーナーはあまりこの宝石を見せたくないらしいな』

 暗視スコープを再度付けてみる。

「うっはー。赤外線と紫外線センサーバリッバリ効いてるじゃん。すっげー」

『そんな事言ってないで、早く押せ。あと、今から合流するから』

「あいよ」

 持っていたスイッチを全部押す。すると、張り巡らされたセンサー達が一挙に―

 !?

「R。ついたぞ……って、どうした?」

「Sか……暗視スコープを付けて見てみろ」

「消えているだろ。すべてスイッチを押したんだか……ら……」

 驚くのも無理はない。俺もかなり驚いたからな。

 そう。


 センサーが消えていないのだ。


「な、なぜ……?」

 あの旋ですらもこの表情である。

 パチパチパチパチ。

「―いやはや、すばらしい!」

 と言って部屋に入ってきたのは、出で立ちからして相当金持ちであると予想ができる白髪の男だった。スーツに貴金属、おまけに腹が出ている。……太っているって意味でね。実際服から出てはいないよ?

「まさか、このご時世、泥棒が出るなんて思いもよらなかった。しかも、その立ち姿、まるで1世代前の怪盗のようだな。おっと、紹介が遅れた。私はオーナーの田城(たじろ)だ」

 ちっ。俺と旋は腰の銃に手をかける。

「あと、残念だけども、ここのセンサーを破ることは不可能なのだよ。なぜならね、オーナー私が持つスイッチを押さなければ消えることはな[パスッ]い……の……だ……ぐぅ」

 田城さんの懐に手を突っ込み、スイッチを取り出す。

 ポチッ。

「は、話は本当だったんだな……」

 旋が言う。

「ま、ともかく達成だ。早く持って帰ろうぜ」

「ちょっとま―」

 部屋の中心にある白金剛石を持ちあげる。

 ヴィーヴィーヴィー!

 …………げっ。

「言わんこっちゃない……」

 俺の記憶だと、お前は何も言っていないはずだ。……言ったっけ?

「多分重力装置だな。そこから離れたら警報が鳴る仕組みだ。急がないと他の警備員がきてしま―」

 ウィーン!

「「!」」

 一瞬にしてまた張り巡らされたセンサーの群。くそっ、オーナーめ、もう一つ仕組んでやがったな!

 赤外線センサーなら走り去る事が可能だが、ここには紫外線センサーなる、ニア核兵器(というか、完全に核兵器だと思う)があるため、迂闊うかつには動けない。

「ふあああああー。残念だったな、怪盗くん。3年前の二の舞にはなりたくなくてね」

 二の舞ってことは……奪われたのは、ここのホテルからだったのか。わーお、偶然。

 タッタッタ。部屋に続々と集まる警備員達。10人はいるだろうか……いや、さっき眠らせた警備員も復活してぞろぞろ来ているな。最大で18人か。

 まずいな……こりゃ、万事休すかね?

「……R。俺に策がある」

「そうか……。お前に任せるよ、S」

 俺もその存在はなんとなく分かっていた。スイッチによって使わなかった、俺達の最も怪盗っぽい道具を……。

「さあ。おとなしくお縄につ―」

「「どうかな?」」

 旋がポケットから、そのブツをひょいっと投げる。

 ヴーン!!

 瞬間。センサーが消え去った。そして俺達はバッとオーナー達のいる方に走る。もちろん―俺は、左手に白金剛石を持っていた。

「なっ! 死にたいのか!? って、なぜセンサーは作動しないんだ!」

 当たり前だろ?


 センサー妨害装置なんだから。


 警備員達もセンサーが機能していない事に気づき、こちらを、体術を用いて倒そうと向かってくる。……足の速さがほぼ世界最速の男並の二人をなめるなよ。

 整備員総勢18名を嘲笑(あざわら)うように避け、俺達は颯爽と出口に向かった。

「「さようなら♪」」

「おのれぇぇぇ!! 逃がすなぁぁぁぁぁ!!」

「「「「「は、はい!」」」」」

 追いつけるわけないだろ?

「くっ、早すぎる!」

「うおおおおおお!!」

「バカ! こんな狭い部屋で!」

「おっと」

 びたーん!

「「「「「うわわああああああ!!!」」」」」

「何をやっているかぁ!」

「よし。これで終わりだな」

「ああ。早く帰ろうぜ。まあ、まずはさっきのビルで落ち合おう」

「りょーかい」

 俺達は警備員達をかく乱させるため、二手に分かれて逃走を図った。


 俺側では。

「「「「「待てー!!」」」」」

「待てって言われて待つ奴はただのバカだろっての!」

 警備員5人を相手に逃走劇を作っていた。

 ホテル内を右往左往。正直俺の体力も無限大ではないので、すっごい疲れた。すっごい眠い。

 だがそれは警備員達も同じらしく、みんながみんな、ゼェハァゼェハァ言っている。

「も、ハァ……ハァ……、もう、諦めたら? ハァ……ハァ……」

「あ、ハァ……、諦めきれるかぁ……ハァ……こっちは、職がかかっているんだ……ぐっ……」

「あー、ハァ……ハァ……、そうなっちゃいます? ぐっ……ハァ……。まあでも、こっちも仕事なんで……フゥ……。帰らせてもらいますね」

 左ポケットから取り出しました、この白い球。何が入っているでしょう? ……え、煙幕? ブッブー。


 薄力粉です。


 ボンッ!

「な、なんだこ、ゴホッゴホッ!」

「「「「ゴホッゴホッ!」」」」

「さいならー」

「ま、待tゴホッゴホッ!」

 よし。後は旋と合流するだけだな。


   ▲


 玲と別れてから少しの時間が経った。俺―御鶴城旋は、警備員とオーナー両方に追いかけられていた。

 警備員は、先ほどまで眠っていた人も含まり、計13人。……なんでこっちのほうが多いのだろうか。均等に追えよ……。

 まあ、彼らの考えが分からないわけでもない。多分―玲がどちらかと言うとバカであると思ったのだろう。立ち姿からして、ただのコスプレ野郎だからな。

 それを考えて、玲に宝石を持たせたところもあるのだが、それはまた別。

「「「「「「「「「「「「「「待てぇ!」」」」」」」」」」」」」」

 待てと言われて待つバカなんて、二次元にしかいないぞ。

「その宝石を返せぇぇぇぇ!!」

 宝石なんか持ってないよ。持っているのは、む・こ・う。

 だが、そんな答えを易々と言うほど、俺はバカではない。

 俺はわざと、入り組んだ関係者用の通路に入り、振り切ろうとする。だが、警備員の中に、俺と同じくらい足が速い人が何人かいるらしく、3人くらいついてきている。……オーナーの田城さんは随分前に脱落した。

 ……まあ、あの非健康体質では、さっきまで追いついていたことすら俺は驚きだけど。

 ともかく。

「……そろそろ合流するかなー」

「「「くっ、待てぇ!」」」

 懲りませんねー。

 ふと前を見てみると……先回りしたオーナーさんが。―っと、囲まれた……か。

「さあ、プラチナジュエルを返してもらおうか」

「……カッコよく言っていただいた所悪いが、持っているのは向こうの奴だ。私は持っていない」

 男女どちらであるか特定されないため、マイクに特別に取り付けた変声器を使った。

 それにしても……その驚愕ぶりは、心底笑えるな。

「ふっ……」

 いかん。思わず笑いが。

「くっ……早く向こうを追え!」

 それはさせないよ。

 俺は右手ポケットから白い球を取り出す。それを地面へと投げ付け―


 片栗粉を散らした。


「では、ごきげんよう」

「ゴホッゴホッ、くそっ!」

 オーナー達が明後日の方向を向いている間に、静かにその場から走り去った。


   △


「やっと終わったー!」

 プラチナジュエルを月光にかざし、そのキラキラと光る光を見ながらそう叫んだ。手元の時計で丁度日付が変わった頃だった。

「なんか色々と疲れたなー。緊張感とかそういうの?」

 そうか? と旋は立って体を伸ばし、話し始める。

「く~はぁ! でも、そこまで難しい話じゃなかったな。オーナーが短気で助かったかもしれないし」

「確かになー」

 あと、旋が伸びをしているのが、凄く新鮮だった。こいつ……いつもより若干明るくなってないか?

「それよりも早く帰ろうぜ―って、飛行ユニット使えないんだっけ。また海手線かー」

「ま、今から30分くらいだろ? そんな時間かからないんだし、急げばいいだろ」

「そうだな」

 俺達は服に手をかけ、着替えようとした―その時だった。

 バッサッ!

「フッフッフッフッフ」

 突如聞こえ始めた男の声。そのほうを向くと。


 まるで怪盗キ●ドみたいな格好をしている人がいた。


 ま、まさか……本物!?

「我が名はヴェルフロー」

『ちょっと吉田ー! 何やってんのよ! 早く帰って来なさーい!!』

「「「……………………」」」


「……我が名はヴェルフローレ。そのプラチナジュエル、渡してもらおう」


 あっ、続けるんだ。

「「……………………」」

 それにしても、これは……どういう反応をすればいいんだ?


 To Be Continued...

次は頑張って早めに書きます! 評価感想お願いします! ……全然評価されないなー。この物語。

誤字直しました! 他にも誤字あったらどんどん送ってきてください(方法は問いません)。真涼ポイントを進呈します。一定量溜まると……。

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