第一幕2部「グレートティーチャーミツルギ登場!」
1部の続きです。ラブコメ展開に入りかけます。リア充撲滅委員会に加入なさっている方には、不快と感じる描写があるかもしれません。
『この私立東京海帝学園で3年間共に暮らす仲間を誇り、先輩がたの教えを守り、より一層の勉学に勤しみます。新入生代表、柊好葉』
パチパチパチパチ。
ふぅ、なんとか間に合った。危ない、危ない。……まあギリギリ過ぎて妙な視線で見られたけどね。
『では学園長からのお話です』
『学園長の小夜凪紅ノ介だよ☆。3年間を楽しんでねー☆』
「…………………………………………………」
……かるっ!
他の生徒も引くっつうかなんつうか? えーっと、驚愕? って言うのかな?
それにしても見まわすと……女子が多いな。なんでだ?
『もう一つ学園長から連絡があります』
『今回審査で入学した生徒を紹介するよー☆』
審査で入学って――俺たちじゃねーか!
『審査入学の人は腕に腕章をつけているからわかると思うけど紹介するねー☆』
腕章……? ってこれか? ……か、かっこいいなこれ。
ちなみに東海学園の制服は基本Yシャツ、ブレザーだが、改造よし! 好きな色に変えるもよし! というようにとってもゆるいようで、中にはおいおい露出度高すぎるだろ! というものや、あの……肌が見えませんが? というものまで幅広くある。さすが私立。自由だなー。まあ紅くんの性格も関係しているだろう。俺も入学式が終わったらちょっと改造してみるつもりだ! とにかくかっこよくする。
というか正直私服と変わらねーじゃねーか! っていうのはスルーの方向でお願いします。
まあそこが利点で入学希望者が増えているのだが、入試問題難しいらしいからな。受験人数6万人くらいいたうちの70人だぜ? ジュ●ンかよ! いや、ここはミス●ンと言ったほうがいいか? いやいやそれ以上だな。どう考えても難しすぎるだろ。
「玲、行くよ」
「えぇー行くのか」
でもここまで言われたんじゃ、しょうがないか。
「よしっ」
俺は自分の席を立ち、舞台へと駆けあがる! まぁ『夢の舞台へ駆けあがれ!』っていう、某サクセス野球漫画の名言とは違うものです。はい。
そして俺は舞台に立つ。……わかってると思いますが歌舞伎とは違いますよ。というかまず間違えないか☆ ……俺が語尾に☆をつけるのは、基本的に紅くんの真似ですから。残念!(残念でも何でもないけれど)
……古っ! パート2! (手をグルグルしてピース)
……ごきげ●ようか! おはようからお休みまで暮らしに夢を広げるライ●ンの提供か!
って、一人漫才してどうする。
あーもう、わけわかんなくなってきた! 恐らく世ではこの現象を現実逃避というのだろう。
ともかく、
「よ、よろしくお願いしまーす」
俺は、ぺこっ、っと頭を下げる。
ザワザワ。
全校生徒(俺と旋ともう一人を除く)が一斉にざわめき始める。
うっ! やっぱ緊張するなぁ。
「よろしくお願いします」
ザワザワ。
平然と話すなぁー、旋。緊張とかしないのか?
体育館はまだざわめいている。
ちなみに東海学園のアリーナは、野球など、外のスポーツをするところなので、今現在学園に隣接している体育館で入学式をやっている。……人数少ないしね。
……それにしても舞台からみるとやっぱり制服個性があるな―。本当に東海学園の生徒なのかを調べるには胸に付けている校章を見るらしい。なんでもつけるのが必須だとか。……って当たり前か。
話がそれたので元に戻します。
「うわっ、両方カッコイイじゃない」
「ねぇどっちが好みなのよ」
「私は右の子かな」
「私は断然左の子よ」
「というかあの2人どっかで見たことない?」
「よし! いっそのことファンクラブ作ろう!」
「それいいね!」
「あれ、私のこと無視!? なにこの疎外感!」
な、なんか2、3年生の女の先輩が話しているような……気のせいか?
『次に―』
俺は入学式が終わるまで緊張しまくっていた。
▲
「お、終わったぁー」
ずっと緊張していた俺はようやく肩の荷を下ろせた気がした。自分で無理やり。
「でもまさか同じクラスになるとは思わなかった」
俺たちは1年α組だった。……なぜアルファなのかは分からない。後で紅くんに聞いてみよう。
「はい、静かにしてね」
一人の女性が入ってくる。
黒髪に白衣。
そこには女研究主任(仮)さんがいた。なぜ?
「私の名前は、井ノ植愛、α組の担任です。井ノ植先生と呼んでください」
へぇー、女研究主任(仮)さんの名前、井ノ植愛って言うんだ……って担任? 先生だったのかこの人。完全に研究者だと思ってた。ほら、とある超強い電磁を纏った砲撃とかそこらへんに出てくる子供を助ける研究者さんみたいな? クマはないけど。
「みんなの自己紹介の前に、テストを受けてもらいます」
……は?
「えぇえええええ!!」
き、聞いてねぇ! ……って抜き打ちだから当たり前か。そりゃそうだよな。
「テスト名は『超絶! 春風そよぐ抜き打ちテストA(学園長命名=紅くん命名。テスト後担任の先生に聞いた)』です」
……そのネーミング、かっこいいな! 特に超絶ってところが良い。
「テストは10分後、ちなみにテストはとても難しいですよ。去年の平均点は40点ですが30点取れれば安泰というぐらいですので頑張ってください」
マジか!
テスト開始まで5分。
「ム、ムムムムムム!」
俺は先生にもらった資料を読み漁っていた。が、
「無理だ!」
まぁ悟ってたんだけどね。難しすぎるよ? これ。
さぁ最後の手段だ!
脳内記憶処理を起動。……確認。
パスワード「GTM」入力……確認。
脳内「Orz」起動。……正常値。
『TANOMI』モード展開。
これこそ俺の最後の手段!
「せぇ~ん~! 教えて~」
そう! これこそ旋頼み! そのまんまですねこれ。すいません。
でもOrzを横文字にしたら、あの『絶対防御』の姿勢になるってすごいよね。これ作った人、神だよ! マジ神! パネェ!
「いいけど、どこが出るかわからないよ」
「それでもいいから」
じゃないと死んじゃう! ……死にやしないが。
「……わかった」
「助かる!」
ありがたい! 旋がついてれば俺は安た―
「ちょっといい?」
ん? 誰だ? 今から旋先生に教えをもらおうってとこなのに。というか旋先生ってネーミング、おかしい気がする。『せん』が2つあるし『せ』が3つもある。……元に戻ろう。
「あなた達審査入学の生徒よね?」
長髪の淡い緋色、かなりの美人(だと思われる)が話しかけてきた。
「そうだけど……誰?」
俺の知り合い……ではないよなー。
「私は柊好葉、ちょっと用があって」
柊って言うと……新入生代表だった奴か? 案外美人だなぁー。 紅くんのはなしによると、新入生代表は入試最高得点を取った人が行なうらしい。まあ、審査入学の人は入っていないが。入っていたら、確実に俺の隣の人が選ばれるはずだしな。
「なんの用?」
すると柊は一言。
「審査入学ってことはあなた達おバカなのよね?」
……あれっ? なぜだろう。俺の耳が正しければ今、バカって言葉が聞こえたんだが?
まぁバカなんですけど、他の人に言われるとムカつきません? ……俺は誰に聞いているんだろう? 自分が怖い。
……とそんな場合じゃない。
「あまりこの学校の偏差値を下げないでよね、おバカさん達」
ムカッ! そこまで言われて黙ってられるか。
「そこまで言われると黙っていられないな!」
その頃俺の頭の中の天使がささやいた。
(そうだそうだ! 言ってしまえ!)
「へぇ、勝負でもしようと言うの?」
「あぁ! このテストで勝負してやる!」
俺の頭の中の悪魔がささやいた。
(お前なに言ってんだよ! お前の頭脳じゃ無理だって!)
「そう、頑張ってね。おバカさんたち」
スタスタ。柊が席に戻っていく。
何だあいつ!
というか俺の脳内、天使と悪魔が逆じゃなかったか? あと、天使と悪魔必要か? ここ。
つうか、悪魔! てめぇ、喧嘩売ってんのか!?
(そ、そんな訳ないだろ!)
じゃあ呼びかけに答えんな!
それはそれ、これはこれ。
「旋! お前からもなにか言っ―」
「いいよどうせ、興味ないし、それよりも」
どうした? なにか……。
「玲、危ないんじゃない?」
「なにが?」
「テスト」
ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、チーン。(木魚と鈴の音)
「ぬろわんぬ!」
なぜここでポケ●ンの攻略本に書いてあるような主人公の名前が出たのかは知らないが。
そうだった。ヤバイ!
ゴーンゴーン(鐘の音)
「それじゃあ超絶! 春風そよぐ抜き打ちテストA開始です」
はっはっはっ。……終わった……。
▲
「では出席番号順に得点を発表します」
ぐっ、全然解けなかった。……って得点発表するのかよ! こんなのただの恥さらしじゃねーか!
そんな中でも発表は始まる。
どうやらそう思っているのは俺だけみたいですね。泣いてもいいですか?
「相澤さん45点」
「はい」
「今埜さん58点」
「はい」
「宇都さん60点」
「はい」
……はなしによると今の1年生は70人しかいないのにクラスは4クラスあるということなのだが、 その中で適性合格(後で聞いたが適性合格者は問答無用で怪盗訓練生になる)は3人しかいないらしい。俺と旋とあと1人だ。
ちなみにα組は17人で男子2人女子15人だ。……男子少ないなこのクラス。
というか俺と旋だけじゃねーか! ……冷静になろう。
他の組はβ組17人、γ組18人、δ組18人だ。……なぜギリシア文字なんだろう。
「鳴神くん10点」
それだけ取れてたのか! ちょっと安心したぁ。……この点数安心しちゃいけないのか?
そうして得点発表会(仮)は続き―
「柊さん83点」
「はい!」
くっ、自信あるだけあるな。……っていうかスゴっ!
「このテストで80点台が出たのは初めてよ」
(よし、勝ったわ)
「えぇーっと次は……えっ!」
「どうしたんですか先生?」
柊が女研究主任(仮)さんもとい井ノ植先生に声をかけた。
「い、いや。別に」
出席番号順だと次って旋だよな?
俺の出席番号が14番。間に柊を挟んで旋が16番だからな。だから席が柊が前で旋が後ろというわけだ。
「み、御鶴城くん……100点」
「なっ!」
スゴっ! 確か80点台でも初めてとか言ってなかったか?
「えぇ! 100点なんてありえない!」
先生までもが驚いている。……ってなぜ?
「機械に採点させているみたい」
旋が机(メッチャでかい。パソコン内蔵らしい)から身を乗り出して話す。
―って旋! また読心術か!?
(どうしてあの人が! それに御鶴城? 聞いたことがあるような……)
そして旋の後の人の得点の発表が終わり、得点発表会(仮)は終わった。
「えーっと、今回の平均点は……60点くらいね」
高っ!
「来年かわいそうね。それにしても今年の生徒は頭いいわね」
……お、俺は例外ですよー。忘れないでくださーい。計算で行くと俺の偏差値は0ですからね。普通じゃありえない数字ですからねぇ。
「じゃあ出席番号順に自己紹介ね」
ということで自己紹介会(仮)も行うことになった。……自己紹介会ってなんかおかしいか?
けど嫌だなー。自己紹介あんま得意じゃないんだけど。
……あっ! と言う間に俺の番。……驚かせてすんません。
「えぇーっと、な、鳴神玲一です。中学校は市立来雲中学校でした。得意科目は体育で、得意なスポーツは陸上とサッカーです」
「鳴神?」
一人の女子が隣の席の人と顔を合わせる。……というかすでに友達ですか?
「玲一?」
その隣の席の人がまた顔を合わせる。
「まさか!」
違う女子の登場。てかヒマなのか?
「あの全中で100メートル走の中学記録どころか日本記録まで大幅に更新してぶっちぎり優勝したあの―」
「「「「鳴神玲一!」」」」
おっ! 知ってる人いたんだ! さっきはそれを思い出そうとしていたわけか。
「そんな人がうちのクラスに!?」
「ニュースで見たけどやっぱりカッコイイわ!」
キャー!!
「しずかに」
だが静かにならない。
「おしずかに!」
次は静かになった。
さっき言っていたことは、全日本中学総合体育連盟公認推奨特別連合主催体育大会陸上部門で俺は、決勝進出並びに優勝してしまったのだ。記録と言うのは俺が決勝戦で100メートル走9秒78という中学生ではありえないタイムをだしてしまったのでニュースに取り上げられたということだ。まぁそりゃそうだろう。俺もちょっと悔しかったからな。ボルト抜けなかったし。……ウサインだからね。
サッカー部門も出てたんだけど惜しかった。まぁこのクラスには『プリンス』がいるからな。サッカーは決勝でその『プリンス』と戦って負けたんだけどね。
……さて、自己紹介会(仮)の続きに戻るとするか。
えっと次は……げっ、柊か。まあ当たり前なんですけど。番号的に。というかよく俺『全日本中学総合体育連盟公認推奨特別連合主催体育大会陸上部門』を一息で、それもかまずに言えるなんて……我が身ながら素晴らしい! ……自画自賛をカッコよく言っただけでした。すいません。
おっと、説明が長くなった。
「柊好葉です。中学は柚久中学でした……」
あれっ? 元気がない……。って柚久中学と言えば偏差値70あるところじゃねーか! ……まぁ旋の通ってた成雅中学は78だったんだけどね……。
「じゃあ次ね」
「御鶴城旋です。中学は成雅中学校、得意なスポーツは剣道です」
驚くなかれ! 旋の家、御鶴城家は剣道場を持っており、龍さんは道場主である。
剣道場―名を御鶴城道場と言う。脱力からの居合いを中心に護身術を組み込んだ御鶴城流を教える道場である。―なんかかっこよく言えたな!
ザワッ! 教室が騒然とする。
「成雅中に……御鶴城?」
ほぼすべての女子が一斉に顔を合わせる。
「それって」
そしてゆっくりと。
「まさか」
顔を旋に向けて。
「「「「「「「「「「「「「成雅の貴公子御鶴城旋!!??」」」」」」」」」」」」
13人くらいの女子が一斉に声をあげた。というかきっかり13人。
「名門鳴雅中を首席卒業した、御鶴城様よっ!」
キャァァァァァァッ!!
黄色い声がクラス中で聞こえた。俺の時よりも盛大に……。
2年前、旋がさまざまな分野で数々の賞を受賞していたころ、大日テレビ通称日テレが注目し、ドキュメントで密着取材したことがあった。その時の旋の完璧ぶりについた通り名が「成雅の貴公子」というわけだ。その番組の視聴率は50%を超えたという。おもに女性で。
「まさか同じクラスだなんて」
「神に感謝! 親に感謝!」
親に感謝することはいいことだな。神もだけど……。
「ま、まさか成雅の貴公子だったなんて」
……柊が停止しているみたいだ。衛生兵、衛生へ~い! 戦ヴァル風に言ってみたぜ。
あれは神ゲーだよ、絶対!
そんな感じで俺が宣伝をしている余所、みんなの反応に困っている旋は焦りながら、
「えっと、これから1年よろしく」
はにかみ切れていない笑顔で応対した。
キャァァァァァァァッ!!
こうして自己紹介会(仮)は戦場となったのだった。
△
「鳴神様!」
「御鶴城様!」
自己紹介により、俺達はなんかすごいことになっていた。
「ごめん、ちょっと用事が」
現在クラスの女子(2人除く)に囲まれている。全13名。
そこをスタスタッと通り抜ける。
「待って~鳴神様~御鶴城様~」
すると旋は立ちどまり、
「その様って言うの、やめて……」
中学時代のトラウマかもな。俺は知らないけれど。
「わかりました御鶴城様」
……変わってないし。と旋は肩を落としていた。
「はぁー」
廊下に出た俺達は学園長に呼ばれたので学長室に向かっていた。
「紅くん今度は何のようだろ?」
「さぁ?」
ガチャッ!
「失礼します」
「なにか用? 紅くん」
その時。バッ! っと紅くんが振り向いた。……再度驚かせてすいません。
「いやーちょっとね、言ってなかったことがあったんだ☆」
「言ってないこと?」
なんだそりゃ。いや、適切なリアクションじゃなかったな。反省。
「1つ目は、R2は明日からってこと」
「ふむふむ。で、R2って何?」
俺知らないんだけど。
すると紅くんはうなずいて―
「そうか玲一クン聞いてなかったね☆ R2って言うのは塾の名前☆」
へぇー。そうなんだ。……って説明かるっ!
「なんかの略称?」
「ライジング・レヴォリューションの略☆」
か、かっけー!!
「…………………」
ほらそこ! 『エターナルソード』の準備しない!
ドスッ!
そうだった……。彼には……読心術が、あったんだった……。ぐぅぅ、無念なりぃぃぃ!!
「…………………………」
ガンッ!
……ごめんなさい。謝るから殴らないで。無言が一番怖いから。
「2つ目はとても重要☆」
(復活!)
ゴクリッ! というか紅くんのこの口調だと重要さがわからないんだけど。
「R2の事、怪盗の事を関係者以外には話さないで、ってこと☆」
「わかった! で、関係者って?」
誰が関係者かわからないし。
「それは追々説明するよ☆」
「わかった」
追々、ねぇ。いつになるんだろう。
「で、三つ目は君達のチームの名前☆」
「チーム?」
聞いてないぞ? ……そりゃそうか。
「怪盗は基本的に一人だけど、チームを組む時もあるんだ☆ いわゆる共闘だね☆」
へぇー。
「玲一クンと旋クンは[R]だから[R]同士のほうがいいと思ってね☆ あと名前も考えたんだけど―」
「どんな名前なの?」
「R2☆」
(やっぱりそう来たか……)
あれ? 旋がなんかがっくりしてない?
「なにをそう落ち込むんだい、旋クン☆ 名誉なことじゃないか☆」
「そうだぞー、旋」
「……中二が」
うん? なんか言ったか?
でも塾と同じことは名誉かもしれないけど、Rが2人いるからR2だろう、と思うのは俺だけだろうか? たぶん、旋も賛同してくれると思うけど。この適当さを生かして、適当戦隊スイハンジャーとかいうヒーロー物やればいいのに、日曜朝8時からテ●朝で。
だが、このとき紅くんの適当ぶりを直しておけば……と後悔するのはきっかり10分後だった。
▲
「はい、では寮の部屋分けを発表します」
「寮か……」
そういえばここ全寮制だったっけ。
「まず101号室から相澤さん、宇都さん」
どんどん寮の部屋分けが発表されていった。
「次、505号室」
……なんか飛んだな。
「先生。なぜ部屋の番号がすぐ飛ぶのですか?」
ナイス柊! 俺も聞きたかった。
「しょうがないでしょ、2年生や3年生もいるのよ」
「そういうことですか」
いや、バラバラにしなければいいんじゃないんですか? と聞きたいが抑える。理由? なんとなくだぜ。
「とにかく……505号室。鳴神くん、柊さん」
…………あれ? このクラスに柊って2人いるのかな?
「わ、私!?」
やっぱりお前か!
「な、なぜ男子と一緒なのですか!?」
同感だ! 俺とて健全な男子高校生であり、男女七歳にして同衾せず! だぜ! かなり古いけど……。
というか、公共教育機関として大丈夫なのか……?
「あのね。学園長が―」
先生の回想。
『よし! 旋クンと玲一クンの寮の部屋は女子と混合してみよう! 面白そうだ!』
先生の回想終了。
「なんだそりゃ!」
紅くん。なんてことをしてくれてるんだ!
「が、学園長が?」
「あともう一つ」
「こ、今度は?」
柊。紅くんの恐ろしさを知ったようだな。
紅くんの恐ろしさ。それは……。
発言がチョー適当!
故に、適当だからなんでもできる。元気があればなんでもできる! みたいなものだ。
「『クラス内で寮分けしないといけないしね』とも」
ま、また適当に……。紅くんの適当ぶり直しておけばよかった。
だったら俺と旋が同じ部屋でいいじゃねーか。
「み、御鶴城様も……?」
一人の女子がつぶやいた。
キャァァァァァァァァァァァァァッ!!
またもや13人の女子が叫んだ。あれっ? あとの2人は?
「次、506号室…。御鶴城くん……」
506って、俺らの隣じゃないか!
ゴ、ゴクリ! クラスの女子ほぼ全員(柊を除く、なんか意気消沈しているため。ほか1名)が息をのんだ。
「涼音さん」
呼ばれたのは淡い空色の髪を持つ美人(だと思う)だった。
というかこのクラス美人(だと思う)が多いな~。
「わ、わたし?」
いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
ぜっきょうするじょしたち が あらわれた。
どうする。
《戦う》
《モン●ターボール》
《持ち物》
《逃げる》←
ピコンッ!
だが にげられない!
オレは立ち向かうことにしよう。あとで。
確か、涼音美空さん……だっけ? さっき叫んでなかった人だな。
「よろしく。涼音さん」
「こ、こちらこそ」
こうして寮の発表を含め今日の授業は無事終わった。
女子たちの発狂を除いて。
▲
「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ」
俺は2万マイルの海底に届くんじゃねえの? ってくらいのため息をついた。
それもそのはず。なぜか女子と寮の部屋が一緒になってしまったからだ。
理由は一つ。さっきも言った通り紅くんだ。面白そうだからって理由はずるい且つ酷い且つ惨いと思う。
「なによそのため息。私じゃ不服?」
それについさっき喧嘩を売ってきた、あの柊なのだ! ってなんか言ったか?
「大丈夫だよ、玲。なんとかなるんじゃない?」
「そうだよ、鳴神くん。元気出して」
紅くんとの一件ですっかり性格が変わってしまった旋とその同居人(寮の)が励ましてきた気がした。
―と言うか今の涼音の言葉、なんか傷つく人いるんじゃねーのか?
「どうせ私なんて……どうせ私なんて……どうせ私なんて……どうせ私なんて……」
案の定、柊が落ち込むようにうつむき、つぶやいていた。
俺達は今寮の廊下を4人で歩いているんだが4人じゃない。
後ろに140人くらいの女子がついてきているのだ。
140人だよ140人女子生徒152人中の90%だよ! 寮の廊下なんてすぐ埋め尽くされるだろ!
ちなみに東海学園の生徒数は女子152人男子50人の比率となっている。
……男子少なくない?
紅くんに理由を聞いたら『怪盗の適性とか、勉強の成績とか女子のほうが上なんだよね☆ だから女子のほうが生徒数多いんだ☆ R2も女子のほうが多いよ☆』っという答えが返ってきた。
……誰でもわかるような理由、ありがとう紅くん。というか男子の偏見もあったな。『女子のほうが頭が良い』って。
つうかあんたは男だろ……。内心そんなツッコミをして落ち着き、前を見ると505と書かれた部屋を見つけた。
「おっ、ここが俺の部屋か」
……まぁ柊もなんだけど。
「じゃあな旋」
「ああ、―って言ったって隣だけどな」
そりゃそうか。
俺は旋と涼音と別れて部屋に入った。
ガチャ!
「おぉー」
……率直に感想を言おう。
「広っ!!」
とにかく広かった。ベッドが2つある(これは当たり前か)というのにとても広かった。
「おぉー……」
うわっ、ジャグジーが付いてるじゃん。スゲー。
「おぉー……!」
そしてなんといっても窓から見える景色がサイコーだった。
「おぉー!!」
海! そう一面海なのだ。美しすぎるオーシャンビュー。これなら日の光で起きるという、この現代でできそうでできない夢が実現できそうだ。
他はキッチンやトイレなど、ありとあらゆる場所がプリンスホテルのスウィートルームみたいなのだ! ありえん! ありえんぞ!
「じゃあ私が窓側のベッドね」
おっ、いい感じに意見が分かれてくれた。俺は壁側のほうがよかったからな。景色は好きだけど、なんか壁のほうが落ち着くんだよな。この気持ち、わかる?
「べ、ベッドだからって、い、いかがわしいことしないでね!」
柊が恥ずかしそうに言う。
「するかバカ」
俺はさっきこの女子にいわれた単語を繰り出した。
俺が思春期でもそれは無い。
「ば、バカって言わないでよ!」
予測では、柊に30のダメージくらいか? 精神的に。
「お前が先に言ったんだろ?」
うっ! と柊はたじろいだ。
そこから少し沈黙が続いた。
「……好葉」
「はっ?」
なに自分の名前を突然言ったんだ?
「これからはお前でも柊でもなく好葉と呼んで」
えぇーっと、率直に申し上げまして、
「……なぜ?」
「なぜって……私はあの勝負に負けたでしょ? 敗者は何も言えないわ」
いや、すでに命令口調なのですが? まったくもって理解できません。
「だから名前で呼んで」
おいおい、あのな~。
「少なくとも俺は負けたぞ」
ああっ! 自分で言ってて恥ずかしいぃ!
「でも私は両方に勝つつもりだったの!」
……さいですか。お凄いですね。……ごめんなさい。日本語間違えました。
「それにまさかあの御鶴城様とは思わなかったし」
「? なにか言ったか? ひ……好葉」
名前で呼ばれて少し恥ずかしいのか顔を少し赤く染めていたように見えた。
正直言って俺は女子を名前で呼び捨てにするのに抵抗はない。
というかお前が言ったんだろ!
「べ、別になんでもないわ」
ふ~ん……そうか。
「それじゃあ改めて、鳴神玲一だ。よろしく、ひ……好葉」
危うく柊って言いそうになった……。あぶねーあぶねー。
「柊好葉です。1年間よろしくお願いします。鳴神くん」
……あれっ?
「1年間って……なに言ってるんだ?」
「どういう意味?」
きょとんとした顔で返された。
というかこの理由が俺に2万マイルに届くんじゃねーの? っていうため息をつかせた原因なんだけど。
「知らないのか?」
「?」
またきょとんとした顔で返される。
だって。
「寮分けって3年間終わるまで変わらないんだぜ」
その時……空気が……とまった……。
第一幕 終幕……。
ここから少し間が空きます。