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―R2―  作者: 真涼
1/6

第一幕1部「厨二とは悪魔の名前とか黒魔術とか覚え始めちゃう人達だと誰かから教わった」

不定期連載で、部分部分に間が空くと思います。

「おーい、せぇーん!」

「……なに? 玲」

 いやいや、ちょっと待て。なんでこんなに大事なことを忘れるんだ。……あっ別に忘れてたわけじゃないか? でも言わせてもらおう。

「今日は私立東京海帝学園すなわち東海学園の受験の日じゃないか!」

「……別にそんなにテンションあげなくても、それに受験じゃないし」

 そうか? このテンションは妥当だと思うぞ?

 本日4月3日。入学決意的宣言からえーっと……だいたい3ヶ月弱後! うん、それぐらいの時期が経っている。今は俺達の住んでいる来雲市の中心駅、来雲駅に来ていた。それはそうだろう。私立東京海帝学園は海帝市という街にあるからだ。

 ……話がそれたので戻して、っと。

「お前って推薦入学できる所ってあったのか?」

 ちなみに俺はスポーツ推薦があったが断ってきた。自慢みたいだけどマジで。

 なぜってあの東海学園に裏口入学できるかもしれないんだぞ! 裏口入学っていう響きがどうも気に入らないけど。

「……東京だと開生高校」 

 げっ! ちょー頭のいい学校じゃねーか! たしか偏差値は……79だったっけ? まあ、東海学園のほうが上なんだが。

「じゃ、じゃあなんで蹴ってきたんだ?」

「……玲が言うから」

 うっ! ここで俺が出てくるか! この責任逃れめ。

「それに面白そうだし」

「? どういうことだ?」

「この学校、3年前まで琉幡(りゅうはん)高校って学校だったんだが、創立150年だから校舎が古くなって急きょ新設することになって、今は東京海帝学園ってなったらしい。場所も人工島になった」

 ふむふむ。やっぱりなにかを説明するときの旋は饒舌だ。

「あと、適性審査を合格した人たちは、学園内にある塾に通わないといけないらしいぞ」

 塾? 学園内に塾があるのか?

「あっ、それと、玲」

「ん? なんだ?」

「東海学園って、今日合格したら即入学式らしいぞ。ちゃんと用意してあるか?」

「へぇーえっ、えぇぇぇぇっ!?」

 そもそもなぜ俺達がこうなっているかと言うと、こんなことがあったからだ。

            

            △


 神暦2016年。第3新東京市、来雲ブロック。

 そこは人間たちが住むことのできる最後の楽園(エデン)……。

 …………よし、現状を整理しよう。

 私の名前は鳴神玲一(なるかみれいいち)……。この来雲ブロックと呼ばれる最後の楽園に住む魔物ハンターだ。

 年齢は15歳。だが、すでに守備隊内では無敵を誇っていた。

 この絶対の剣、「エクスカリバー」があるからだ。

 私は身長178センチ、茶髪に灰色の眼を持っている。

 ……おっと説明に熱くなっているところに魔物がやってきたようだ……。

 最近よく見るのはイスに座りし魔物ベルフェゴール。奴は相当強い。

 だが、座してやられるつもりはない……(ボケているつもりもない)。私が編み出した黒魔術「死破壊(デスブレイク)」で木っ端微塵にしてくれる。

 さて……狩る!

「………………………………」

 ふっ、勘違いだったようだ。むっ、私はなぜこんな真っ暗な所にいるのだろうか……?

 たしか……


 ―男に担がれ、真っ暗な部屋に投げ込まれる―


 ―なんか薬で眠らされていたらしい―


 ―おまけに人影が見えないこともないこともないこともない(つまり肯定)―


 …………ええい! なんなんだ! この状況は!

「……玲」

 おのれ何奴! ええい、曲者か! いざ! 尋常に――旋か。

「なぜお前がここにいる……?」

 この黒髪赤眼の男は、名を御鶴城旋(みつるぎせん)と言う。私と同い年だ。

 身長180センチの男だ。そして私の良き親友であり、幼馴染であり、私と同じ魔物ハンターのエリートであった。

「……そのキャラ突き通すの?」

「ふっ、そのつもりだ」

 すると旋が左拳を強く握る。

 ま、まさか! このポーズは――『デスナックル』の構え! 魔物がいるのか!

 だが旋はその拳を手刀のポーズに変える。

 それは『エターナルソード』の構え! やはり魔物がいるのだな!! ええい、狩ってやる!!

 旋はその手を私に向け……突いた。

「きょっ!!」

 脇腹を……思い切り。

「おまっ! 何やってんだ、旋!!」

「中二病患者を正気に戻した」

「お、おう、それはありがとう……って! 俺は中二病患者じゃねぇ!」

「最初の自己紹介は『俺は鳴神玲一。中二街道まっしぐらだぜ』じゃなかったのか?」

「てめー! 何、人の事勘違いしてんだぁぁぁぁぁっ」

「(笑)」

「笑ってんじゃねぇぇぇぇぇっ!」

「このままだとニ……自宅警備員になるかもな。お前」

「なぜ濁した!!」

「(笑)」

「再度笑ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「あっ、そうだ。さっきの続きだけど、玲は外から見ると思い切り中二だぞ。『デスナックル』とか『エターナルソード』とか。よく恥ずかしくないな」

 スルーするな! ってか、

「なぜ、その名を!」

 というか恥ずかしいってなんだぁぁぁぁぁっ!

「読心術」

 どぉくしんじゅちゅぅぅぅぅぅっ!? やべっ! 噛んじまった!

「他にもそこらに散らばってた木材一本持ったかと思ったら、『エクスカリバー』とか言ってるし」

「それもなんで知っている!!」

「だから読心術」

 それですかぁぁぁい!!

 む、話がずれた。

「こうして私たちは長き旅へと―」

 ドスッ!

「きょっ!!!!」

 今のは入った。クリーンヒット。めっさ痛い!!

「元に戻るな」

「くそっ! っていうかなんでお前がここにいるんだ!?」

 ジンジン痛む脇腹(右にしか打ってこないから右がヤバス)を押さえながら聞いた。

「なんでって、父さんたちに呼ばれたから」

 ……ちょっと待てい! 呼ばれただと! それも親父たちから? なんだよ、扱いがまるっきり違うじゃん! 俺なんかいきなり男に担がれて、ここに投げ込まれたんだって言うのに!

「……物騒だな」

 そうそう物騒……っておいっ!

「どうやって俺の心を読んだんだ!」

「読心術」

 またかぁぁぁぁぁっ!!

 すっげぇー! さすが成雅(なるが)中学校、教えることが幅ひr……、

 ぱっぱかぱぁーぱっぱっぱっぱぁー!!

 なにかしらが登場する時のような音が響いた。

 くそう! 俺がまだ喋ってたのに。

「やぁみんなぁ、父さんだよぉ!」

 …………親父、その某巨大テーマパークのキャラクターみたいな声やめてくれ。千葉にあるのに東京って言われてる例のアレ。

「こんにちは、万雀さん」

 なんでそんなに平然としていられるんだ、旋?

「こんにちわぁ、旋クン」

 ……だから某ネズミの声マネはやめてくれ。息子として恥ずかしい。

「だからバンちゃん、やめようって言ったのに」

「いいじゃないかリュウちゃん、おもしろかったんだから」

 補足説明。

 リュウちゃんというのが旋の父親の御鶴城龍。とても真面目で、現在不動産会社次長の立場である。

 ある日の朝の風景をみると……、

「……父さん。仕事は?」

「すでに今月分はすべて終了してある。だがもう少ししたら行くつもりだ」

 と言う人だ。

 そして、バンちゃんというのが俺の親父の鳴神万雀(ばんじゃく)。一言で言うとニー……こほん。自宅警備員である。かわいく言ったら、お家お守り隊だ。

 ある朝の風景は……、

「親父ぃー。仕事はー?」

「働いたら負けかなー、と思ってる」

 と言うダメ人間だ。

 補足説明終わり。

「そうだ親父、ここに呼び出した理由は何なんだ」

 俺は投げ込まれたんだけど。

「おっそうだそうだそうだった。ハーイ注目! ちゃんと聞いてねぇ~」

「だからそれやめろ! ●ッキーもそろそろカンカンだぞ!」

「ちぇっ、つまんなーい」

 くそっ! この親父ぃぃ!

「じゃあ僕が代わりに」

 さすが龍さん頼りになるぜ。親父と違って凄いな。……というか、ここまで性格が違うのになんでそんなに仲が良いんだ? まあ今は置いておこう。

「父さん……これはどういうこと?」

「というかここはどこなんですか? 龍さん」

「えーっとまずここは、ただの倉庫だよ。ちょっと借りているだけで」

 ということは……ここはただの倉庫だったのかよ! ビビって損した。

「それで呼んだ理由は―」

「そこからは俺が説明しよう!」

 うおっ、親父! 生き返ったのかよ。というかあんたは座ってろ!!

「いやぁーお前たちの高校のことでな! せっかくだし一緒の高校が良いと思ってな」

 いやいや無理だろ! 旋はあの鳴雅だぜ? 偏差値78だぜ? 一般校じゃたちうちできないって。

「ここなんだが―どうだ?」

 ……ここまで呼び出しておいて(おれは担がれて)話す内容じゃないだろ。確実に。

 親父はなんか豪華そうな学園案内のパンフレットを取り出した。


「……私立東京海帝学園。通称東海学園」


「なんだってぇ!?」

 東海学園っていえば最近できた、ちょー頭のいいがっこうじゃねえか。

 今思った。……別に京帝でもいいと思うんだけど。

「……偏差値は80だって」

「は、はちじゅうぅぅ!!!!」

 いやいや無理だって! 旋はともかく俺は無理ぃ!

「……あっ、 なにか暗号みたいなのが書いてある……」

「マジで?」

 そこにはこう書かれていた。


〝さはいあざえぎなこちふなほ、すへけどぎけおあぬくとむらえ。 すあしんすめせ。ざえきけすちりぬよえぎけどくれら☆ ぎけおあつらえ〟


 ……なんのこっちゃ?

「ちょっと解読してみる……」

「おまっ! 解読できんのか!?」

「たぶん」

 マジか!!

 すると旋はおもむろに東海学園のパンフレットを見始めた。

 20秒後―

「……このあんごうがとけたひとへ、しふくでがくえんにきてみよう。しんさをします。ごうかくしたらにゅうがくできるよ☆ がくえんちょう」

 解読はやっ! ―っと訳さないと。えーっと―

 

〝この暗号が解けた人へ、私服で学園に来てみよう。 審査をします。合格したら入学できるよ星 学園長〟

―☆まで訳さなくてもよかったか……って!


「な、なんどぅあってぇ!!」

「……玲、落ち着いて」

「これが落ち着いていられるかぁー!」

 なんもせずに入学!? お、おいしすぎる! おいしすぎるよ神様!

 というか旋凄すぎるだろう!

「どうやって解読したんだよ! 教えて、教えて!」

「……書いてある暗号の文字を五十音で前の文字にしたんだ。ベタだけどわかりにくい暗号だよ」

 さすが旋! ―っとそうだ! 忘れるところだった。

「親父ぃぃぃぃぃ!」

「な、なんだぁぁぁぁぁ!」

 俺の気迫に押され親父も叫んでしまったようだ。

「俺ここにかける! 審査をクリアして東海学園に入学だ! 旋もいいだろっ!」

「……別にいいけど」

 おっしゃー! 決まりだぁ!

「と、とにかく適性審査、頑張れ」

 俺のテンションに若干引き気味の龍さんが口を開いた。

 ……なんで審査って書いてあるだけなのに適性審査だってわかったんだろう? 

 まぁいいや。


「頑張って受かるぞぉー!」

 ということがあったからだ。これが入学決意的宣言である。

            

            △


《私立東京海帝学園―それすなわち海帝湾に囲まれた人工島にある緑に囲まれた学園!

 敷地面積は人工島すべてのため、なんと500平方メートル!

 学園はもちろん寮だってアリーナだって広大!

 全校生徒は約200人。さあみんなも受験して、海帝学園にGO☆》

 とか言うコマーシャルを見ている俺こと鳴神玲一は、もうすぐ着く海帝駅に心躍らせていた。

 なんたって海帝市は、この東京の首都なのだから!

 今から10年前に首相が「よしっ、東京を一斉改革だ!」とかいう適当宣言で、東京の市区町村の名前が変わってしまったのだ。故にあの時言った『第三新東京市』などではないのだ。汎用人型決戦兵器も存在しないのだ。

 で、その時の首相と言うのが俺の親父の友達の叔父さん、間田善次その人だった。……というかただの他人だ。親父もあったことないらしい。

 それで東京の中心が、元千代田区から元江戸川区と元江東区の場所に位置する、海帝市となったのだ。

 ちなみに、総理の支持率が史上初の0%となったため、間田総理は東京の中心を海帝市にすることと東京の市区町村の名前を変えるだけで終わった。しかし10年たった今も海帝市が中心のまま、名前も変わったまま、というわけである。

 俺達の住んでいる来雲ブロック、もとい来雲市(こくもし)は元々、杉並区があったところにある場所的に東京の中心だ。10年前位に雲が大発生したことにより、来る雲ってことで来雲市となった。

 おっと説明が長くなっちまった。……キャラブレしないようにしよう。

「しっかし遠いなぁー。あとどれくらいだ?」

「リニアモーターカーを降りたら港に行って……」

「行って?」

 あれ? 今俺の嫌いなものが連想できるような『み』から始まる言葉が聞こえた気がするのだが、気のせいでありますように。

「シーバスに乗って学園に行くみたい」

「し、シーバス!!??」

 くそう! やっぱりか!

 何を隠そう俺は乗り物が嫌いだ。簡単に酔ってしまう。ちなみに今のリニアモーターカーでも酔いそうだ。……まずい。思い出してリバースしそう。朝しっかり食べたし、酔い止めも飲んだんだが。

 特に海はダメだ。船がダメすぎる。というかなんで船なる存在があるのだろうか。節々疑問になる。海は泳いで渡ればいいのに。

 ノーモア、三半規管泥棒。

 そんな中、電車の中で放送が入る。 

【海帝ぇー、海帝ぇー、お出口は左側です】

 この放送変わらねーな。いつの時代からだ、この放送? なんかすっかり定番って感じだな。

「ほら降りるよ、玲」

 ガタン! ドアが開く。

(フリーダム! 大地って素晴らしい!)

「……まだ大地じゃないよ」

 ぐあっ! そうか! リニアモーターカーの駅はモノレールの駅と同じくらい高く設計されたんだっけ? ……って!

「また読心術か!」

 なにこの天才、スゴすぎだろ。天才めー、このこの。

「いや、今回は口が動いていたから読唇術」

 そうなのか……あれ、読唇術? ……日本語って難しー! 「読心術」と「読唇術」―ややっこしー!

「とにかく行かないと、学園行きのシーバス出るから。あれ3時間に1往復だから逃したらおしまい……」

 なに! そうなのか!? それはまずいな。

「行くぞ、我が半身よ!」

「……言ってる意味がわからない」

「大丈夫だ。俺もいまいちわかってない」

 ピキーン!

「あ……そう」

 まあまあ、そう哀れむ目で見るな。本気で自分が悲しくなってくる。

 おっとこんなことしてる余裕なかったな。

「はやく行こうぜ」

「それ俺のセリフ」

 おっとすまん、すまん。

 それにしてもシーバスか…………。何時間乗るかによっても変わってくるが、まあ30分くらいなら大丈夫だろう。

「よっ!」

 俺は駅の階段(マンションの二階くらいの高さに相当)を飛び降りた。

「……危ないよ玲、いくら運動神経があっても」

「いいじゃん別に。それより急ごうぜ」


            △


「リ、リバァァァァァス!!」

「……大丈夫?」

 シーバス(っていうか、ただの漁船)に乗って数秒(1秒)俺は酔った、荒波に。……そんな波、荒くもないけど。あとだれかツッコミ入れて。

 結局30分もちそうにもない。せめてあと5分だ。まあリバースしてる時点で時すでに遅しってヤツだけど。リバースとシーバスって似てるなぁー。おっと壊れてきたな俺。

「……あと10分ぐらいだから、気を確かに」

「お、おう」

 じゅ、10分か……がんばれ、俺! ふんばれ! 俺!! お前ならできるおれぇー!!

「リバァァァァァァァァァァス!!」

 心の中で叫んだのがいけなかった。というかすでに限界到達してるっぽいぜ。ご愁傷様。

フロム、俺! まずい、このままだと『自画自賛(ナルシスト)』のレッテルを貼られてしまう!

 ぽかっ。

「いでっ」

「中二になるな」

 軽く殴ってくれたことを優しさと呼ぶべきかい?

 すると、旋が握りこぶしを構える。

 こ、これは『デス―

「それ以上言うと、花が咲くよ。真っ赤な」

 ……よね。そうデスよね。

「あっ、そうだ。あの話の続きだが……」

 いやっ、この状態じゃ話すのは……。

 こういうときに助かるのが読唇術。……間違えた、読心術。もう今度から「どくこころじゅつ」と「どくくちびるじゅつ」に変えようかな。……「よみ」のほうが良いかなぁー。なんか「毒の心」と「毒の唇」みたいになってるし。

 というか案外俺余裕だなぁー。まあ出すもん出してるからかな? 口からこう、ダーっと。

「……了解、俺が話すから」

 助かるぜ。その行いだけで俺がどれだけ助かるか。

「東海学園の塾の内容はすべてがブラックボックスで、ハッキングしたんだけど結局何もわからなかった……」

 スゲーな、旋。お前ハッキングとかもできるのか。天才だな。よっ! T・E・N・S・A・I天才! ふむ。リズムに乗るのも悪くない。でも人前でやるのはやめよう。99.9999(中略)99%の確率で昔の一発芸人みたいになる。今もさりげなくスベった感満載だからな。

「だが、かろうじてわかったのが、塾の生徒の人数と、先生の名前。塾の名前と内容はわからなかった」

 おお、おもしろくなってきた。……くそう、また揺れてきた。やっぱりキツイな船は。

 俺の初乗船は3歳の頃だったか……。もうその時から酔ってたけど。以上まったく面白みのない苦き思い出話でした。

「塾の生徒の数はたった25人なんだけど、ここで驚愕の事実」

 お、なんだなんだ。俺って「驚愕の事実」っていう言葉、好きなんだよね。なんかこう、得した気分になるじゃん。意外性とかあるし。

「200人が入る本校舎より塾の校舎のほうがハイテクで大きい」

 ふーん、えっ? なんで塾のほうが多いんだ? 塾は25人しかいないんだろ? なんで202人(俺達が入ると仮定して)の本校舎のほうが大きいんだ?

「それと講師は学園長」

 学園長直々。なにかありそうだけど。

「その学園長というのが……」

 ゴクリ! ……酸っぱ!

「小夜凪紅ノ介」

 さよなぎ、こうのすけ? ……はっ?

「え、えぇええええー! リ、リバァァァァァァス!!」

「……叫ばなくても」

「いや、普通叫ぶだろ! 驚くわ!」

 小夜凪紅ノ介。親父と龍さんの共通の知り合いだ。かなり仲が良い。

 俺と旋も昔、遊んでもらったことがあるお兄さん……と呼ぶべきだろう。だって紅くんは25歳なのだから。いやー若い。若いっていいねー。まあ俺達のほうが若いけど。

 あっ、紅くんというのは、小さいときに小夜凪紅ノ介さんに、俺がつけたあだ名だ。その頃は俺と旋は5歳で、紅くんは15歳だったからな。歳が近かったしこんなフレンドリーな呼び方が定着したんだろうと思う。それに俺には兄貴がいたからな。兄貴も紅くんと同い年だし、旋の姉さんも同い年だからな。『いた』についての話はまた今度。

「でもなんで紅くんが学園長? 若すぎない?」

 25歳だし、普通だったら教育実習生とかじゃないのか? いや無理か。教育実習生ってたしか大学の人とかがやるんだっけ? それじゃあ新任の教師とか?

「……さぁ? 確かに若すぎると思うけど、なにか秘密があるかもな」

 秘密ねぇー。わかんねーなー。

 あと塾の内容とかまったく想像もつかないな。何やるんだ? 勉強に関しては普通に授業でやると思うし(というか偏差値的に普通じゃないだろうなー。ぜって―ハイレベルだよ。ぜってー)スポーツとかか? 

「……あっ、見えてきたよ」

「なにが?」

 今考えてる途中だったのに。おかげで頭が『すっからかーん』だよ。まあ元々なにも入ってないんだけどね。俺はあれだから、あれ。うましか。

「それにしてもなにが見えてきたって?」

「私立東京海帝学園が」

 旋の指差した方向を見た。

 なっ!

「で、でっかー! なんじゃこりゃー! ……リヴァァァァァァァァァス!!!!」

「……だから叫ばなくても」

『バ』が『ヴァ』に変わった瞬間だった。

 

  

 東海学園島(今俺が名付けた)に上陸。

 ん~、大地って素晴らしいぃぃ! (本日二回目~)

「……はやく行こう、玲」

「おう!」

 今度は読心されなかったな。でも理屈がわからん。

 まあ俺に理屈なんてどーでもいーけどな。わかんねーし。

 


 第一研究室―(訂正)ぽい所。

「名前をどうぞ」

 黒髪に白衣。いかにも女研究主任って感じの人だなぁ~。……メガネじゃないんだけどな。なんか研究主任っぽいんだよ。メガネじゃないんだけどね。

 まあここはウケを狙わず、素直に自己紹介するべきだな。空気を読むことはスバラシイ。

「鳴神玲一です」

「……御鶴城旋です」

 すると女研究主任(仮)さんはカルテ? と呼ばれているようなものを持った。こりゃまた研究主任から医者にジョブチェンジか?

 まあたぶん見てるのは俺達の情報だろう。あらかじめ送っておいたし。そうしないと審査を受けられなかったからな。

「ではまず簡単な質問などをします。それぞれ一人ずつ行うので、まず……鳴神君からやりましょう。御鶴城くんは待機室で待っていてください」

「……はい」

 ヒマそうだなぁー旋。やる気のない顔は良くないぜ? これは面接みたいなものなんだから。第1印象が大切だぞ。

 たとえ……裏口入学でも。

「……で、鳴神君」

「え、は、はい!」

 やばっ! 全然話聞いてなかった。まだ何も話してなさそうだけど。

「……これから質問するのに上の空はだめよ」

「す、すいません」

 上の空、ねぇー。上に空なんて無いけど。なんてったって、壁! 壁! 壁! なのだ。

「まずはイスに座って」

「は、はい」

 うっ、なんか緊張してきた。

「えーっと、まずは『悪事をはたらいていている奴は許せない』イエスかノーで答えて」

「…………はい?」

 何を言っているんだ? 俺の緊張の糸がプツンという音とともに切れた気がした。あくまで気がしただけだ。そうあってほしいと願う。

「だから『悪事をはたらいている奴は許せない』イエスかノー」

 やっぱり切れてるよー。緊張の糸。

「……えっ? こういう質問って、基本的に自分で答えを出すんじゃないんスか? なぜに2択?」

「いいじゃない、別に、それよりイエス? ノー?」

 えぇー? かなり強引だなぁー。まあここで株をあげておかねばな。

「イエスです」

「なぜ?」

 なぜって……えっ、理由も言うの? 

 えーっと……よし、これでいこう。

「悪事がどういうことかよくわかりませんが、悪いことって、他人に良くないから悪いことなんですよね? だったら許される行為ではないと思います」

 よしっ!優等生っぽく言えたぞ! これなら――

「それじゃあ、今、目の前で悪事をしている人がいたらあなたはどうする?」

「ぶん殴る!」

 ……あっ、やっちまった! まずい! これでは審査が――

 ブゥーン! ピピッ!

 ……そういやあの機械は何を調べているんだ? あっ、女研究主任(仮)さんのもとに浮遊型ディスプレイが――って浮遊型ディスプレイ!? そんなものがあったのか……これ塾専用か? 進んでるなー。というかなんでそんな凄い物を世に出さないんだ? ノー●ルとは行かないものの特許ならとれるんじゃないか? いや、でもノー●ルいくか?

「!」

 ん? どうしたんだろう女研究主任(仮)さん。……えっ? なぜ女研究主任(仮)さんって名前かって? だって名前知らないし。もう一度言うけどメガネじゃないよ? 

 ……あれ? 今俺に聞いたのは誰だ!? 幻聴なのか? そうなのか?

「じゃあ、得意な教科を教えてちょうだい」

 おっ! 無難な質問キター☆ ……☆はふざけすぎた。

「体育です!」

 というか、これくらいしかとりえのない俺。

 泣ける。

 まぁあとは家庭科の調理実習くらいか。

「へぇー、じゃあ得意なスポーツは?」

「陸上ですね。あと、サッカーも得意です」

 陸上では全中総体にも出たし。

「……よしっ! 質問終了。鳴神君」

「は、はい」

 俺はいきなり名前を呼ばれ、少し慌てた。……フリをした。

「御鶴城君が終わるまでちょっと待っててくれる?」

「りょ、了解です」

 ……今ので何がわかったんだろう? やっぱりスポーツかな? 

 ガチャッ!

「おーい、旋。交代」

「わかった」

 はぁーヒマになっちゃったなぁー。そうだ。京都に行こう。

 ……バカか、俺は。


            ▲


「御鶴城君、まずはイスに座って」

「はい……」

「じゃあ質問するね、まず『悪事をはたら――」

 ………………………。

「Yes 理由はありません。悪い奴は悪い奴です」

 女研究主任(仮)さん(玲一の命名)(さっき読心術で読んだ)は単純明快すぎる俺の回答に驚いたようだ。いや、読心術に驚いたのかもしれないが。

 ピー!

「!」

 そしてまた驚いた。どれだけ驚けば気が済むんだ? というか心読みやすいなこの人。

「えーっと、じゃあ得意な教科は?」

「全教科です」

「ぜ、ぜんきょうか!?」

 まずい。言いすぎた。あの教科だけは例外だ。

「……しいて言えば数学ですね」

「じ、実技は? たとえば100メートルとか?」

 質問変えてきたな。

「100メートルは得意ではないので、11秒12くらいです」

(じゅ、十分速いじゃない!)

「あ、ありがとう、質問は終了よ。ちょっと待機室で待っていてちょうだい。5分ぐらい」

「……わかりました」

 失礼します。と頭を下げて、俺は待機室へと向かって行った。

 

            ◆


 旋がいないことを確認して女研究主任(仮)さん(玲一の命名)は―

(まさか、こんなことありえない)

 ディスプレイには適性[R]の文字があった。

 東海学園は適性[A]の人しかいない。『あれ』の適性値は[A]までしかないからだ。

 だが今回は初めての[R]のため驚きを隠せない。というか[S]まで飛び越えてしまっているわけだから驚きが隠せない。

(本当かどうか確かめないと。機械の故障かもしれないし)

 女研究主任(仮)さん(玲一の命名)は難しい目でディスプレイを見つめていた。

(さーてやるわよ)


            △


 5分後―

「よしっ! 5分たったぞ! 合格してるかなぁ?」

 合格してないと中学浪人だけど……。それだけはあってはならないな。

「……とにかく行こう」

 ガチャッ!

「失礼します」

 学生は見た! 春の女研究主任(仮)殺人事件!

 ……にはなっていない。

「あっ鳴神くん、御鶴城くん」

「結果どうでした?」

 うわー合格してるかなぁ? ……合格してないと浪人だけど。

 残念ながらその期待はバッサリ切られた。違う意味で。

「なに言ってるの? まだ終わってないわ」

 えぇー! そうなの!? 

「次はアリーナに行くわ。ジャージは学園のを貸すから着替えてきてちょうだい」

 マジか!? この3ヶ月卒業式だったリで忙しかったから体なまってないかなぁ? あっ、でもそういや親父と龍さんがなんか『特訓だ!』とか言って運動したっけ。今思ったんだけど、特訓って何の特訓だ?

「……わかりました、行くよ、玲」

 おいちょっと待て、って!

「首根っこ掴むな!」

 すると旋が止まる。どうしたんだ?

 あっ。

「「アリーナってどこですか?」」


            △


「金かけてんなー」

 と一発で思うぐらいアリーナは広かった。

 今いるのはアリーナの中にある第1『小』更衣室。小となっているが、教室5個分の広さがある。これで小だったら大はどれくらいになるのだろうか。というかムダに広いな。全校生徒202人(俺達が入学すると仮定して)なのに。

「さっさと着替えようよ、玲」

 おっとそうだった。

 いままで陸上部の先輩方(女子)が使っていたのだが女研究主任(仮)さんの話で借りられることになった。その時女研究主任(仮)さんが***先生と呼ばれているのをきいたが、その***の部分が聞き取れなかったので、まあまだ女研究主任(仮)さんでいいか。

「それにしてもこのジャージカッコイイな」

 メインカラーは白。線の色は黒と青というこれまたカッコイイ色のチョイスだった。

 紅くんのカッコイイもの好きは変わっていないようだ。それにしても5歳の頃の記憶を覚えているなんて意外に凄いな、俺。

「急いで」

「あ、はーい」

 ***先生が急かす。もう今度から***先生1本で。

 まあたぶん急かす理由はアリーナの使える時間が限られているからだろう。

「早くしろ、玲」

「ちょ、ちょっと待て、旋」

 ユーには労いという言葉が無いのかね、ミスター セン?

 まあそれは置いといて。

「よし、終わった」

「じゃあ行くわよ」

「「はい」」

 僕達はまだ知らなかった。あの日見た花の名前を。……間違えた。

 俺達はまだ知るよしもなかった。これから始まる地獄の輪廻を。



「えーっと、なにを?」

 アリーナ中央付近。***先生は相も変わらず白衣にカルテ? 的なもの。

「このアリーナを1周するの」

「えぇええ!!」

 このアリーナバカでかいのに!?

「ちなみに1周1キロよ」

 ふざけろ! なんで入学式前に走るんだ!

「タイム計るから。審査にも影響するわよ。というか急いでね。入学式始まっちゃうから」

 マジかよ! ふざ以下略。

「よーい、スタート」

「くっそー!!」

 そして何気に旋! 

「抜かすなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 

「はぁはぁ」

「やっぱり速いわね―」

「…………………」

 くそっ、旋。涼しい顔しやがって!

 でもまあこれで結果が……。

「それじゃあ学長室にいってくれない? 地図は渡すから。結果も学園長から通知されるわ」

 ここまでやってなぜ教えようとしない! 鬼か! オーガか!

「……わかりました、行くよ、玲」

 旋が動き始める。ちょっとまて!

「って首根っこ掴むな!」


 

 本校舎C棟、職員棟3階、学長室――

「失礼します」

 そこには赤毛&目が細い外から見たら優男? な人が立っていた。

「やぁ☆ って玲一クンに旋クン☆? 久しぶりだね☆」

「紅くん! 久しぶり!」

 そう。これが小夜凪紅ノ介。通称紅くんだ。なぜか語尾に☆が付く。

 ちなみに4カ月前のあれは紅くんの真似だった。いまは遠き昔……でもないか☆ 今のも真似だ。

「ははは、まだその呼び方で呼んでくれるの☆?」

「まぁね」

 あっはっはっはっは。俺と紅くんが笑う。

 やっぱり紅くんは親しみが持てるや。

「ということは玲一クンと旋クンが合格者☆?」

「えっ? 合格者?」

 なぜかいま、受験生の1番欲しい言葉が聞こえた気がするのだが……。

「あれっ? 言ってなかったかい? 君たちは合格だよ?」

 あれっ? なんでこんなにさらっと言っちゃうの? まぁいいや、とにかく――

「やったぁ!!!!」

 これで浪人しないで済む!

「……で? 適性値の合格値は? 紅ノ介くん」

 ……あれっ? なんで平然としちゃってるの、旋? 盛り上がろうよ! じゃないと一人で盛り上がってる俺がバカみたいじゃん。まあバカなんですが。

 というかそれ聞く意味あるのか?

「合格値は[A]なんだけどね☆ 君たちの適性値はなぜか[R]でさ☆」

 ア、アールって……。なんでAとS飛び越えちゃったわけ? というかどうしてAの次がSで、その次がRなんだろう? あとでウィキ●ディアで調べてみるか……。

 あっ! そういえば。

「疑問に思ったんだけどその適性値って何の適性なの?」

 まぁ、だれもが思う疑問だな。うん。さすが俺、みんなの意見は大切に! だな。

「あれっ? 先生たちから聞いてないの?」

 ちなみに紅くんが言っている先生とは親父と龍さんのことだ。なぜか紅くんはうちの親父と龍さんを先生と呼ぶ。


「その適性っていうのは‘怪盗’の適性値なのだよ☆」


「……………………はっ?」

 俺はなんかよくわからない単語が出てきた気がするのだが……って旋も唖然としてる! あの旋が! あの無表情の旋が! 重要な事なので二回思いました。決して言葉として発していません。ご了承ください。……というテロップが流れている。なぜかって? 頭の中が混乱しているからさ!

「いやだから、‘怪盗’だよ☆ か・い・と・う!」

「かい……とう?」

 あれか? 冷凍食品を食べられるようにするあの言葉か?

「うん☆ 怪盗☆」

 あれか? クイズを答えるとかのあの言葉か?

 もしくは刀を快く抜くあれか?

「それの適性値が[R]ってこと?」

 理性を取り戻した旋が訪ねた。その頃の俺は――

「アビダブダブダ!」

 壊れていた。

 現在進行形。『かいとう』の言葉を探している状態。

「そうだよ☆ ちなみに旋クン、東海学園の東海を逆にしてごらん☆」

「か、い、と、う?」

「そゆこと☆」

 ガクッ! 旋は肩を落とした。

「あっ、ちなみに塾の名前は――」

ゴクリ……。旋は性格が変わってかなり明るくなっていた。その頃の俺は――

《ふっかつ の じゅもん を となえますか?》

《はい》←

《いいえ》

 ピコン!

《ふっかつ の じゅもん を となえてください》

「ゆうていみやおうきむ!」

 復活の呪文を唱えだしていた。

 現在進行形。真っ黒い画面に文字を入力中。

「その名も」

 ゴクリ……。


「R2!」


「……R2?」

(なんかそれっぽい名前かと思ったら……)

「うん☆ あーるつー☆」

「……なぜ?」

(というか俺なんか性格変わっている気がするのは気のせいか?)

 と、旋が考えていた頃、俺は――

「あてありとりまろとちきえ!」

《ふっかつ の じゅもん が ちがいます》

「ぐあっ」

復活できていなかった。

現在進行形は真っ黒い画面の文字列に『ふっかつ の じゅもん が ちがいます』という表示がされている状態。

「R2……なにかの略?」

(というか略だろうな)

「うん☆」

「それって?」

「もともとは東海塾って名前でかっこよさの欠片もなかったんだけど」

(東海塾……たしかに微妙だな。逆にしたらすぐわかるし)

「せっかくだし塾の名前を変えようってひそかに思って考えた人が、琉幡高校の理事長が出張にいっていた時のまとめ役だったから……」

「だったから?」

「『りじちょうだいり』でR2☆」

「なっ!」

(て、適当すぎる! というか意味でも何でもないのでは?)

 旋渾身のツッコミ。心理内でということだな。

 俺は頭が混乱しているせいで、読心術が使えてしまった。

 Oh!

「でも略が『りじちょうだいり』だとかっこよくないか☆」

(いや、かっこいいとかそういうことじゃないでしょ……)

 旋渾身のツッコミパート2。だがこのあと旋はツッコミに目覚めたり目覚めなかったりする。

 この時も読心術。

 Wow! WOWOW! 笑えない……。


「それじゃあ『ライジング・レヴォリューション』で☆」


(ここにも中二病患者がいた……)

「よし☆」

(絶対紅ノ介くんって、精神年齢低いよな……)

「というかなぜ『ライジング・レヴォリューション』? 直訳すると『上昇革命』なんだけど……」

 すると紅くんは言った。

「カッコイイから☆」

 唖然。

「けってーい☆」

 紅くんはピースのポーズでにっこりしている。

 意外に視界は良好。

(なんかモロモロ駄目な気がする)

 すると、紅ノ介くんは思い出したように。

「あと理事長っていうのは龍先生だからね☆」

「そうだったのか……あれ? ということは代理って万―」

「それじゃあ●ッポに捕まって俺おじゃんじゃん!」

 ……あれっ? 話がかみ合っていない? やっと復活の呪文が成功したのに。王さまに会ったんだぞ! あと1426ポイントの経験値でレベルアップするんだ! でも文脈おかしかった気がするし、まだレベルアップできないのか? あっ、さっきの状態は視界は良好だったんだけど、耳が遠くなって聞き取れなかったみたい。紅くんと旋が話していた内容はぜんぜん、もうぜーんぜーん聞き取れなかった。

 ちなみに復活の呪文は『かいと うかい とうそれ かいとう』だったぜ! いや、まさか『いとう』だったとは……ってそんな話じゃない。

「やっぱり先生たちから聞いてないんだね? じゃあ話しちゃおう☆」

 うわっ! 精いっぱいフォローしてくれた! ありがとう紅くん! あなたは神!

「というか、まず怪盗って聞くとやっぱりあの事件だよね☆」

 3年前、時価5億円相当のダイアモンド(200カラット)が盗まれる事件があった。その事件は不可解な謎と目撃証言によって怪盗が行った事件として処理された。

「その事件は、唯一怪盗が表舞台に立ったという事件だったんだけど――」

 ―っていきなり何の話をしているんだ? 意図がわからないよ神。

「いきなりそういう話をするってことは――」

 ん? どういうことだ? 旋?

「その通りだよ、旋クン」

 えっ? よくわからないんだが? 教えてよ、旋! 神!

「玲一クンわかってなさそうだね? じゃあヒント! 先生達は琉幡高校の先生でね、僕は教え子だったんだ☆」

 へぇー。それで紅くん(元に戻した)は親父たちの事を先生って呼ぶんだー。……あれっ? たしか琉幡高校ってこの学園の母体じゃなかったっけ?

「紅ノ介くんは怪盗だったの?」

 ナイス旋! 俺も聞きたかった!

「そうだよ? ちなみにまだ現役だし☆」

 えぇー! そうなのぉぉぉぉぉっ!?

「あと、琉幡高校はね。かなり古い校舎だったんだ☆ ほんとにボロかったんだよ☆」

 いや、だからわかんないってば。あと思い出話もいらないよ。

「玲、まだわからないの?」

 旋、いつになったらいつもの性格戻るんだ?

「それで、塾の講師は校長と兼用でね、万雀先生は大変そうだった。ちなみに旋クン。あの名前考えたのは万雀先生だからね☆」

「やっぱり……」

 ジーッ。

なんだよ、旋。哀れむような目で見て。なにかあったのか?

「ネーミングセンスがないのは親譲りか」

 えっ? なにか言ったか? ……でも、とにかく整理をしよう。

 ―紅くん(小夜凪紅ノ介)は現役の怪盗―

        +

 ―紅くん(小夜凪紅ノ介)は親父たちの教え子―

        +

 ―親父たちは琉幡高校で塾の講師と理事長&校長をやっていた(紅くん情報)―


 以下の事から察するに……。


「親父たちが、怪盗だったってことか?」

 

 …………って!

「うおおおおあああああああああああああああっっ!!??」

 マジかよぉ! なんかメッチャ叫んじまってるけど、この際気にせん! (というか薄々気づいていた人多いと思うが!)

「「遅い!」よ、玲一クン!」

「わひぇ!」

 ……よくわからない声がでてしまったのは気のせいだと信じたい。とにかく信じたい。

「反応が遅いよ!」

「大丈夫か、玲? 頭おかしいんじゃないか?」

 うっ! 言いたい放題だ。

「いや、わかんないものはわかんないし」

「「開き直るな!」」

 いやいやちょっと待て、なんでそんなに紅くんと旋の息がぴったりなんだ? あと次は紅くんの性格が変わってきた気がするのだが? ☆ついてないし(話口調でわかる)

「玲一クンはもっと勉強を……あっ!」

「どうしたの? 紅くん」

「ごめん。あと10分で入学式だ☆」

「えぇーっ!!!!」

 おいおいまずくないか? というかなんで学園長の紅くんが忘れるんだ! それと元に戻ったね紅くん。……ってそんな場合じゃない!

「はいこれ制服☆ はやく着替えてね☆」

 遅いよ!

「はやく行くぞ。玲」

「旋! って着替えるのはやっ!」

 とにかく!

「「「急げー!」」☆」

 To be Continue

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