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狼は羊をゆっくりと罠にはめる

作者: ゆずる

もしかしたら18歳未満禁止かも…!

いつもぎりぎりラインで書くのが筆者のポリシーです。(今のとこ)


















藤原夏帆19歳、突然ですがピンチであります!!!


………なぜかと言えば……。


(…み、水着が消えた!!)


絶体絶命です!!!!






※※※

夏帆は夏休みを利用して、女友達2人とプールに来ておりました。


そしてプールと言ったらウォータースライダー!


…しかし夏帆は少し苦手のようで…。


「…無理無理むりーッ!!」


ウォータースライダーを滑るため頂上に着いてから夏帆は怖じ気づいた。


ーー実は、高所恐怖症だったりする。


友達の前では見栄を張ってあれよあれよと言う間にこんな高い所まで来てしまった。


このウォータースライダーはただのウォータースライダーとは違う。


高さと傾斜がすごい絶叫ウォータースライダーなのだ。年齢制限も中学生以上と設けられている。


まずは室内から階段で登り頂上へ向かう。滑り始めると最初は穏やかなカーブを何度か描く。その後フィニッシュが絶叫の鋭角のストレート!外のプールへと猛スピードで飛び込んでいくのだ。刺激を求める若者に大人気のアトラクションである。



…だが…


高所恐怖症の夏帆がこんな絶叫マシーンに乗れる訳がない。とうとう自分達の滑る番になったのだが、夏帆の顔は真っ青だ。『…やっぱ、やめない?』とかぼそい小声で提案する。


そんな夏帆を見て友達2人はため息をつく。


「夏帆、後ろも順番待ちで並んでるんだから、今さら遅いわ!」


「そんなに嫌なら、階段で下に降りてなさいよ。私たちは滑るから。下で待ち合わせね。」


そう言うと友達2人は次々にウォータースライダーの中へと滑って行った。


上には夏帆1人になってしまった。後ろを振り返るとずらりと人が並んでいる。


…引き換えそうにもあの狭い階段を降りれるだろうか…いやできまい。

皆大人気のウォータースライダーを大行列で並んでいる。あの長い階段を今から引き換えして降りるなんて、お客さん達の大迷惑だ。


ーー滑るも地獄。引き返すも地獄。


夏帆はただ今…究極の2択のどちらかを選ばなければいけない状況に置かれていた。


夏帆は負けず嫌いだった。

…結局…恐る恐る入口に腰掛ける。

手は両隣の鉄の柱を握った。…これを離せば滑ってしまう。

水の流れにお尻が引き込まれそうで、恐怖で鉄の棒をしっかり握る。


………


しばしの間。


(こ、怖いよーーッ!!)


…中々手が鉄の棒から離せない。

後ろの方から「姉ちゃん、早くしろよー」などと野次が飛ぶのが聞こえる。


(そ、そんなこと言っても、怖いもんは怖い……え…?)


…なぜだろう?

…誰かに背中を押された…ような…


「…ぎ、ぎゃゃぁぁーーーッ!!」


背中を押された夏帆はそのままウォータースライダーの中へと飲み込まれて行った。



ザッブン!

下のプールにダイブする。


(こ、こ、怖かった~!!)


何はともあれウォータースライダーを滑り終えた。


次の人が降りてくるので、プールの中から出ようとプール内を移動している時、違和感に気づいた。


(…なんか…胸がすかすか…する………!!)


夏帆の水着の上を身につけてなかった。


夏帆の水着はビキニで背中で結んであるものだった。

…滑っているとき解けたのだろうか。


プールの中を見ようとも、深いのでどこにあるのか分からない。


夏帆は友達に助けを求めようとキョロキョロと周りを見渡す。


…残念なことに友達2人は見当たらない。…『多分当分夏帆は帰ってこないだろう』と予測し、ジュースでも買いに行ったのだろうか。


…夏帆、絶体絶命です!!!!




中々プールの外へ上がれない夏帆の背後に気配を感じた。


「!」


急に後ろから抱きしめられた。

悲鳴をあげようとすると、手で口を押さえられた。


「…ばか!騒ぐなって!」


どうやら声の主は男の人らしい。


…さらに恐怖が湧いてくる。なにせ夏帆は上半身すっぽんぽんな訳で…。さらに暴れた。


「…お前、上なくなったんだろ?…俺が探してやろうか?」


男の一言に夏帆はびくっと大人しくなる。


周りはドンドンウォータースライダーを滑り終え、にぎやかで、誰も2人を見てはいまい。ただ、カップルがいちゃこいてるとしか見ていないようだ。


「…あ、あの…。」


急に抱きしめられたから焦ったが、わざと他人の目を避けてくれたのだ。


「あ、ありがとござ…「ただしね…。」


男は夏帆の言葉を遮り耳元で甘く呟く。


「君が俺の彼女になってくれたらね♪」


「…え!?」


男の手は不自然な動きで太ももを触ってくる。


「や、やめ…!」


親切な人だと思ったら、やはり危険な人に捕まってしまった。


夏帆は必死で頭をフル回転させた。

…今、この人の要求を飲まなかったら、水着のない状況でさらに羞恥し続けなければいけない。友達2人はいつ戻ってくるか分からない。


(…だけど…。)


まだ顔も知らない男の物になるなんて嫌だ。まだ夏帆は処女である。声と動作からこの男は相当遊んでいそうだ。彼女になった途端遊びで食べられてしまっては屈辱以外にない。


「ママー。なんであのお兄ちゃんとお姉ちゃん、くっついてるのー!?」


「…こらッ!あんまり見るもんじゃありません!!」


子どもと母親の会話を聞き、夏帆は体が茹でダコのように真っ赤になった。


「あ、あの…は、離してくれませんか?」


「どうして?」


後ろから不思議そうな声が聞こえ、夏帆のうなじをペロリと舐められる。


「…あ!」


始めての感覚に夏帆は堪らず声を上げてしまった。


「…早く君が決めないと、ずっとこのままだよ?」


(…それって、私には選択肢がないじゃない…!)


夏帆は今までここまでの強引な男に遭ったことがない。高校時代の同級生は草食系男子ばかりで夏帆はうんざりしていた。

男ならもっと頼もしく女性を引っ張って欲しい。ーーそんな男性がタイプだった。



ーーはて。この男はどうだろう。

いきなりの強引さ。

見ればたくましく鍛えられた小麦色の腕。


……以外にも夏帆の好みの男性かもしれない。


「わ、分かりました。貴方の彼女になります。」


後ろで男がニヤリと笑った気がした。


「じゃ、ちょっと待っててね。」


男は夏帆から手を離し、すーとプールの中へ潜ったようだ。


すぐにまた夏帆の背後に来た。


「着けてあげるよ。」


そう言って夏帆の腕に水着を通そうとする。


(は、恥ずかしいッ!!)


嫌だと言っても、どちらにしても誰かに後ろを結んで貰わなければならない。水の中で1人で結ぶのは至難の技だ。ならば男に委ねるしかないだろう。


「…うぅ…。」


男はなんともたやすく水着の紐を結んだ。


「はい、OK!」


「あ、ありがとうございます。」


その時始めて夏帆は男を見た。


日焼けした肌。無駄のない筋肉。黒髪に爽やかな容貌。…どこからどう見てもイケメンだ。


夏帆は一気に顔が真っ赤になる。つまり俗に言う『一目惚れ』と言う奴だ。


「俺は雅也まさや、21歳。君は?」


「あ、藤原夏帆、19歳です。」


雅也を直視できず、夏帆は下を向いて答えた。


「夏帆か。いい名前だな。」


夏帆を抱き寄せ雅也は甘い声でささやいた。


「夏帆の胸、でかいよなー。さっきから俺我慢できそうにないんだけど、どう責任取ってくれる?」


「え?…せ、責任?!」


さも夏帆が悪いと言わんばかりの雅也のセリフに夏帆はしどろもどろだ。


「好きな子の裸見て、襲わない男は男失格でしょ?…取り上えずプールから上がろうか。」


夏帆は雅也に引きづられるようにプールから上がる。


「か、夏帆ッ!!あんた誰よ、そのイケメンは!」


ジュースを持ってやってきた友達2人が驚いた声をあげている。


「…夏帆の彼氏になりました。雅也です。夏帆の友達も皆さん素敵な女性ですね。」


爽やかなスマイルに友人2人はぽーと顔を赤くする。


「悪いけど、夏帆を貰っていきたいんだけどいいかな?」


(なぜ、この人私じゃなく友達に許可とってんの?…ってあんたらコクコクうなずくんじゃなぁぁい!!)


「夏帆、さようなら。大人になるのね。」


「大丈夫。今日は私の家に泊まるってことにしてあげる。…さよなら、夏帆。夏帆が大人になっても私たちは友達よ!」


手を取り合って友達2人は泣いている。


(い、いや、そんな茶番劇いらないから!)


「…は、はははは。」

夏帆は乾いた笑いしか出てこない。


「…じゃ、夏帆。俺と一緒に行こうねー♪」


雅也にがっちり腰に手を回され、引きづられるように出口に向かう。


(え、まさか…私、また大ピンチ?!)


夏帆の純潔は果たして守られるのだろうか。



そして夏帆は知らなかった。

雅也の計画的犯行に。


ウォータースライダーの頂上で怯えている夏帆に雅也が『一目惚れ』したことに…。


夏帆の背中を押し、その隙に水着の背中の紐を解いたことに…。


案の定、プールの中で恥ずかしそうにしている夏帆に欲情しながら親切なふりして近づいたことに…。



狼の計画的犯行により、囚われてしまった一匹の羊ちゃん。

狼は今晩どのように羊を調理しようかニンマリとほくそ笑んだ。









夏恋をテーマに書いてみました。


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