最終回 機械少女は壊れない。(1)
あの奥義の正体は一体なんだ。レイカの時は膝から発射したミサイルと思っていた。しかし、いくつかの疑問が浮かんだ。
腹部に出来た空洞から、火薬の臭いはしたか? 発射音は聞こえたか?
海の匂いで消えた。波の音で聞こえなかった。
答えとしてこの二つが用意される。
どちらも不正解だ。
先ほどの戦闘中、巴は指先から弾を連射した。火花を散らす発射音は聞こえたし、火薬の臭いもした。
「火花」
無意識にぼそりと朔夜は呟く。
そう火花がその疑問への導きとなる。
あの奥義は火薬を使わない。
ここまではいい。
レイカの腹部の穴からバチバチと火花は散り焦げた臭いもしたのは、破壊されたパーツがショートしたから。
ミサイルではない。次に浮かんだのはレーザービームだが、それも除外する。何故なら超振動ヨーヨーは吹き飛んだだけで、レーザーで焼かれた傷は無かった。
「答えは出ましたか? ダーリン」
「さぁな。とりあえずそれを喰らわない様に気をつけるしかない!」
「ふふっ。そういうところも好きですよ」
巴の右足が動く。あの奥義を放つつもりなのか。
させるか。砂浜にキスするスレスレまで体を屈め背後へまわり込む。
「無駄な事を。わたしは、いつもアナタを見てます」
背中に浮かぶは無数の目。
巴は人を模してるだけで、その形状に縛られない。
「へへっ。その目で俺だけを見ていろ! 他の奴を意識するんじゃねぇぞ!」
「はい! 朔夜さん!」
巴の肉体が歪に歪む。
――もっと彼を見たい。もっと彼に触れたい。もっと彼を感じたい。もっともっともっともっともっと――。
無限に続く朔夜への想いが、巴の姿を変えていく。
前方へ突き出す無数の目玉は、朔夜を見ていた。ハートマーク浮かぶ瞳一つ一つに朔夜の姿が焼きつく。
胴と呼ばれていたパーツには無数の腕が生え、早く朔夜を触りたいと蠢きだす。
目玉と腕。その中心に艶のある唇を持つ巨大な顎がある。そこからは、ギザギザしたノコギリ刃が月明かりを反射していた。
「ダーリン」
異形なる獣が朔夜を抱擁する。
――ザッパァァン。
二人は海へ落ちる。暗闇の中、視界は悪い。生身であれば直ぐに死が迎えに来ていただろう。
緊張で背筋が震えた。バトルスーツを纏っていなければどうなっていたか。
「ったく熱すぎる抱擁だな」
抱きしめてくる腕達から脱出せねば。
刃を使うか。超振動ブレードなら。それとも温存し……。
「違うな。巴が本気でくる以上、俺も出し惜しみ無しだ」
朔夜は胸部のコアに手を触れた。
「行くぜ相棒。タイムホール起動」
「何をする気ですかダーリン。まさかわたしを捨てて未来へ!」
激情した巴の千本の腕が朔夜を潰した。
――斬。超振動ブレードが腕を切断する。危うく圧死するところであった。
「捨てるかよ。巴。お前イブ達も俺の家族だ」
回転するコアから光の柱が立ち上る。あの先に百年後のカミシマがある。
「ならどうしてタイムホールを……わからない」
「言っただろうッ! 俺は全力でお前を愛するとッッ!」
力強く天に向かって突き上げる右拳に偽り無し。
「来いッッ! デビルオンッッ!」
時空を超え次元を超え未来からやってくるは、対神兵器アーマド・ギアD型。
その銘は鬼神デビルオン。




