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ミーア・オートマチック  作者: キサガキ


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機械人形はアイを知る。(6)

 朔夜が触れた胸中心から、ミアのボディが展開する。そこあったのは、ハートマークのアイシステム。

 ドクンドクンと微弱だが脈打つそれを、朔夜は掌で取り出す。

「ミア、いつでも一緒だぜ。俺はお兄ちゃんだからな」

 ロングコートの下に身につけている黒鋼色のバトルスーツ胸部へ、アイをはめ込む。

 ――ギュルギュルギュルギュル。

 アイで出来た風車が回る。その中へ海水が吸いこまれていく。

 海は母なる地球が赤子に与える母乳そのもの。朔夜は動力エネルギーとしてそれを体内へ取り込んだ。

「魔装ッッ!!」

 朔夜が叫ぶワードに反応したミアのボディが、バラバラと崩れ分離。朔夜を護る装甲へチェンジしバトルスーツと合体した。


「待たせたな巴」

 四本角を生やすフルフェイスの仮面を装着した朔夜は、巴と対峙する。

「素敵ですね。その姿も。神に対して悪魔ということですか」

「俺は形から入るんだよ。悪魔にでもならなきゃ、おっかねえ女神と戦えないぜ」

「まぁ酷い。でもその女神は、悪魔のことが好きで好きで好きで大好きでたまらないの。食べちゃいたいくらいにね」

「へへっ。行くぜ女神様。全力でッ!」

「早く来てダーリン。さぁ愛殺しあいましょ!」


 巴の黒髪が無数の蛇となる。ミア達との戦いでボロボロになったセーラー服は既に廃棄。全裸に近いボディ全身は継ぎ接ぎだらけで、鱗が覆われていた。

「ずいぶんと刺激的な姿じゃねぇか!」

「気持ち悪いですよね。この体は百八体の姉妹で出来てます」

 会話をしながら、互いに攻撃をし反撃しかわしていく。

「綺麗だぜ巴。お前も姉妹もよ」

 ――トゥンク(トゥンク)。

「あぁん」

 目がハートマークになった一瞬の隙を見逃さない。

 朔夜の拳が胸部へ伸びる。

「おっぱい触りたいの?」

 脇腹から生えるサブアームに拳が掴まれ、攻撃は阻まれる。

「動けねえ」

 なんて怪力だ。これが戦闘に特化した機械生命体のパワーか。

 魔装甲ミアじゃなければ、拳が潰れている。

「もぅ。ダメですよ。朔夜さん。こういう時は、まずはキスですよ!」

 にいぃぃっ。口角を耳まで吊り上げた巴の頭部が迫る。

 ――ガンッ!

 頭突きが仮面に激突し朔夜は吹き飛んだ。

 これは効いた。頭部が激しくシェイクして、目の周辺をキラキラ輝く星がまわる。

 体勢を立て直す前に黒い塊が落ちてくる。それは追撃する巴であった。

 斧へ変化した右手が振り下ろされる。

 これが巴GODの能力。全身を構成するナノマシンの組み合わせにより、様々な物を作り出す。

「へへっ。よく知ってるぜ。ガキの頃から散々見てきたからな」

 様々な形になるからといっても所詮は模造。本物になれない偽物。

 どんなに憧れたってその人には絶対なれない。

「そうだろう。旦那」

 真っ白い歯を輝かせた神威の笑顔が浮かぶ。

「だからこそ尊く。切磋琢磨で生きてきた。中身スカスカのイミテーションじゃオリジナル(俺達)には勝てないぜッッ!」

 手刀で斧の柄を破壊する。粒子化し蛍は散っていく。

「あらっ凄い」

 巴は右手首を失ったが、ナノマシンが集まればまた元に戻るので焦る様子も無い。

 ミアとレイカからエネルギーをドレインしたのだ。充分過ぎる程の蓄えがあった。

 それは朔夜も理解している。

 それが何だ。GODと戦ってきた人類軍はありとあらゆる作戦で立ち向かってきた。それでも人類が勝利した世界線なんて、朔夜の知る限り無い。

「頭のいい先人たちが無理なんだ。いくら俺が考えたって、絶対無理。だから俺は本能のおもむくままにやるッッ!」

 手首の千切れた右腕を掴み引き寄せる。近づく巴の胸部へ肘を撃つ。

「またおっぱいなの? いいですよ。ダーリンの好きなように触って」

「頰を赤らめるな頰を!」

 勿論、朔夜は胸を触りたいわけじゃない。

 巴が人の形にこだわる限り、広い面積で体中心のパーツは絶好の標的となる。そこを壊せばどうなるか。ある程度予想つくだろう。胴を失い、体は形を崩す。

「うらぁッ!」

 攻撃は当たり、肘が胸部へめり込む。だがそう予想通りにうまくいかない様だ。

「計算外だぜ」

 バラバラにするには、まだまだパワーが足りてない。

 ――ブンッ。風を切り裂く音が鳴る。

 蛇髪の束が鞭となり、朔夜を弾いた。

「まぁっ。流石ですねダーリン」

「お見通しかよ」

 大きく吹き飛んだ朔夜に怪我は無い。

 攻撃が来た瞬間自らの意思で飛び、ダメージを減らしたのだ。

「でも逃げてばかりじゃ愛せませんよ」

「攻撃は済んでいるぜ」

「えっ?」

 ――ギュィィン。

 巴の黒目が回転しピントを調整する。すると蛇髪から朔夜の手元まで伸びる、キラキラした極細のワイヤーを捉えた。

 ――ギュルギュルギュルギュル。

 火花を放ちワイヤーを高速で走りぬけるは、真ん中に窪みがついた円盤。

「超振動ヨーヨーッッ!」

 髪に絡む極細のワイヤー。それを外す時間なんてない。考えた中で一番早くても、ワイヤーに絡む髪を切るだ。だが巴はそれを選択しないだろう。

 ミアのドリルで髪が千切れた時、あれほど取り乱したのだから。

 巴の美しい顔面に円盤が近づく。超振動ヨーヨーは、機械生命体を塵へ帰す特殊な音の波で振動を繰り返す。

 このまま行けば、顔面は削れザクロと成り果てる。しかし頭部に人工知能イブがある以上、みすみす攻撃を受けいれないだろう。

 巴はどう選択する?

 ――にいぃぃっ。

 口角をつり上げた巴の右膝が円盤を天高く蹴った。朔夜との繋がりがあったワイヤーは千切れ、円盤はクルクル回転し星となる。

「チッ……そう来たかよ」

 今の膝蹴りは、巴がレイカにトドメを刺した必殺技であった。

「奥義ってやつか。攻撃力ハンパねえな」

 前の世界線でレイカと相打ちになった時の技に似ている。あの時は刀からだったが。ナノマシーンの姿とあの奥義が、GODになると引き継がれるのか。

「レイカちゃんの時と同じで、出し惜しみをしません。そうしなきゃ、わたしが負ける」

「光栄だぜ。地上最強にそう言われてよ」

「それはわたしもですよ。救世主ミロク」

「へへっ。こそばゆい。その異名に恥じない戦いをしないとな」

「はい。機械と人間どちらが地球母に選ばれ寵愛を受けるのか。楽しみです」



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