表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミーア・オートマチック  作者: キサガキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/32

機械人形はアイを知る。(1)

 ――ダダダダダダッ。

 連続的な銃声が聞こえた。人の枠を超えている朔夜の五感が捉えたのは、砂の中から打ち上がる沢山の花火。

 儚く散っていく火花は、海へと帰る魚達だ。

「やりますわね、お姉様」

 全ての魚を撃ち落とされ、レイカの眉がピクピクと動く。

「でもお姉ちゃんを引きずり出すことに、成功したみたいだよ。レイカさん」

「んもぅ。全身砂だらけ。お姉ちゃんは学習しました。砂潜るとこうなるのね」

 巴は長い黒髪を振り回し、制服についた砂をはたきながら地表へ出てくる。

 右手の五指から煙があがっている。どうやら指先から花火弾丸を打ち上げ(連射し)たのだ。

「もぅ朔夜さんの前で汚れちゃって。恥ずかしい」

 巴はもう湧き上がる気持ちをプログラムのバクだとごまかさない。頰を染め墨色の髪を手櫛で整え、潤んだ瞳で朔夜を見つめる。これがきっと【愛】という感情の一つなのかと、素直に受け止めていく。


「わたし、変じゃないかな?」

「へへっ。可愛いぜ巴も、よ」

 恥ずかしがる巴を見て、つい本音が漏れてしまう。

「むむっ。お兄ちゃん。デレデレと鼻の下伸ばしーて」

 ミアはぷくっと頰を膨らま、朔夜の首をしめだす。

「ぐげぇぇ! や、やめろミアぁぁ。頸動脈しまってるって! 死ぬぅ死んじゃうぅからループ……うぅ」


「げほっげほっげほっ。危うく別の世界線に移動しちまうところたったぜ」

「むぅっ。お兄ちゃんが悪い-」

「そうですわ!」

 意外だった。ミアのやきもちに、珍しくレイカが加勢する。やはり同じリリスシリーズだからか。

「お姉様! 旦那様だって素敵ですわよ!」

 そうきたか。確かにレイカからすれば、複雑なのだろう。自分の愛する者が人気あるのも嫌だが、人気無いのもまた嫌だと。

 ミアとレイカ、二人はまるで本物の人間の様に複雑な感情を持っていた。では巴はどうなのか。プロトタイプとして造られた彼女は……。

 朔夜の隣で神威は期待を込めた瞳で、レイカが問いかけた答えを待っている。

「……ごめんなさい。お姉ちゃんは、マッチョの人はタイプじゃないの」

「大どんでん返しですわぁぁ!」

「だ、だいどん?」

 なんだそれと、朔夜は首を捻るとミアが腕を組みニヤリと笑った。

「むうっ。大どんでん返し……」

「知ってるのかミア!」

「少し時代はズレてるけど昔、流行った言葉だよ。きっとレイカさん、過去へかけおちしようと決めた時に、その時代へ溶け込む為学んだんだよ。巴お姉ちゃんのセーラー服みたいに」

「へへっ。感心するぜ」

 朔夜とミアはそんな事気にせずバトルスーツの上に、フードのついたコートを羽織るだけ。

 当然といえば当然か。朔夜とミアにとって、過去へ来たのも任務のため。それが終われば故郷未来へ、戻るだけなのだから。

「見る目ないですわね。お姉様。でもそれでいい。それでいいですわ。旦那様の素晴らしいところは、わたくしが知ればいい!」

 すらりと長く美しいレイカの脚線美が天高く伸びる。男ならつい見とれ釘付けとなってしまう程、見事なフォルムであった。

「おぉブラボー」

 神威のメガネが輝き、拍手喝采する。その熱量は、芸術作品の試写会にも引けを取らない。

 ピンヒールの踵に収納された刃は飛び出し、レイカの足が巴目掛けて振り下ろされる。

「体柔らかいのね。レイカちゃん」

 巴はその攻撃に対して、微動だにしない。腕で防御すれば斬れ味鋭い刃で切断。避けなければ真っ二つとなるだろうに。

 新型リリスにだって負けないという旧型イブの意地、プライドが邪魔をしているのか。それともシンプルに絶対的な自信があるだけなのか。

 巴は刃を受け入れた。


「やったか」

「いや、まだだぜ。旦那。そう簡単に終われないようだぜ」

 獣の動体視力を持つ朔夜は見た。桜色の可愛い唇で薄く笑う巴を。

 刃付きの踵落としは確かに決まった。巴の頭頂部へ無慈悲に叩き落とした。それなのに嫌な予感しかしない。

 殺気だ。生き物以外理解できない危険な信号を、沈黙する巴は発していたのだ。

 巴はまだ死んでない。

「逃げなさいレイカ!」

 朔夜同様、殺気に気づく神威は飛び出したいのを鋼の意思で堪えている。

「な、なんですの? これは……」

 逃げ道は塞がれた。レイカの体がゆっくりと持ち上がっていく。

 髪だ。墨色の腰まで長い髪の束が、レイカの足に絡んでいた。

 幾重にも巻かれた束は、刃すらも通らない。これを使い巴は、踵落としを防御していたのだ。

「うんうん。レイカちゃん、弱点を狙うなんて流石よ。お姉ちゃんとても嬉しい。それでこそ戦う為に産み出された、機械生命体よね」

 神話に出てくるメデューサの髪は蛇だという。バトルモードになった巴の髪も、それを彷彿させる蛇腹達がウネウネと不気味なダンスを踊る。

「うふっ。褒めるのはまだ早いですわ」

「デャァァァッッ!」

 空中に浮かぶレイカの背後。死角となっていたそこに、満月をバックに飛んでくるミアの姿があった。

「アーマ-ド・ドリルパンチッ!」

 ミアの動きに連動した巨大サブアームが、正面から巴を打ちぬく。

 螺旋状に回転するサブアームの拳はドリルとなり、天を貫く柱となる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ