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ミーア・オートマチック  作者: キサガキ


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21/32

始祖の座。

「お兄ちゃーん。ワカメーワカメーだよおお」

「旦那様見てくださいませ。魚、生きてる魚ですわー」

 ミアは全身にワカメを巻き、レイカは巨大マグロを軽々と持ち上げ満面な笑みで近づいてくる。

「……だな。アイツらは大切な家族だ」

「どうした? 君らしくない」

 二人はそう言って矛をおさめ、お土産を持って帰ってくる妹と恋人を出迎えた。


 パチパチパチパチ。砂浜で焚き火の音が鳴る。朔夜と神威は、二人が手に入れた食材を残さず綺麗に食べた。

「へへへ。食った食った。満腹最高だー」

「フッ。僕達のいる未来では考えられない。食後にのんびりとしているなんて、計算外です」

「これが平和の味ってやつだな。美味ぇ」

 生きる喜びを嚙みしめながら咀嚼する。 

 今の朔夜なら理解できる。脱走という重罪を犯してまで、神威がどうしてこの世界でレイカと暮らそうと考えたのか。

「なぁ旦那、取り引きしないか。俺はアンタ達と戦いたくない」

「内容にもよるね」

 ゴーグル型のメガネ越しで、スッと目が細くなる。

「旦那。俺達のミッションを覚えてるか?」

「百年前の神嶋市で、GODのオリジナルとなる機械生命体を破壊する事」

「そう。それで俺達はそのミッション中仲間割れしちまった。俺がアンタを殺しレイカがオリジナルとなってしまう最悪のオチ」

「わたくしがオリジナルになる? まさかありえませんわ。だってわたくしは、この新天地で人として旦那様と生きていくのに、世界を破壊するなんてそんな計算間違っていますわ」

「……レイカさん。あのね、お兄ちゃんが神威さんを本当に殺したらどうする?」

「あらっ。それもありえませんわね。だって今もこうして、旦那様が生きていますもの。殺すつもりなら、顔を合わせた段階でドンパチしますわ。御門朔夜とはアナタのお兄さんは、そういう人でしょ。ミーアさん」

 ドンパチした後なんだけどなと、朔夜は苦笑する。

「でもそうね……もし……もし旦那様が殺されたら、勿論復讐しますわよ。家族を殺されて泣き寝入りしない。人だから機械生命体だからと関係なく、それが残された者の使命よ。ミーアさん、アナタもそうするでしょ?」

「うーん。復讐か。どうだろう、わかんないや。わかってるのは、正義の味方を目指すかな。お兄ちゃんの意思を継ぐものとして」

「フッ。正義の味方ですか。忘れてましたね、その熱い魂を。続きを聞こうか。朔夜」


「だからよ、俺はこの世界線で旦那達と共闘したい」

「ふむ。ではわかりやすく、この世界線をアルファオメガルートと呼びましょうか。僕達で行う最初で最後のミッションですから」

「アルファオメガか。くぅ格好いい呼び名だ。しびれるぜ」

「ミッションは実行中。でもレイカはGODにならない。ではどうなると。このアルファオメガルートで、このあと果たして何が起こりどのような結末を迎えるのか。朔夜はそう言いたいのですね」

「あぁ。さすがだぜ旦那。伊達にメガネかけてない」

「フッ。むしろ僕の本体は、メガネです」

 キラリ。ゴーグルが月光を反射する。

「旦那。アンタの大切な人を闇へ落としてしまった。すまねえ。全て俺のせいだ」

「いいえ。元はといえば、君や博士に相談しなかった僕の罪。そのせいで、大切な人達を苦しませている」

「お兄ちゃんは、あたしのヒーローだよ」

「旦那様。わたくしは、その罪を貴男と共に背負っていきますわ。何処までも」

「ありがとよ。旦那、取り引きだ。一緒にミッションクリアしようぜ。そのかわり俺は脱走したアンタ達を見逃す。二人で駆け落ちしてくれ」

「フッ。そう来ましたか。かなり譲歩したな。荒ぶる鬼神の異名を持つ君が、まるで別人のように丸くなった。復讐はいいのか?」

「あっっ俺はよっ。並行世界の旅で、沢山のルートを見てきた。その中では、いい奴もいたし悪いやつもいたぜ。機械生命体にも色んな奴らがいるだろうよ。旦那、アンタもそう思うだろ? レイカはいい女だ」

 ボリボリ。バツ悪く朔夜は黒い髪をかく。

「うふふ。まさか朔夜様から、愛の告白を受けるなんて計算外ですわ。でも残念。わたくしの心は旦那様のもの」

「お、お兄ちゃん! レイカさんはみーあのお姉ちゃんだよ! まさか姉妹でウハウハしたいの!?」

 ぽっとミアの頰が朱に染まり、ツインテールが逆立ち湯気が沸く。

「あぁん。でもでもお兄ちゃんが望むなら、みーあナニをされてもいいの!」

「脱がなくていいぞ!」

「フッ。それが取り引きの内容ですか」

「おぅ。俺達四人は最強のチームだ。だからジジィは、人類の命運を賭けたミッションに選んだ!」

「パパも未来で、あたし達が戻ってくるの待ってるね」

「そこを目指そうぜ。リリスや舞姫達も生きている日常のルートを作るんだ!」

「お嬢、姫にレイカを紹介する世界ですか。いいでしょう。乗りましょうか。貴男の車にね」

「へへっ。シートベルトを忘れるなよ」

 山が動く。不動であった巨大な山がついに。

 まさかこの時が来るとは、朔夜自身も思っていなかった。

 目の前で立ちふさがっていた山。神威の口癖を真似るなら、正に計算外だ。

 朔夜だけが並行世界を移動していたなら、神威とそして朔夜本人も変わる事は無かった筈。

 無駄じゃない。今までやってきた事は。

 大地を耕し種を蒔き発芽し、毎回枯れていく。

 それでも諦めなかった。

 心は挫け泣きわめき、憎しみを糧にしてでも歩みをやめなかった。

 その長い旅路の果て、ついに実ろうとしている。

 リリスの照れた顔。舞姫の明るい笑顔が浮かぶ。

「終わらせようぜ。旦那、暗黒時代を。日の光でよ」

「フフッ。東の国からメシアが現れると、かつて予言して人がいたとかいないとか。僕の計算では、その人もまた時間超越者だったのかも知れませんね」

「旦那はいつも外れてるから、当てにならねぇ」

「フフッ。確かに」

「当てなきゃな。そろそろ」

「フッ。僕の計算では、今度こそ当たるとでてます」

「全く頼もしい相棒だぜ」

 朔夜と神威は口角をつり上げ笑い、力強く握手した。



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