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ミーア・オートマチック  作者: キサガキ


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18/32

円環 終わりと始まり。(中編)

 瞬間、ジンの軸足が踏みしめる大地に生じたのはヒビ。ほんの僅かだが軸はぶれる。その結果、斧は目的を果たす事が出来ず空振りする。

「け、計算外だ。僕が攻撃を外すなんて有り得ない」

「……」

 気のせいか。朔夜はジンの足下を見る。軸足がのっていた大地のヒビ割れた欠片に違和感を感じた。

「うふっ。強いわね。こういう時、肝が冷えたと人なら言うのかしら。憎き御門朔夜以外に興味を持った人間は初めてだわ。貴方お名前は?」

 ギリギリ二人の攻撃が当たらない位置で鴉は微笑む。仮面から覗く朱に染まる唇が、笑みの形へ変化する。

「フッ。ジンですよ。美しいお嬢さん」

 キラキラと白銀の装甲が光輝く。二柱の可愛らしいエンジェルがラッパを吹き鴉の頭上にハートの雨を降らせた。

「まぁぁ素敵な殿方。でも残念。わたくしには旦那様がいるもの」

 随分と表現豊かだ。それに朔夜とジンを前に未だ無傷を保っている。 

 ――コイツ強い。

 底知れぬ実力を感じた。特級ソルジャーとしての感が、朔夜に一人の女性を思い出させる。

 女性。そう言ったが正確には人を模したまがい物だ。彼女は人類を救う為に造られた人造人間の一人。機械少女零号レイカ。その美しき姿と鴉がダブる。

「まさかお前……」

 有り得ない話では無い。長い眠りについてるとはいえ、ミアと百年ぶりに会えたのだ。レイカが生きていても不思議ではない。

 考えるのを止めよう。精神衛生上悪い。

 もし鴉の正体がレイカだとすれば、バトルスーツを纏っていても二人は勝てない。最強の朔夜とジンでも、オリジナルの機械少女にはかなわない。

 人間だけが持つ精神論。努力や気合いを用いても焼け石に水。

 正体を知らない方がいい。その方が戦える。

「……違うだろ俺」

 ボソリと朔夜はつぶやく。それは只の思考停止に過ぎない。朔夜が一番嫌いな事だ。考えるのを止めた時、待っているのは死。

「明日を皆と過ごす為に生き残る。攻略法を頭に叩き込めッ!」

「無駄よ。わたくしには勝てない」

 鴉は上段に刀を構えた。

「御門くん、僕が隙を作ります。君は一人じゃない」

「へへっ。そうだよな。らしくねぇ」


 再び山が動く。身長二メートル体重百キロ近い肉体をジンは軽々と動かす。猛禽類の翼をイメージした一対の角を仮面に生やした、バトルスーツのおかげか。それもあるがジンの日々の鍛錬が筋力だけで無く、素早さのスキルもあげていた。

「ワイルドね。益々好きになっちゃいそう。あぁん、駄目よ、そんな禁断の甘い蜜断ち切るの」

 風切り音を鳴らし刀を振り下ろす。目に見えない刃が、大地を切り裂きながらジンへ向かっていく。

「フンッ!」

 両刃で衝撃波を受け止める。それと同時に鴉の死角に移動した朔夜は中距離から超振動ヨーヨーを放った。

 ――キンッ。

 背中を覆う翼状のマントが自動で動き鴉を攻撃から守った。だがヨーヨーの真骨頂はここからだ。指先の動きに連動し軌道を操る。

「名づけて、超乱舞ッ!」

 四方八方。あらゆる方向から降り注ぐ大粒の雨はやまない。

 自動で防御する鴉の翼はずぶ濡れとなるが、ダメージを与える事は出来なかった。やはり超金属ヒヒロカネの武具で無ければ、鉄壁の壁は壊せない。

「煩い蠅ね」

 刀をぐるりと回転させた瞬間、ヨーヨーは自由を失い明後日の方向へ飛んでいく。ストリングが斬られたのだ。

「!」

 朔夜の常人離れした視力は見た。一時、刀の刃先が消失するのを。

 あれが鴉の異能力か。先程、ジンがバランス崩した地表へ視線を送る。切断面が内側から外側へ切り裂かれていた。地下から刃が突き出した証であった。

「刀が空間を超えるのか」

「正解よ。流石は救世主ミロクね」

「末世で人々を救う弥勒菩薩か。光栄だぜ。だが俺は荒ぶる神となり、貴様ら全てを絶滅させる復讐の鬼でいい」

「フッ。いけませんよ鴉さん。僕以外の男性に心奪われちゃ」

「うふっ。そうねあの人の次に素敵なジン様」

 その色気ある声は禁断の媚薬。体内を震わせる妖艶で甘い蜜が、男の本能を狂わせる。

 ジンと鴉は本能で互いを求め合い一気に距離が狭まっていく。

 自分が並行世界線で神威了と知っているジンと、それを知らないがジンの中に神威を感じた鴉は強く惹かれあっている事に、朔夜は気づく。

 嫌な感じだ。傭兵として数々の戦場を生き抜いてきた第六感が、危険だと教える。

 ジンは朔夜達を裏切り贄として捧げるのでは。鴉がレイカならジンは神威と同じ道を進むのか。

「それ以上近づくな、ジンさんッ! アンタはこちら側だろッ!」

 パイルバンカーのロックを外し、二人の間に飛び込もうとした時、太陽が沈み紫色に空は染まった。


 夜が訪れる。朔夜はそれに気を取られ、ジンは朔夜に気を取られた。

 白銀の仮面に反射するは、無数の輝き。

「貴方がわたくし以外の女性に気持ちがあるのは、許せなくてよ。ジン様」

 レプリカで構成された機械軍団にぐるりと、二人は囲まれていた。

「うふっ」

 鴉の合図により、レイカと同じ顔した薄汚れ真紅に染まったマネキン二体が前へ出てくる。

「!」

 一体目は口にくわえ、二体目は右手に黒い物体を握っていた。

 サッカーボール程の大きさだ。影になっていて細部まで見えない

 武器の類いではない。あれは千切れた人の頭部だ。首から下を失いポタポタと血が滴り落ちる音がする。

 先程まで生きていたのだ。

「この子達の眼光で見えにくいかしら」

 周囲を照らす輝きは消され、レプリカ二体の下から光が当たる。

「!!」

 朔夜とジンの視界に飛び込むは、この世の地獄。

 綺麗に手入れされた真紅の長い髪を口にくわえられ揺れ動くリリスと、額に爪を突き立てられ血の涙を流す舞姫。二人の頭部が鴉に捧げられていた。



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