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ミーア・オートマチック  作者: キサガキ


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ライア。

「な、なんだと」

 刃は確かに卵を貫いていた。だが本体をコアを破壊したという感触が伝わってこない。

 繰り返されるループの中、殺された恐怖で狙いを外したのか。いやありえない。それ以上に、心は怒りで支配されている。

 父を母を家族を殺された復讐心が原動力となり、恐怖を上回っているのだから。

「冷静さを失ってるわね」

 ヒビ割れた殻の中から濃い緑色の瞳が、朔夜を睨んでいた。

 ――ピシッピシッ。卵全体に亀裂が走り、砕けていく殻は弾丸へ形を変えた。ゾッと背筋に冷たい汗が伝わる。

 不味い。この零距離ではかわせない。

 朔夜の全身を弾丸が撃ちぬく。大きさに比例して弾丸の力は弱く幸いにも穴があいたのはバトルスーツの外装だけで済んだ。しかしあくまでそれは攻撃力だけだ。威力は強く朔夜を吹き飛ばすには充分過ぎた。

「ゴボォッッ!」

 アスファルトで舗装された地面を削り、炎上する建物に突っ込んだ。

 大丈夫だ。身体はバトルスーツに守られ見た目よりも酷いダメージは無い。意識もしっかりしている。

 何故ブレードの攻撃が効かなかったのか。貫いた刃を目視する必要も無い。錆びて途中から折れていたのだ。

「ちぃ」

 体液に触れれば錆びると分かっていた事なのに。レイカの前で熱くなった自分が情けないと舌打ちし、崩れ落ちる前に脱出する。


 弾丸となったピラニア達全てを取り出し踏み潰す。体液で足の裏は汚れるが、錆びる事はない。これで、この力は卵の中にいる本体の異能である事が確定した。近距離で発動するタイプなのだ。

 炎で出来た壁の中から人影が近づいてくる。生き残った人か。まさかそれはない。見渡す限り建物は崩壊し燃えている。ここはもう人の世では無い。魑魅魍魎が闊歩する灼熱地獄なのだから。

 姿を現したのは、モヒカン刈りのイミテーション。卵から孵化したのは只のレプリカであった。そのガリガリに痩せ炭と灰で薄汚れたマネキンボディーに、レイカの残滓が憑依していたのだ。

 それでも油断は出来ない。錆びの力は借り物ではないのだから。

 ぐるぐるぐる。二人の戦いを一番いい場所で観覧したいとピラニアの群れは遙か彼方、地上に近い空間で泳いでいる。

「ギャラリー引き連れて、ずいぶんと余裕じゃねぇか」

「貴方一人殺すなんて、この子達だけで充分よ」

 観客席から降りてきた群れの一部が、レプリカにまとわりつく。

「――武装」

 掛け声が合図になり六つの部位に分かれたピラニア達は、兜。胸部。右腕部、左腕部。右脚部、左脚部の鎧に変化し、本体を覆う。

 初めて見るタイプだ。本来人型の本体はあくまでも、エネルギー源バッテリーに過ぎない。バトルをするのはガワでありもう一つのボディーであるビルドアップ型か、生物や機械にナノマシンを植えつけ合体したフュージョン型だけの筈。

 まさかまた進化したのか。

 最初の世界線、零のルートでは存在しなかった第三のタイプ、アームド型がここにはいる。

「……」

 嫌な想像をしてしまい眉間にシワを寄せる。朔夜が世界線を移動すればするほど、それがトリガーとなり機械生命体は進化するのか。

 ありえない話では無い。朔夜以外にも他者が超越的な能力を持っていると考えた方が自然だ。現に霧島博士は傍観の能力を持っていたではないか。

 二人同様に機械生命体は進化の能力を手に入れたのだ。


「殺し合うわよ御門朔夜。この命つきるまで」

 装甲を纏ったレプリカの姿は半魚人を彷彿させる。前面に顔が突き出し、ギョロッとした瞳と牙を剥き出した兜を被り、西洋風の鎧には鱗がビッシリと生え見た目からして気持ち悪い。

「グロいな」

 さてどう戦う。傷つければ体液で錆びる。なら火器を使い爆発させるか。生存者もいないし。駄目だ。軍事施設の避難はまだ終わってない。衝撃でシェルターが崩壊すれば、彼らの生死は危ういものとなる。

「あれを試してみるか」

 朔夜は腰に手を伸ばした。そこにあるのもまた、新装備。ベルトの左右横に円盤状の球体がはまっている。掌で押すとロックが外れ両手に収まった。

「またこりもせずに、手裏剣かしら」

 右腕部の鱗が逆立ち、ノコギリ状へ変化する。ギザギザした細かい刃先は、白濁した体液で濡れていた。

「魚類が」

 あえて力を見せつけ挑発してくる。朔夜の攻撃など徒労に終わると。

「オラッ!」

 掛け声と共に左右の円盤を解き放つが、朔夜はその場から動かない。

 左右同時攻撃に意識を向けさせできる一時の間を使い、懐へ飛び込み渾身の一撃がセオリーであるのに。しかし朔夜は一定以上の距離をとっていた。頭の中で攻略方が出来ていたのだ。

 当然レイカの残滓により、レプリカは朔夜という少年特有の熱さを知っていた。円盤はブラフ。本命は別にあると読んでいる。

「うふっ。でもね。どんな攻撃も、わたくしのこの力の前では無力となるわッ! 御門朔夜ッ!」

 ――キンッ!

 残響。甲高い金属音がシェルター内に響く。だがノコギリ刃の一振りで、二つの円盤は弾け飛ぶ事は無かった。

 レプリカの攻撃が命中する瞬間、円盤は軌道を変えて回避していた。では今の残響は何処から。

「け、計算外だわ」

 回転する二つの円盤は、胸部鎧に食い込んでいた。

 円盤は心臓と右肩の付け根を研磨していくが、鎧の強度が勝るためダメージは皆無。傷一つ与えられない。

 円盤は離脱し空を舞った。

「残念ね。錆びる覚悟の攻撃も効かないなんて」

「まだまだッ!」

 朔夜の手元へ戻る事なく、獲物を狙う眼光鋭い鷹の様に円盤は再び獲物を狙う。

「あらっ手裏剣ではないのかしら。まぁいいわ、わたくしの、この力に勝てるものはいない」

 レプリカは頭上高く向かってくる円盤に狙いを定め、刃を振り下ろし白濁したスライム状の塊を発射する。

 今度こそ円盤が撃ち落とされてしまうのか。否。まるで自らの意思があるかの様に、円盤はスライムを避けて加速。レプリカの左腕部の付け根と腹部へ見事命中を果たす。

 ギュルギュルギュル。回転は止まらず鎧に食い込もうとするが、強度と柔軟性のある造りで衝撃は吸収されダメージを与えられない。

「……やれやれだわ」

 レプリカは円盤の正体に気づいた。呆れた表情でため息をつき追い払う。

 円盤は朔夜の手に吸いこまれていった。

「へっ。その感じ、コイツの正体に気づいたか」

「すっかり騙されたわ、ヨーヨーね」

「正解。名づけて超振動ヨーヨーだぜ」



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