友達0人
入学式が終わり、クラスに戻った私は気付いてしまった。爽も希咲も別クラスで私は1人きり、不安で仕方がない。
「……」
1人席にぽつんと座り、周りを見渡す。もうグループが出来ているところもあり、少し焦りながら息を飲んだ。しかし私は実は極度の人見知りであり、自分から声をかけることなんて一切出来ない陰キャなのである。
「おい」
「…」
「おい!…あー、猫柳ゆずさん?」
「え、あっ、私ですか?」
「お前以外猫柳ゆずなんて居ねぇだろ?」
突然隣の席の男の子から声を掛けられた。
随分身長が高い…190は軽く超えてるのではないか?それよりもこの人、凄く怖い。服装も下に黒Tシャツを来ていて、正にヤンキーという見た目だ。
「俺、小林あきら。隣の席だろ?仲良くしよーぜ」
彼はふっと微笑んで手を出してきた。今どき自己紹介で握手を求めるなんてフレンドリーな人だなと両手で優しく握る。家族といつもの2人以外と触れ合うのは何年ぶりだろうか。
「お、おー……ふーん?ま、困った事があったらいつでも俺に聞けば答えてやるよ。特に化学と物理については俺に任せろ」
成程、彼はその2つに特化した天才という事か。ならば友達になっておいて損は無いかも。それに、この人も実は神様なんてことも有り得ない話ではない。しかし私から友達になってください!と言うなんて烏滸がましいのでは?いやいや、勇気を振り絞ってここは一発かまさないと…!
「あ、あの……あっ」
声を出したが時すでに遅く、彼は遠くまで行ってしまっていた。折角友達になれるチャンスだったのにな。なんてため息をついた途端、目の前にふっと人影が。上を向くとそこには白髪の少女が立っていた。
「君さぁ、僕と同じタイプの人間でしょ」
「え…?」
彼女はニヤリと笑い、私の鞄を指差した。あ、鞄開けっ放しだったんだ。そう思い閉めようとした手を彼女は優しく阻止した。どういう事かと困惑していると彼女は黒い瞳を細めて私の鞄から本を取りだした。
「君結構なオカルト好きだね?この本プレミアついてる本だよね」
「あっ…も、もしかして貴方も…?」
「いーやいやいや、僕はオカルトマニアとかじゃなくてただのしがない本好きさ」
凄い変な声…なんて初対面の人に思っちゃダメだよね。けどももしかしたら今度こそ友達になれるかも、絶対に言うぞ、友達になって下さいって!
「あ、あのッ……」
「ん?」
「あぅ……えと…その…」
「ん〜〜?あっ名前?僕は夜宮ましろ、気軽に夜宮でもましろでも馬鹿でも本の虫でもお好きに呼んでもらってかまへんかまへんがな〜!」
「わた、私は……」
「君新入生代表の子でしょ?猫柳ゆずさん!僕はそのぐらいならちゃんと覚えてるぞ〜?」
す、凄い。この子何もかも圧倒されてしまう。しかしそれに負けている場合じゃない。ここで友達を作らないと私は一生友達ナシでクラスでハブられてしまう…!
「あの!友達になってください!」
「んえ?友だち?ん〜〜?いいよぉ!僕と友達になろう!いえーい友だち〜!ハイタァッ〜〜チ」
この子、見た目からして私と同じ陰キャだと思っていたがそうでも無いのだろうか。どう対応すればいいのか私には分からないが、取り敢えずハイタッチには応じていえーいと笑ってみせた。どう?これで合ってる?と思い夜宮さんの顔を覗くと、嬉しそうに笑っていたので合っていたのかと安堵した。
「お前らホームルーム初めっぞー」
先生が来たところで夜宮さんも席に戻り、周りも静かになった。……この調子で、友達増やせたら嬉しいな。