私の神様
◆猫柳ゆず◆
金髪ロングに青いつり目の男の娘
懐かしい夢を見た。
ミーンミーンとセミが合唱する中、私達は山を登っていた。周りの同級生は皆同じ帽子を被り、まるでアリの行列みたいだなんて私は思っていた。
ふと、横を見ると小さなけもの道が目に入った。何時もなら気に留めない筈なのに、何故かその私はそのけもの道に気を取られてぼーっと見ていた。するとそこに1匹の蛇が現れた。ソレに誘われるように1歩、また1歩と足が動いていく。そうしてけもの道を歩いていると、いきなり気配を感じ上を向く。
そこで、私は____私だけの神様に出会ったんだ。
「____また、同じだ…」
次の瞬間、見慣れた自室の天井が目の前に広がっていた。私は何度も同じ夢を見て何度も同じ場面で起きてしまう。その先は1度も見た事がない。小学校の頃にあった事で、その先について私は詳しく覚えていない。ただ覚えているのは白くて大きい神様に出会ったということだけだ。それが神様だと断言出来るかなんて自分にも分からないが、何故か私の神様だと確信しているのだ。
「…ふ、わぁ…」
大きな欠伸をして時計を見る。まだ7時、あと10分寝てもいいと思った途端に部屋のカーテンがピシャリと開いた。
「こーらゆず、二度寝しようとしたね?」
彼はマリユス、私の義理のお兄ちゃんだ。いつも気配が無く私の部屋に現れるので少しビックリする。
……そして、彼は私の神様候補の1人である。神様に出会ってから、私は候補者リストを作り神様を探す事にした。なんと言っても兄は異常な程過保護だ。それも着替えをボタンに手が引っかかったら危ないといい手伝ったり、階段を毎朝私を抱き上げて下ろす程である。
「…うん、今日も可愛い。ゆず、ほらだっこ。下降りるよ」
「うん…わかった」
それに抵抗を示さない私も私だが、もし神様だった場合のことを考えた受け入れざるおえないのだ。
「ねえゆず、本当にお兄ちゃんが送ってかなくて大丈夫なの?途中で攫われたりしない?大丈夫なの?ホントに大丈夫?心配だよお兄ちゃん」
「あはは…大丈夫だよ。それに、入学式くらい1人で行かせて…?」
そして今日は、念願の高校の入学式だ。
私が入学する高校、木葉咲学園は少々変わった高校である。
それは、何かしら才能か頭が相当良くないと入れない事。そして変人しか入学出来ない事。では私も変人ではないかって?当たり前だが変人に決まっている。周りの人から見た私は変な神様を信じている狂信者に過ぎない。それを話したことは今までで入学試験以外で1度しかないが。この学校に入った理由は勿論神様探しの為、ここには変人と天才が集まる。神様の事を知ってる人間や神様本体に会える可能性もあるかもしれない。それに、オカルト的噂で人外が紛れて暮らしているだなんて話も出てきている。
「じゃあお兄ちゃん、行ってきます!」
「行ってらっしゃいー!転ばないでね!知らない人についていっちゃだめだからね!?途中で寄り道もしないでねー!!」
相変わらずの心配爆撃が凄いが、軽く流して家を出る。
さあ、今日から私の学校が始まるだ!
暫く歩いていると校舎が見えてきた。大きな門をググればそこにはもう学園が広がっていた。
「おはよーございまーす!」
そして挨拶運動だろうか?腕に風紀委員と書かれた腕章を付けた女子二人組が元気よく…片方は全く声が聞こえないが声を出していた。
「…あっ!」
そして、その先に私のお目当てである人を見つけて小走りで向かっていく。
「希咲っ、おはよ…!」
「ああ、猫柳!今日も元気そうでなによりだ」
この特徴的な喋り方と深紫のロングが綺麗な女の子は成山希咲。私の親友であり同じ中学出身である。彼女もこの学校に進むということは天才ということ。彼女は演劇の天才であり宝塚に入っているらしい。宝塚学校に進学しない理由は「弟の為に私はこの学校の全てを変えるのさ!」らしい。まあ彼女は超ブラコンなので理由は納得出来る。
「あれ……?希咲、爽は?」
会えたのはいいが、もう1人の友人が見当たらない。彼は中学時代はこの時間にいつも来ていた筈なのに。そう思い希咲の顔を見ると彼女は不思議そうな顔をしていた。
「……?おまえは何を言っているんだ?芦戸なら__」
「ばあ!!!」
「ヘァッ!?」
トンっと優しく後ろから押される。ビックリして飛び上がり振り向けば、そこにはスカイブルーの髪を揺らし、紫色の瞳が楽しげ揺れる男が立っていた。
「そ、爽…っ!居たなら声掛けてよぉ…」
「えー?だってさ、あんまりにも気付かないんだもん、ちょっとからかいたくなっちゃったんだ〜」
この人は私の幼馴染の芦戸爽で、神様候補の1人。候補な理由は簡単で、彼は何考えているのか分からないし私のことをよくフォローしてくれる。神様ならば私の事を気遣ってくれる筈だしもしかしたら、なんて希望的観測でしかないけど。
爽は自身が変という訳では無く、ちょっと出自が変な人だ。ヤクザの次男で跡取り。どうしてこの学校に入れたのかは分からないが、彼曰く「権力があればなんだって出来るんだよ」なんて結構な社会の闇を見せてきたっけか。
「…ふふ、じゃあ行こっか」
「そうだな」
こうして私の学園生活は始まった。
ここで私は絶対に神様の情報を手に入れる。私だけの神様を絶対探してみせるんだ。