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悪と呼ばれる存在を友達と呼んではダメですか?  作者: 七篠
【嫉妬】する機械人形
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アンノウンが来る事が予言されました

 翌日、俺は早速クラスのみんなに昨日の事を問い詰められた。


「お前昨日見たぞ!コッペリアさんとデートしてたとこ!!」

「意外と良い雰囲気だったじゃないか。いったか?最後までいけたか?」

「どうだったんだよ~、ちゃんと全部話せよな」


 クラスメイトの男子達からは下品な事を妄想しているのかニヤニヤとした表情を浮かべながら聞いて来る。

 だが残念だったな。俺はお前らが想像している様な事は何もしてねぇよ。

 俺は自分の席に座りながらこいつ等に向かって言う。


「あのな、俺はコッペリアの事をただの仲の良い友達としか見てないんだ。そんな事する訳ないだろ」

「何言ってやがる。本当にただ仲の良い友達とオシャレな店で一緒にパンケーキ食ったりしないだろ」

「あれもコッペリアが選んだ店で俺がリサーチしていた訳じゃない。あいつの要望に応えただけだ」

「その後もあっちこっち行ってたくせにか」

「それでも本屋やゲーム屋を巡ってただけ。デートでそのチョイスはどうよ?あと何で飯食った後の行動も知ってる?」

「SNSでばらまかれてたぞ」


 マジか。

 俺のツ〇ッター好きな企業の情報を受け取るだけにしか使ってないから知らなかった。


 朝から色々と妄想込みの話を聞かされて訂正している間もコッペリアはどうだろうと思ってちょっと見てみると、あっちはあっちで女子達に囲まれていた。

 流石になんと言っているのかまでは分からないが、楽しげに話しているのだけは雰囲気で分かる。

 なんで同じ内容を話しているはずなのにこんなに雰囲気が違うの?

 これが男女の差??


 なんて思っていると隣からじ~っとした視線を感じた。

 何だろうと思って振り返ってみると、そこには愛香さんが俺の事をジト目で見ていた。


「どうかした?」

「……デート。楽しかったみたいだね」

「別に特別楽しいって訳じゃないし、それ以前にデートじゃないし」

「……本当にコッペリアさんの事はただの友達としか見てないの?」

「まぁ……前世からの付き合いだからな、ただの、とは違うけど彼女になってほしいとも思ってない。いわゆるあれだ、友達以上恋人未満って奴」


 多分俺とコッペリアの関係はそれが1番合っていると思う。

 また会いたいと思える相手をただの友達は言えないと思うし、かと言って恋人になりたいかと言われるとそうでもない。

 俺にとっては仲のいい友達としか言いようがない。

 この言葉を聞いた愛香さんは少し考える様な素振りを見せた後、納得したように頷く。


「本当に柊君から見てそうなんだね」

「だから何度もそう言ってるじゃん。俺にとっては友達だって」


 コッペリアの方はそれ以上の関係を望んでいるのかも知れないが……俺にそんな気はない。

 今十分幸せだと感じているのだからそれ以上の幸せと言われてもピンとこない。と言うか恋人関係になる事だけが幸せではないだろう。

 それなのに幸せになる=恋人になると思っているのは肉体が若いせいなのかね?俺は前世の頃も学生の時に死んだから精神はあまり変わらない気がするけど。


 そんなクラス内の恋愛模様で盛り上がっているのを見ると、少し冷静になるとちょっと奇妙に感じる。

 彼らは様々な異世界で英雄と言われていた人物たちだ。中には英雄として生き残った後に寿命や病気で死んだ人達もいるらしい。

 流石に前世でどんな風に死んだかなんて聞けないが、それでも1度は大人になって、爺さん婆さんになるまで生きた経験があるのに、俺と同じように若者らしい感性を持っているのは今さらながらに奇妙な感じがする。

 だからと言って深く突っ込む気はないけど。

 きっとあれだ。マンガとかで見る肉体が若いと精神も若くなるって奴だ。多分……


「お前ら落ち着け~。今日はちょっと重要な話あるぞ~」


 なんて思っていると担任の先生がやってきた。

 俺は助かったと思いながらため息をつき、他のみんなはもっと話を聞きたかったようで残念そうな顔をする。

 ただコッペリアの方では「また後で聞かせてね~」っと言う声が聞こえたので次の休み時間にでもまた話をするつもりの様だ。

 俺はコッペリアの事を彼女にしたい対象として見ている訳じゃないんだけどな……

 勝手に恋人のように話されるのもなんか違和感があるし、どうにか訂正しておかないといけない気がする。

 全員自分達の席に座ると先生は面倒臭そうに頭をかきながら言った。


「お前ら、上からの予言で次のアンノウンが現れる事が正式に発表された。予言によるとおよそ1週間から2週間後に巨大な戦艦型アンノウンが現れる。お前ら準備しとけ」


 俺はその言葉に非常に驚いたが、周りのみんなはあまり驚かず、ただ戦いが来ることを知って目つきが変わった。

 まさに戦場に立つ戦士と言うべき表情であり、真剣さとピリピリとした空気が教室を包む。

 変わらないのはクラス内だとコッペリアくらいか。


「そしてこの戦艦型アンノウンだが、これと戦った卒業生が居たのでそのレポートを渡しておく。詳しい内容に関してはそれに目を通しておけ。どんな攻撃をしてくるのかなども書いてあるから隅々まで読んでおけ。てことで喜べガキ共。今日の午前中は潰れて集会だ。午後から本格的な戦闘の最終調整だ。手を抜く奴はいないだろうが、資料に書かれている様に今回のアンノウンは超巨大型だ。気を付けて戦えよ。という訳で体育館に移動だ。早くしろよ」


 担任はそう言ってすぐに俺達に卒業生のレポートと言う奴を配った。

 その後レポートを持って体育館でそのアンノウンについて卒業生の実体験を交えながらどのように攻撃するのがいいのか、どこが弱点なのかを講義された。


 今回のアンノウン。超巨大型戦艦タイプは500メートル級の戦艦タイプだと言う。

 船の癖に空をゆっくりだが飛ぶ事も出来るし、それなら船底から攻撃できるんじゃない?と思ったが船底からミサイルが1000単位で飛んで来るらしいので油断していると簡単にやられてしまうらしい。


 それからこのアンノウン。中に誰かが乗っている訳ではないらしい。

 いわゆる人工知能、その世界のAIが戦艦を勝手に分捕って魔改造した物だと言う。

 原因はとある人工知能がバグってロボット三原則みたいなのを守らなくなってしまったため、廃棄しようとした際に逃げた先がこの戦艦を飾っていた海軍の跡地だったらしい。

 設備は古いが魔改造できなくもないぐらいの設備だったらしく自分の事を消去しようとした人類に対して反撃し始めたそうだ。


 ちなみにこの戦艦の中から人型ロボットが武装して出てくる。

 しかもエネルギーがあればいくらでも量産する事ができると言う。

 エネルギーはあっても資材がないと無理じゃない?と言うツッコミは無駄だった。出来るんだからしょうがない。

 そして必殺技とも言える高エネルギー砲を持っていて甲板に乗っかっている大砲も超強力……


 うん。この間がサキュバスだか夢魔だか言ってたのにいきなり人工知能の反逆と言うSFがぶち込まれたので混乱してるわ。

 せめて統一できない物かね……ファンタジーかSFに。

 なんて思いながら午前中が終わり、昼休みになった後先生から改めて言われた。


「柊は一般人と変わらないからこの町に残って通常授業だ。本格的には進めないが忘れずに来いよ」

「はい」

「他にも主に武器作りが得意だったり戦場で活躍した訳じゃない連中だな。お前は戦えないことを恥じているらしいが、気にするな。転生者でも戦えない奴は戦えない。それだけは覚えておけ」


 そう言われてから先生は行ってしまった。

 どうやら俺は完全に寮で引きこもっているしかないらしい。そりゃ戦闘で役に立つだなんて考えた事もないけど、ここまではっきりと言われてしまうのも悲しいものだ。

 だがピンチに突然力を得たりする主人公ではないし、普通の体育ですら終わったらくたくたになるのだから足手まといなのは仕方ない。何もできないから素直に逃げるしかない。


「はぁ」

「そんなため息ついて、シュウにはどうしようもないでしょ。大人しくしてなさい」


 俺がため息をついているとコッペリアに言われた。

 コッペリアは俺の机の上に座り俺の事を見下ろしている。


「女の子が机の上に座るもんじゃないぞ」

「それってちょっとした男女差別じゃない?」

「せめて脚閉じろ。パンツ見るぞ」

「シュウなら問題ないわ」

「問題あるだろ……」


 俺は椅子を後ろに傾けながらだらしなく座る。

 他のみんなは普段こういう時からかってくるのに今日はもう全然ない。遊びより目の前の戦闘に集中するのは当然だ。

 みんな真剣にレポートを読んだり、弱点をどのように突くか相談している。

 そう言えばと思いながら俺は聞く。


「ところでコッペリアってこういう巨大戦艦みたいなのと戦えるのか?」

「当然でしょ。私から見れば簡単な相手だけど、町に被害が出ないようにしないといけないから力尽くとはいけないわね。ま、他にも方法はいくらでもあるから問題ないけど」

「マジか……俺もそれくらい強かったらな~、みんなの役に立ったのに」


 弱いから待っている事しか出来ない。それが非常に情けないと何度も思ってしまう。

 今から体を鍛えてもみんなのような特殊能力は一切持っていないのだから意味ないんだろうな~っと言うのも本当は分かっている。

 だから体育では緊急事態に逃げれる様、体力作りと足の速さを鍛えている訳だ。


 そう理解はしているけど納得はしていない。そんな感じの感情を抱いているとコッペリアが突然俺の事を抱きしめた。

 普段は俺の方が当然背が高いので抱き締められても何ともないが、今は俺が椅子に座っていてコッペリアは机に座っているので抱き締められた時に丁度コッペリアの胸に俺の顔が当たった。

 特別大きいと言う訳ではないが、やっぱり女の子なんだな~っと分かる感じで柔らかい。


「コッペリアさん?突然どうしたのですか」


 流石に気恥しくて敬語でそう聞くと、コッペリアは普段しない表情をしていた。

 何と表現すればいいのだろうか。子供を見守る母親の表情?慈愛に溢れた表情?違うな。

 この表情は……何か懐かしみながら楽しんでいる様な感じがする。


「あなた、肝心な所を覚えてないのね。それとも当然のセリフだと思っているのかしら」

「何がだよ」

前世むかし、悩んでいた時にこうしてくれたじゃない。その時のお返し」


 そう言いながら俺の頭を撫でる。

 いや、俺そんな事した覚え………………あるな。

 あの時は今みたいに大きくなかったからな。やった事あったかも知れん。

 昔のコッペリアは小っちゃかったから。


「あの時と状況が全く違う気がするんだが?」

「悩んでいる所は一緒でしょ。だから今度は私がこうして悩みを解決させてあげようとしてるの」

「解決はしないと思うが……まぁ気は楽になったよ。だからそろそろ放して」


 ここは教室だぞ。

 しかも周りから色んな視線を感じる気がするのだが?

 今は頭を抱きしめられているから周囲の様子をうかがう事も出来ないけど。

 俺がそう頼むがコッペリアはむしろさらに強く抱き締めた。

 胸当たってるよ?大きくないけど確かに柔らかい物が顔に当たっているのだが?気にしないの??


「いやよ。こんな事出来るの中々ないんだから。彼女が言っていた母性とはこういう感情なのかしら」

「多分違うし奥さんは愛欲だと思ってたんだけど」

「愛したい、愛されたいだったわね。今なら理解できるかも」


 そう言って俺の事を放してくれない……

 俺だって健全な思春期の男子なのだからちょっとだけ、正直に言うと結構嬉しい状況なのだが、周りの視線の方が気になる。

 ほら、嫉妬した男子生徒と思われる誰かからものすごく冷たい視線を感じるのですよ。

 だから放して。


 結果、愛香さんにひっぺがえされるまで抱き締められた。

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