第八話 継母と義姉たちの破滅
オレは、リチャードと護衛騎士たちのほかに、国内の犯罪の取り締まりが専門の騎士たちも連れて、ウィンザー男爵領へ向かっていた。
「エミリーです」
「クロエです」
ウィンザー家のエミリーとクロエは、やはり舞踏会で絡んできたエミリーとクロエと同一人物であった。
上等なドレスを身に着けている。
「アレクサンダーだ。……失礼」
オレは、ポケットから、ライムのような球を取り出すと、それを、エミリーの、胸の辺りに押し当てた。
「えっ? きゃあ」
もし仮に、エミリーがあの魔法少女なら、魔法少女の魔力外装の一部であるこの緑の玉は、エミリーの体に吸い込まれていくはずだ。
予想通り、何も起こらない。
同じことを、クロエにも行う。
「きゃあ」
やはり何も起こらない。
「……やはり君たちは、違うようだね……」
「「えっ?」」
さて、二人があの魔法少女ではないことの確認は済んだ。
「ウィンザー男爵、ウィンザー男爵夫人!」
「「はっ」」
「お前たちを、簒奪の容疑で逮捕する!」
ウィンザー男爵家の面々は、口をぽかんと開けて、静かになってしまった。
続いて、我に返ったのか、ヘンリーとヴィクトリアの顔が青く変色していく。
「…どういう、こと…?」
その時、どこからか、小さく呟き声が響いてきた。
間違いない!あの魔法少女の声だ。
「アリアナ・ウィンザー男爵令嬢か?」
「わ、私の名前を、ご存じなのですか!」
「ああ。9年前の貴族名簿に載っていた」
引き連れてきていた、国内の犯罪の取り締まりが専門の騎士たちが四人を拘束する。
「アリアナ様を連れてまいります」
「ああ。頼む」
ほどなくしてリチャードが連れてきたのは、襤褸の肌着の上に、古いエプロンを纏っているだけの少女だ。
彼女の頬には、痛々しい火傷痕。
「お前たちのやったことは、全て分かっている!!」
先代のウィンザー男爵には、娘が一人しかいなかった。
その為、一人娘のエリザベスの夫、ヘンリーが一時的に男爵になり、エリザベスの子供に継承権が引き継がれる予定だった。
エリザベスとヘンリーの子供はアリアナ一人だったため、アリアナの夫が次の男爵となる。
しかし、ヘンリーは愛人であるヴィクトリアと共謀し、エリザベスを殺し、ウィンザー男爵の爵位を簒奪した。
そして、役人に賄賂を贈り、4年前の貴族名簿の作成の際に、エリザベスではなくヴィクトリアが先代ウィンザー男爵の娘である、と書き換えた。
リチャードが、調査結果を、淡々と披露する。
ヘンリーとヴィクトリアの顔は、青を通り越して、もはや幽霊のようだ。
エミリーとクロエは、心配そうな顔をしておどおどしている。
簒奪計画自体には、関わっていないのかもしれない。
だが、アリアナの顔の痛々しい火傷痕、みすぼらしい服装……。
オレは、怒りのままに言い放つ。
「連行しろ!!」
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