脅威とそれを上回る信頼
『やっべえ……』
『おいおい、台風とかあり?』
『デカすぎるだろ……』
『下手したら全滅もあるよな。これはやばい』
『確かにやばいけど……ヴァリアンなら行けると俺は信じてる』
『確かに、全然焦ってない……?』
今までとはスケールの違う、まさに『天災』のような攻撃。視聴者は不安を抱き、冒険者達はただ空を見上げる事しか出来なかった。
すでに防壁の足元までAランクの魔物は及んでおり、立ち止まっている暇などない。しかし『こんなちっぽけな魔物を対処したところで、どのみち死が待っているのではないか』という絶望。
Aランクの魔物でさえをちっぽけなものだと認識させるほどの脅威が、彼らの心を支配する。
「あぁ……怖え。魔物に殺されるのって、痛いんだろうなぁ。だったらいっそ……」
防壁の上で補給を行っていた少年が、地面を覗き込んでぽつりと呟いた。
『心配になってヴァリアン以外の冒険者の配信も見に来たけど、やっぱりみんなダメそうだな』
『んね、棒立ち状態の人が結構いる』
『まあ、仕方ないところはあるよな。俺だって実際にこんなもん見たら、絶対に死を確信する。配信越しですら、こんなにも恐ろしいんだ……』
ある程度知能の高かったサラマンダーとは違い、風鬼雷鬼は知能の低いSランク魔物である。それはつまり、裏を返せば『知能が低くともSランクとして君臨できる程の力を持つ』ということ。
その圧倒的な暴力を目の当たりにすれば、人々が思考を放棄してしまうのも仕方のないことである。
しかし。強大なる信頼を糧に、動きを止めない者達も確かに存在した。
『お前らも頑張れ! 狼ちゃんたちはご主人様を信じてるみたいだぜ? 誰1人絶望なんて抱えちゃいない』
『ほんとだ……みんな、自分のやるべきことに全力を尽くしてる』
『そうすれば、ヴァリアンの負担が減ることも理解してるんだろうね』
『絶望どころか、ちょっと楽しそう?』
ルビー、サファイア、アメジストウルフは主人を邪魔する魔物の排除に努め、トパーズウルフは壊れそうな壁を修復し、エメラルドウルフはそれらの補助。そして、ダイヤウルフは人々の心を癒していく。
彼らの胸に絶望は一欠片も存在せず。あるのは主人への信頼と、主人の活躍の場が増えたことへの喜びだけ。
そんな彼らの姿は、人々の心を動かすには十分輝いていた。
「俺たちにはぁ! 俺たちのやるべきことがある! 動きを、思考を止めるな!」
「「「っ! おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
『いいぞ! 他のみんなも頑張れ!』
『いける! あの台風はヴァリアンに任せときゃきっとなんとかなる!』
『いけいけー!』
すでに気を持ち直していた上位陣の活躍もあり、防衛の士気は再び盛り上がっていった。
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