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国王とガルフ

「ふむ、うちの店は下取りもやっとる。普通なら、ひとまずは装備できるランクのアイテムを買っておくのが安泰だろうな」


 ガルフさんに悩みを相談すると、少し考えた後に口を開いてそう言った。


「なるほど、下取りですか」

 

 アイテムを買い替えたりする際、前に使っていたアイテムを渡すことで、その分値引きしてもらえるシステムを下取りと言ったはずだ。


「下取りがあるならAランクのアイテムを買っても損はしないですし、【一つ首ヒュドラの腕輪】買っちゃおうと思います」

「おう、カスタムは前と同じか?」

「はい。スキルを無くして、その分を毒持続時間に全振りで」


 決して安い買い物ではないが、莫大な収入で財布の紐が緩んでいたのだろう。 元から購入する気があったこともあり、すぐに購入を決めてしまった。


 しかし、前回来店した時のカスタムまで記憶してくれているとはな。 アイテム関連だけでなく、商売まで上手いらしい。


「そもそも、なんて傲慢な悩みなんだって話ですよね。そんなに早くSランクやSSランクになれるはずがないのに」


 よく思い返せば、なんて贅沢で傲慢なことを悩んでいたんだと思う。 最近はトントン拍子にファンが増加しているせいか、少し天狗になっていたらしい。


 黒歴史を製造したヴァリアンは恥ずかしくなり下を向いた。 穴があったら入りたいとはこのことかと実感する。


 どうか、相談を受けた彼がこのことを周りに言いふらさないことを願うばかりである。もっとも、そんな幼稚なことをする人でないことは分かっているが。


「いや、お前は近いうちにSランク、いや。SSランクにに上がるだろうな」


 こちらの恥ずかしい気持ちを両断するかのように、彼は断言してみせた。 真っ直ぐこちらを見つめるその瞳が、今の言葉が本心だと言うことを物語っているように思えた。


「はは、買い被りすぎですよ」

「買い被りなどではない。 さっきここに国王の使いが来ておってな。怪林病から大勢の国民を救った礼がしたいとかで、お前を探しておった。」

「こっ、国王……」


 これもまた、冗談を言っているようには見えない。 謙遜を言ってヘラヘラと笑っていた口が萎れて固まった。


「お、お礼とは……一体何をなさるんでしょうね?」

「ふむ。金銭やアイテムの授与もあり得るとは思うが、一般的なのは表彰だろうな。」

「なるほど、表彰ですか。それは、こちらの知名度を上げるために行っていただけると言うことですよね」

「ああ、そうだ。表彰を受けたやつは良くも悪くも、必ず有名になってると言っても過言ではない。 お前さんなら大丈夫だとは思うが、態度には気をつけた方がいい。 何千万人が見ているかわからぬからな。」

 

 王からの表彰。それは、王が配信をしている状態で行われるのだろう。その影響力は計り知れないものがある。


 当然、その場で何かやらかしたものならば、悪い意味で知名度が上がってしまうことは想像し易い。


 仮面をかぶっていて平気なんだろうか?しかし、脱ぐわけにもいくまい。そんな場で人間だと言うことがバレれば、それこそ終わりというものである。


 ここまで魔界で積み上げた信頼や期待の山が土砂崩れを起こし、俺のファンとともに居場所も崩壊して無くなっていくだろうな。


 しかし、ここでいい印象を与えるとまで行かなくとも、普通にしていれば何人かは俺に興味を示してファンになってくれるかもしれない。


「必ず成功させます! いや、失敗しないようにします!」

「ガハハ! あまり緊張することはない。 一国の王とはいえ、ただのハゲた老人だ。 いざとなったらぶっ飛ばしてしまえばいい」


 俺の決意を聞いた途端、太ももに手を打ち付け大笑いした。 軽く脅した相手が想像以上にびびっていたため、面白くなってしまったと言った感じが滲み出ている。


 しかし、都市の中にある大きくもない一店舗。そこに王からの使いが来るとは、王とはどんな関係なんだろうか。

 

 俺を探すにしても、ギルドに行った方が確実だと思うんだけどな。この人にあえて使いを寄越すだけの理由があるのだろうか。


「ガルフさんは、国王様とお会いしたことがあるんですか?」


 大笑いしてバカにされたんだ。少し暗い関係を探ってみてもバチは当たらないだろう。


「ん?ああ、あいつとは古い仲でな。昔は一緒に冒険したり、よくバカやっとった」


 軽い気持ちで聞いてみたが、まさか予想的中とは。やはり、この老人は思ったよりもすごい人だったらしい。


「ひとまず、今日はこれだけ買って帰りますね」

「おう、もう加工も済んでる。そのまま持っていけ」


 ひとまず、国王の件が終わってから残りの買い物は済ますことにした。 


 【一つ首ヒュドラの腕輪】の代金を手渡すと、あちらもアイテムを机にそっと置いた。


 どうやら、俺と話しながらもいつの間にか作業を終えていたようだった。


 この人の優秀さを痛いほど思い知った1日だったな。





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