血剣と魅了
吸血騎士の血剣を装備して待機していると、試合が始まった。
【吸血鬼】
試合開始直後、全身を吸血鬼に変化させる。奇襲を受けた場合、再生力の強い吸血鬼になっていた方が安全なので、索敵より優先して行った。
ドクン!
吸血鬼に変化し終え、敵に意識を移そうとしていると、吸血騎士の血剣に異変が起きた。
ドクン、ドクンとまるで生きているかのように脈を打ち、柄から赤い血管のようなものが伸びていった。
『え、何この武器初めて見た』
『血管?』
『カッケェwww』
『変形するとか魔法アイテムかよ。リッチやな〜』
やがてその血管は俺の手や腕と結合し、体内へと入り込むと、嬉々として血液を吸い上げていく。
血液を吸い上げられる。通常、それはとても不快なことであり、放っておいたら命の危険にもかかわる問題である。
それなのにも関わらず、俺の体は、脳は、抵抗することを選ばなかった。
それは、吸血鬼になったことで、体内の血液を多少失っても死ぬことはないと本能的に理解していたからだろうか。
それとも、この血剣から伝わってくる善良な欲望を、否定する気にならなかったからだろうか。
すでに、体内の30%ほどの血液が吸い取られた。通常の人間なら既に死んでいるような量の血だ。
しかし、それに危機感を覚えることもなく、ただ、自身と結合した血剣に目を奪われていた。
『おーい!何ずっとぼーっとしてんだよ!』
『どうした?』
『固まってて草』
『え、がちどうしたんかな』
『相手弓構えてるやん』
『攻撃くるぞー!?』
パァン!
「あれっ?俺は何を……」
対戦相手の弓矢により頭部が吹き飛ばされ、ようやく意識が覚醒した。
なぜかはわからないが、この武器に魅了されてしまっていたようだ。試合中だというのに、それを忘れるくらいに。
そして、そこを相手に弓矢で射抜かれたと。しくじったな。すぐに立て直そう。
普通ならすでに試合終了だが、今の俺は吸血鬼だ。頭部が吹き飛ばされたくらいで死ぬような体ではない。
再生。そう体に命じると、首から流れ出た血が頭の破片をかき集め、繋ぎ合わせ、まるで逆再生するかのように頭部を元の状態へと戻した。
観察しようと相手を見ると、倒したと思っていた相手が突然再生したことに驚いたようだ。慌てて弓矢を打とうとしたせいか、打ち損じてしまっている。
『うお、すげ』
『あ、そっか吸血鬼だもんね』
『相手、そりゃあビビるよな。俺たちまで騙されたもん』
『それな?負けちゃったかと思ったよ』
やばい、弁明しないと視聴者が減ってしまう! そう思い、ひとまずチラッとコメントを見ると、今の行動が相手を動揺させる作戦だと勘違いしてくれているようだ。
どうにか弁明しようと頭を働かせていたが、ひとまず必要なさそうだな。すぐに頭を切り替えよう。
弓相手の基本的な戦術としては、遮蔽物に隠れながら相手の位置を探り、徐々に近づいていくことだ。
しかし、今回は遮蔽がないため、相手の攻撃を弾きながら素早く近づいていくしかない。かなりきつい状況だ。
それは裏を返せば、相手からしても隠れる場所がないので、弓の強さを活かしにくくてきついということになる。
結局どういうことかというと、どちらにとっても状況がきついから、さっさと近づいて短期接戦で終わらせようということだ!




