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呪と聖



 「確かこの辺なんだけど……」


 あの後、ミレーナさんにガルフさんの店の詳しい位置を聞き、そこへ向かって歩いていた。すぐそこにあるはずなのに、なかなか見つからない。


 いかんせん防具屋や武器屋が多すぎて見分けがつかないんだよな。

 

 たしか、特徴は大きな剣が店の前の床に突き立てられていることだったっけ。


「ん……あれか!」


 たしかに大きな剣があるとは聞いていたけれど、デカすぎるだろ。一度見た店だが、近くで見たせいで剣が壁に見えてスルーしてしまっていた。


 変な剣だな。もはや剣と呼べるのか?これ、扱える人いないだろ。めちゃくちゃ重そうだし、取り回しが悪すぎる。


 なんだか、この剣を置くあたりにセンスとユーモアを感じる。ガルフさんって、明るい人なのかな?


 その辺りも気にしつつ、さっそく店内に入る。カランカランと鈴の音が鳴ると、ガルフさんと思われる男の人が奥から出てきた。 


「いらっしゃい」


「いや、いかつぅ……」


 思わず声が漏れた。声を抑えたため聞かれてなさそうだが、危ないところだったな。


 普段ならこんな失礼なことしないのに。明るい感じの人かな?なんて思っていただけに、そのギャップにやられたんだよ。めちゃくちゃいかついし、眉間に皺寄りまくりだ。


 今だって、腕を組んでこちらをじっと見つめている。気まずいな……。あ、早く返事しないと。


「こんにちは、見させてもらってもいいですか?」


「おう、ご自由にどうぞ。手に取る場合はこっちの手袋をつけてからで頼むぜ。」


 お、店のシステムがしっかりしているな。商品を汚させまいという気遣いが伺える。そういえば、店内もめちゃくちゃ綺麗だし、アイテムも揃えて置いてあるな。


 アイテムも豊富で、見回るのが今から楽しみになる。早速、手袋をつけて色々と物色しようか。


 今回は、付加効果のあるアイテムが欲しいんだよな。理由を説明すると、魔物化した部位につけていた防具は一時的に消えるから、大体の防具は着けるだけ無駄になってしまうからなんだよな。


 そのため防具というより、付加効果のあるアイテム系が欲しい。アイテムは消えてもその効果は消えないし。


 アイテムコーナーへと足を運び、物色していく。かなりの数のアイテムがあるな。いくつか適当に効果を見てみようか。


【オーガの指輪(C)】

・力50%上昇

・俊敏10%低下

・【怪力】スキル付与



【シャドウウルフのコート(E)】

・俊敏20%上昇

・【気配遮断】スキル付与

・【無臭】スキル付与



【ゴブリン族の首飾り(C)】

・精力80%上昇

・知力20%低下

・【着床】スキル付与


 こういった感じで、アイテムは装備しておくだけで能力値を上げてくれるだけでなく、スキルも使えるようになる優れものなんだよな。


 流石に、アイテムを装備できる数には限りがあるけれど。それでも便利だ。あるとないとでは大違い。


 スキルが使えるようになるのは普通の人からしたらとてもすごい利点なんだろうけど、俺は魔物のスキルは大体使えるからなぁ。


 なので、スキルを付与できるアイテムというより、能力値の変動系のアイテムが欲しい。その辺も見ていこうか。


【ウィッチの杖(D)】

・魔力20%上昇

・魔力消費量5%軽減


【リッチの指輪(C)】

・魔力30%上昇

・魔力消費量15%軽減

・【闇魔法】スキル付与


 この2つとかは特に欲しい。今回は金があるし、奮発してリッチの指輪の方を買おうかな。でも闇魔法のスキルはいらないんだよな。


「アイテムの加工もお願いできますか?」


「おう、任せろ」


「リッチの指輪の闇魔法スキルを消去して、魔力消費量軽減を強化でお願いします」


【リッチの指輪(C)】

・魔力上昇30%

・魔力消費量35%軽減


 加工後の能力はだいたいこれくらいになるそうだ。通常、スキルはかなり大きな要素であり、それを削るのだから、その他の効果の上昇率もすごいみたいだな。


 アイテム本体と加工代合わせて35万か。これは買いだな。さ、他にも物色していこう。


【吸血騎士の血剣(C)】

・体力20%上昇

・治癒力30%上昇

・【吸血】スキル付与


「吸血スキルを外して治癒力強化でお願いします」


【吸血騎士の血剣(C)】

・体力20%上昇

・治癒力50%上昇


 これは合計30万ゴールド


【ペガサスのブーツ(B)】

・俊敏50%上昇

・疲労30%軽減

・【飛翔】スキル付与


「飛翔を消して疲労軽減を強化でお願いします」


【ペガサスのブーツ(B)】

・俊敏50%上昇

・疲労50%軽減


 合計60万ゴールド


 ふむ、3つで合計125万ゴールドか。もう少し欲しいところではあったが、予算がギリギリなのでとりあえずこの辺にしておこう。





 






 そろそろお会計をしようかと思い、カウンターへ近づくと声をかけられた。


「安い買い物じゃねえぞ?考えなしにスキル付与の効果を外そうってわけじゃねえんだろうな」


 もしや、心配してくれているのだろうか。たしかに、他の人が同じことをしていたら自分でも一度思いとどまるように言うかもしれない。


「もちろんです。スキルが結構万能なので、他のスキルは特に得る必要がないんですよね」


「ほう、万能ときたか。そいつはいいな。例えば、どんなことができるんだ?」


「んー……そうですね。たとえば、呪いも扱えれば聖光も扱えますよ」


 両腕を悪魔と天使に変化させ、実際に軽く力を使って見せる。


「ほう、対極にある2つを扱えるときたか。ちょうどいい、呪いを扱えるなら、俺の依頼を受けねえか?」


「依頼ですか?」


 ここにきて依頼ときたか。呪いが関わる依頼は大抵危険なものだという偏見しか持っていないが、どうだろうか。危なさそうなら断ろう。


「おう、無理なら断ってくれて構わねえが、呪いのアイテムの加工をしなくちゃならなくてなあ。そいつを手伝って欲しいんだ」


 報酬は弾むぜ。と続けて言った。


 んー。アイテムの加工か。それなら、ほとんど危険はなさそうだな。具体的に何をするのか聞いてみて、平気そうなら受けてみよう。


「具体的には何をすればいいんです?」


「そうだな、俺がアイテムの加工をする間、一時的に呪いが発動しないように制御しておいてほしいんだ。

 

 しかし、聖光を使って呪いを弱めたり、浄化して呪いを消したりはしちゃいけねえぞ。加工したら、また呪いを戻さなきゃならねえからな。」


「なるほど」

 

「もう一度言うが、できないなら全然断ってくれて構わない。そっちの制御が甘ければ、俺にも命の危険があるのはわかるだろ?」


「そうですね……それも承知した上で、任せてください。俺があなたを聖光で包んでおき、万が一呪いが暴走したとしても危険がないようにしておきますから。」


「……考えたな。万能者ならではの案だぜ。それに、制御の方も自信がありそうだな。それじゃ、頼むぜ。こっちだ。」


 ガルフさんの後に続き、呪いのアイテムのところまで歩いていく。ガチガチに封印具で固められているが、それでも微量の呪いが漏れ出ているのが見える。


 かなり強い呪いのようだな。張り切ってかかろう。


「外すぜ」


「はい」


 ガルフさんが鍵で封印具を外すと、即座に紫色のオーラが指輪型のアイテムから噴出されていく。


【呪の悪魔】【守護の天使】


 左半身が凶悪なオーラの漂う悪魔へ、右半身は聖なる光を放つ天使へと変化した。


 自身の呪いの力でアイテムにかけられた呪いを包み込んでいく。これで、一時的に力を封印することができるはずだ。


 それと同時に、守護天使の聖なる光でガルフさんを包み込む。これで、万が一のことがあっても安心だ。


「呪いの制御、終わりました。20分くらいは持ちそうです」


「おう、呪いのオーラが一切なくなった。完璧だぜ。10分もあれば終わるからよ」


 10分か。それなら結構余裕を持ってできそうだな。アイテムの加工でも見学させてもらおうか。


 何をしているのかと手元を覗き込むと、指輪型のアイテムを腕輪に加工しているようだった。


 詳しいことは全くわからないが、何か刻み込んでいるのを見るに、呪いの調整なども行っているみたいだな。


 その後も作業は順調に進み、8分ほどだったところで無事に終わったようだ。


「ありがとよ、いい呪術師が見つからなくて困ってたところだったんだ。助かったぜ」


 前まで仕事を頼んでいた熟練の呪術師がいたそうだが、数ヶ月前に遠くに引っ越してしまって困っていたらしい。


「いえいえ、こちらこそいいアイテムを買わせてもらえてありがたいですよ。」


 これは本音だ。同じレベルのアイテムをショップで買おうものなら倍の値段はかかっただろうし、送料と改造料まで込みにしたらだいぶ値段がかさんだだろう。


「そういやぁ、アイテムを買いに来たんだったな。あれ、半額でいいぜ」


「え!呪い関係の仕事とはいえ、8分程度の手伝いでそんなにいただけませんよ」


 金はいくらあっても困らないからな。これはありがたい申し出だが、流石に断っておこう。


「いいや、見事な仕事だった。呪いを扱っておいて、あれほど安全な作業場は初めてだったぜ。それと、あれはBランクの呪いだったし、60万前後が相場だろう。」


「そうですか?ではありがたくいただきますね」


 相場か。そう言われると何も言い返せないな。どうせ報酬としてお金を受け取るならば、ここでの割引に当てても変わらないか。


 冒険者ギルドの仲介料金や手数料がなくなる分、お得に報酬をもらえるしありがたい。


「おう、こちらこそありがとよ。またなんかあったら頼むぜ。そういや、冒険者だと言っていたな、名前を聞いてもいいか?」


「依頼を受けたのに、名乗るのをうっかり忘れていましたね。ヴァリアンといいます」


「がはは、俺もさっきまですっかり忘れてたぜ。ヴァリアン、またこいよ。次もサービスしてやるからな」


 そう言った彼は、清々しいほどの笑顔を浮かべていた。最初の怖そうな印象はもうどこにもない。これは、心を開いてもらえたと考えていいのかな。



















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