哀愁と覚悟と混乱と衝撃
さて、回復手段がなくなったわけだが……こいつらはどう出る?
回復能力を持つ魔物を全て倒した後、一度冷静に雷鬼と風鬼から距離を取って行動を観察した。
追撃を仕掛けることも考えたのだが、手負いの獣は恐ろしいと言うしな。
いや、獣じゃなくて鬼だろって?
……確かにそうだけど、こいつらの知力はほぼ獣だと言っていいだろう。回復手段がなくなり、やけくそになって全身全霊の自爆攻撃なんかを放ってくるかもしれない。
それに、雷鬼は出血により継続的に弱っているし、時間をかければ冒険者たちがAランクを倒し終えて応援に来てくれるかもしれない。そう、時間はこちらの味方である。
そうして観察を続けていると、2体の鬼が目を合わせ、頷き合った。2体からは、心なしか哀愁が漂っているように感じる。そしてやがて、4つの瞳に力強い覚悟が宿った。
ゾワッ
そして、2体はギロリとこちらを睨みつけた。瞳は充血し、視線には憎悪と殺気が宿る。
(くるか? どう来る? 何をする気だ? 有力候補は……)
圧倒的な殺意に背筋が軽く震える。それを忘れるように思考を巡らせ、速い攻撃に備え、2体を凝視して行動を待った。
すると突如、強くこちらを睨む風鬼の瞳から、赤と透明の雫が溢れた。
「え?」
『どしたんヴァリアン』
『え?は草www。どしたん』
『wwwwwwwwwwwwwwwww』
『え、待ってもしかしてあれ、泣いてる……?』
『え、ガチやん』
『wwwwwwwwwんなわけあるか! よく見ろよ。赤いし、ただの血だろ?』
『いや、鬼系って感情が表に出やすいからなんとなくわかるけど、やっぱ泣いてる気がする』
『ほんとだ。ズームしてみたら泣いててびびる』
魔物の涙。それはありえないはずの光景で、脳内が混乱する。
「ガァァァァァ!ァァァァァァ……ウガァァァァァァァァァァァァ!」
(来る!)
【炎蜥蜴の腕】【大天使の翼】
こちらの混乱をよそに、風鬼が咆哮。すぐに気を切り替え攻撃に備えるも、攻撃は来ず。
そして風鬼は、咆哮と共に大きく開けた口で、雷鬼の頭部を……喰らった。
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