哀れなセイントオーガ
「チッ!」
風鬼の起こした風刃を避けるため、雷鬼の腹から腕を引き抜いた。チャンスを不意にし、すぐに離脱するハメになり、つい悪態をつく。
折角不意をついて攻撃が成功したのだから、もっと追撃したかったというのに。
避けずに追撃するという手もあったが、俺が避けた風刃の餌食となった魔物の惨状を見ると、ちゃんと避けて正解だったなと思う。
俺に避けられた風刃は地面を裂きながら直進し、たまたまその先にいた魔物をぶつ切りに両断した。恐ろしいものである。
しかし、流石はSランクモンスター。怒りによって多少狙いが乱れてはいたが、風刃の生成速度も早く、その威力も高い。
とはいえ、怒りに任せて攻撃した結果自陣の戦力を削ってしまうあたり、やはり知能の低さというか、考えの浅さが伺える。
「ガォァァァ! グァァ!」
一旦距離を取って思考していると、雷鬼が吠えた。そして、可視の風による弾幕が展開される。かなりの数の風弾だが、一撃一撃にかなりの威力を感じる。
避けられるものは避けて、避けられないものはサラマンダーの炎で対処していく。
(なんだ? 腹に穴開けられて焦ったのか?)
特に意味を感じない弾幕。しかも、色付き。パッと考えられるのは、時間稼ぎだろうか。しかし、雷鬼は特段自己治癒能力に優れているわけでもなかったような……。
何をする気なのか。被弾しないよう気をつけながら動きを監視していると、数体の魔物が少しずつ雷鬼の方ににじり寄っているのを発見した。
(なるほど、色付きなのは近寄る魔物を見えにくくするためか。)
こちらにバレぬよう、地に伏せて少しずつ雷鬼に近づくのは、鬼系魔物の中では珍しく回復能力をもつセイントオーガ。
どうやら、弾幕を張って時間稼ぎしている間に、セイントオーガに治療させようと言う作戦だったようだ。
雷鬼風鬼が聖人鬼の方に移動し、聖人鬼を守りながら治療されたとしたら、少し厳しかったな。しかし、やはり鬼の頂点とは傲慢なもので、自らが足を運ぶ、部下を守るなどは頭の隅にもない考えなのだろう。
その傲慢が、命取りだ。
【炎蜥蜴の腕】【風龍の翼】
サラマンダーの豪炎によりセイントオーガを死滅させた後、飛び上がって魔物の群を観察し、回復能力を持つ個体を全て撃破していく。
阻止しようと風撃が来るも、そんなものには当たるはずもない。最終的に雲に乗って移動し、自らの手で妨害しようとするも、羽衣を失った肥満鬼が龍の翼の速度に敵うはずもなく。
『よし! いいぞ!』
『えげつねぇ〜wwwwwwwwwwww』
『しっかし、鬼系ってSランクでもこんなにアホなんだなw』
『それな? ヴァリアンのことを阻止できないってわかったなら、今度は自分もヴァリアンの仲間を狙うとかあるだろ?w』
『ずっと頑張って追いかけてて草wwwwww』
5分後、全ての回復系魔物を撃破することに成功した。
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