表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/95

第93話 黒幕③─鬼切丸─


   1


「貴様、なぜ生きてる!?」

 師仲は自分が殺したと思っていた義朝に声をかけた。

「奇跡が起きたんだよ」

 鬼切丸を構えた義朝は、自信満々に答えた。

「ほーう。で」

 師仲は頼朝の方を向いて、

「そこの小僧は誰だ!? 名を名乗れ」

 と聞いた。

「私は源義朝が三男頼朝。父に助太刀しに来た」

 淡々と名乗った頼朝は間髪入れずに鬼切丸を振り、また無数の白金の礫を放った。

「ってなわけで、お前にはこいつらと戦ってもらう。白虎の力と鬼切丸の覚醒者二人。さすがに幻獣の力を持つお前でも三人を相手するのは辛いだろうからな。俺はここらでおさらばするぜ。何かあったら出る」

 頼政は戦線から離脱した。


「これが、鬼切丸か」

 義朝は持っていた鬼切丸の刀身を見た。

 頼朝のそれと同じように、長さは刀身は六尺ほどで、峰には白銀の鱗がびっしりついている。見た目よりも軽く、手になじんでいる。

 ──まさかのきっかけで自分も持てるようになるとはな。

 若い頃に持った時は、何の変哲もない大太刀であった。持ち主を選び、選ばれし者は天下に名を轟かすとは聞いていたが。自分はその器ではないとは思っていた。だが、再び世界を動かす力が戻ったことにより、鬼切丸は自身を持ち主に選んだ。おかげで地割れの中から出ることができた。

(しまった)

 殺したはずの義朝が生きていて、それも鬼切丸の力に覚醒していた。そして鬼切丸の使い手がもう一人いる。想定外の事態が起きたことにより、師仲は動揺していた。

 鬼切丸をこうして使いこなしているということは、中の白龍が義朝が自分と同じように神通力が使えるということ。どんな力を使うのかはわからないが、まだ目覚めたばかりだから、力自体はさほどの脅威にならないだろう。が、一番は鬼切丸である。見たところ折れて二つに別れたのであろう。それでも、白龍の魂が宿った神の刀。斬撃と同時に、白金の礫を飛ばす以外にも火焔や雷撃などの攻撃をしてくることだって考えられる。

「死ね、師仲!!」

 義朝と頼朝は息をぴったり合わせ、鬼切丸で宙を斬った。斬撃とともに現れた白金の礫の雨が、黄龍そのものとなっている師仲の肉体を貫いた。


   2


「やったか!?」

 義朝は土煙の彼方へ消えた黄龍の師仲の方を見た。

「いや、奴はこれだけでは死なない」

 同じく倒された黄龍の師仲の方を見て、頼朝はきっぱり言い切った。

「何だと!?」

「倒し方があります。奴は幻獣や神仏の力を使う使い手。ああいうのは、心臓部分にある核を破壊しなければ……」

 殺せない。そう言おうとしたとき、土煙の向こう側から、

「そうだね。君の言う通りだ」

 師仲が現れた。が、その姿は龍になる前の人間のそれとは違う。体は人間形態をベースにしている。だが、彼の人間形態とは違うのは、龍の角が生え、目は爬虫類の冷徹なそれであることであろうか。人間と龍の特徴を持った生き物……。名前を仮に付けるとすれば、半人半獣という意味で半獣態という言葉が相応しいだろうか。

「小回りが利く人間の大きさ。獣や魚、鳥、虫が持つ腕力や脚力。半獣態は動物や幻獣の力を使う者たちにとって、攻防いずれにも優れた形態。これでお前たちは勝ち目は無くなった。元八咫烏の大烏を舐めるなよ」

「それはわかんねーだろうが」

 鬼切丸を構え、義朝は半獣態となった師仲に斬りかかった。

「愚か!!」

 師仲は結界を張った。

「どうすればいいんだよ、頼朝」

 慌てながら、義朝は聞いた。この神通力を持った者たちが使う結界にはいい思い出が無い。為朝を取り逃がしたときも、彼に負けたときも、この謎技術である結界のせいで失敗したり、負けたりしている。

「父上、鬼切丸には白龍が封じられています。その白龍の結界を貼って、奴の結界を中和してください」

「わかった」

 鬼切丸を構え、義朝は半龍半人となっている師仲へと突っ込んだ。

「させるか!!」

 師仲は手を出し、気を結界に集中させた。

(頼むぞ、鬼切丸)

 義朝は鬼切丸を構え、結界を張れ、と心の中で命じた。

 その瞬間、義朝の周りを透明なバリアが覆った。

「これが、結界か」

「そうです」

「このまま行けばいいんだな」

「はい」

 鬼切丸の結界を張ったまま、義朝は師仲へと向かった。

 互いの結界はぶつかり合い、干渉を続ける。

「神の力を手に入れたばかりの貴様と、その力を持ちつつも何年も磨き続けた私。どちらのが強いかは、考えずともわかるであろうが!!」

 立ち向かう義朝の結界を押すべく、師仲は力を強めた。

 押し返され、吹き飛ばされる義朝。

「無理だ!!」

 弾き返された義朝は、痛々しそうに弱音をこぼした。

「やはり、まだ練度が足りなかったようですね。力を貸します」

 頼朝は自身の気と鬼切丸の中にいる白龍の力が籠った強力な結界を張った。

 頼朝の結界は、師仲の結界を侵食し、突破口を開いた。

「今です」

 目で頼朝は合図した。

「ありがとうな!!」

 義朝は再び結界を張り、また師仲へ挑もうとした。

「クソガキめ!! 強力な結界を破って来やがったか」

 苦い顔をした師仲は深呼吸をし、吸った空気を吐いた。

 吐いた息は真っ赤な炎となり、義朝を焼こうとした。

「こんな炎怖くも何ともねぇ」

 そのまま突き進む義朝。鬼切丸は師仲の吐いた火焔の気を吸い、突き進んでいく。

「何!?」

 今まで冷静だった師仲は、狼狽の表情を浮かべた。まさか、鬼切丸をここまで使いこなすとは。

(接近戦ともなればこれしかない)

 師仲は手刀を作り、気を一点に集中させた。片方には近くにある鉄を纏い、錬成して刀とした。

「これでお前と戦える」

 火焔を纏った鬼切丸を構えた義朝は、そのまま斬りかかった。

 鉄の手刀を持った師仲は、鬼切丸の一太刀を防いだ。

(熱い。そして何て馬鹿力だ)

 刃を交え、師仲は思った。頭は足りないが、力の方は馬鹿みたいにある。このまま真面目に彼のペースでやっていては、間違いなくこの腕が取れる。まあ、大地の力でいくらでも再生できるから一応大丈夫ではあるが。

(何だか、力が抜けていくな)

 同時に、師仲は問題は身体中の気が鬼切丸へ吸われている感覚がずっとしていた。このまま気を吸われていけば、再生にも影響が出てくる。

「どうした!? もう刃がダメになってるみたいだな」

 手を即席の刀にして防御している師仲の腕を見て、義朝は言った。

 日本刀は精錬された良質な玉鋼を何度も打ち、形にしていくことで出来上がる。その過程で鉄に結び付いている不純物を取り除くことで、強度も切れ味も最上級の一品となる。だが、彼が即席で錬成したそれは、素人が作ったナマクラ、いや、それ以下の最下級の粗悪品。刀の形をした切れ味のいい鉄の棒でしかない。

 同時に鬼切丸を伝って、強力な気が流れ込むのを感じる。このまま斬り上げて、核がある逆鱗を突こう。

 師仲のパワーが入り込んで勢いづいた義朝は。力を込めて師仲の鉄の腕を斬ろうとした。

(まずい、このままでは腕が斬られる)

 そう読んだ師仲は、念力を発して義朝を吹き飛ばした。吹き飛ばした後、周りの土や岩石を動かし、義朝を生き埋めにした。

「次は貴様だ、小僧!!」

 爪をきらめかせ、師仲は頼朝へと向かった。

「来るな!!」

 頼朝は念力を発し、師仲を吹き飛ばした。同時に彼の身体に種を打ち込んだ。

「何だ、この植物たちは!?」

「お前を足止めするためのものさ」

「こんな植物で私の力を全て吸い取れるとでも思ったか」

「少しでも吸いとれるならいい」

「こんな植物ごとき大したことは無い」

 絡みつく蔓を爪で払い、師仲は拘束を解いた。そして頼朝の方へと向かう。

 頼朝は鬼切丸の結界を張り、師仲の足止めをした。

「こんな結界ごとき」

 師仲は結界を張り、頼朝の結界を侵食して彼を爪で殺そうと思った。だが、先ほど気を吸われたせいか、思うように力が出ない。仕方ない。

(地の力を吸い取るか)

 これを使い、体力を回復させよう。そう考え、体力を回復させた師仲は、先ほどよりも強力な結界を張った。彼の結界は鬼切丸のそれを少し少し侵食していく。

(先ほどとは比べ物にならない。何て強さだ……)

 頼朝は防ぐのがやっとだった。先ほどの結界ですら手加減をしていたのか。

「わずか13、4の若造だが、念力に神通力、そして鬼切丸に選ばれてそれを使いこなすとは才のある小僧だ。が、辛そうではないか」

「今は父がいないから私がしっかりしなければダメだ」

「おまけに父思いか。いい少年だ。が、それだけではどんなに有能でも世の中やってけないよ」

 結界を破った師仲は、溶岩を纏った爪で頼朝を引っ掻いた。

 頼朝は鬼切丸で防ごうとしたが、師仲の爪の方が数秒早かった。

「ううっ……」

 痛みと熱で鬼切丸を手放し、頼朝は倒れた。手放された鬼切丸は、白金の龍の鱗を峰に纏った大太刀から、普通の三尺の太刀へと戻った。

(まさか溶岩を纏って攻撃してくるとはな……)

 黄龍の力には、土を操る力と同じことができると聞いている。また、龍の特性も併せ持っているので、火を吐いたり、空を飛んだりすることもできる。が、やはり幻獣の力は未知数。まさか富士の山などで見れる溶岩さえも表現できるのはわからなかった。

(熱くて、痛い。早く、鎧直垂と鎧についた火を消さないと)

 そう思い、引合わせの緒をほどき、身軽になって鎮火しようとした矢先に、

「君のような優秀な若者を失うのは惜しい。が、君は邪魔だ。ここで死んでもらおう」

 全身に溶岩を纏った師仲は、溶岩の球を作り上げ、放とうとした。

(私はもうここまでか……)

 頼朝は観念して心の中で念仏を唱えようとしたそのとき、一陣の強い風が通り抜けた。同時に砂埃や土砂も飛んで来る。

「まさか!?」

 そう思った頼朝と師仲は、義朝が生き埋めにされていた土饅頭の方を見た。

 先ほどまで土饅頭があった場所には、隕石や火球が落ちてきたときにできる大きなクレーターのような穴が開いていた。その中心には鬼切丸を構えた義朝の姿があった。

「させねぇ!! 絶対に!!」

 義朝は鬼切丸を力強く構え、土と溶岩の龍の魔人と化した師仲をキッと睨みつけている。

引合わせの緒......鎧を結ぶ紐。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ