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第87話 決着②─顕現─


   1


(あれが、平将門か⁉)

 正清は固まった。

 片方の目に二つの瞳孔。溢れんばかりの邪悪な気。睨み付けられただけでもくらりとしてしまいそうな凄まじい威圧感......。先ほどの弱い清盛とは、何もかもが違う。

(落ち着け)

「時を止める」といっても、強力な結界で自身を守れば無効化できる。攻略方法については、手を当てて熱を放射させるか、刀に磁力をまとわせ、くっついた砂鉄の斬撃を放ち、相手の視界を奪ったところを斬りつけるかの二つに一つ。だが、一つに絞ってやると確実に将門は結界で防御をしてくるであろう。ここは合わせ技でやるしかないか。

 深呼吸したあと、正清は先ほどまで平清盛であった武者に、

「貴様、平清盛ではないな」

 と問いかけた。気を集中させて結界を張る準備も並行しつつ。

「正解」

 先ほどまで平清盛であった武者、平将門はうなずいた。そして手をかざし、止まれ、と一言。

 飛び交う矢、斬りかかる雑兵が持つ打ち物の白刃……。全てが静止している。

 将門は近づき、先ほど清盛の持っていた小烏丸で正清の首を取ろうとした。が、正清は持っていた刀で一撃を防いで、

「将門か?」

 と聞いた。

「いかにも」

 不敵な笑みを浮かべ、将門は名乗った。

「私の時を止める力を防いだことは評価しよう。が、弱い」

「ほう」

 納刀し、正清は印を組んで呪文を詠唱した後、将門の前に手を出した。

 鎧を縅す紐が、触れることなく煙と焦げくさい臭いを上げる。

「触れずに人を焼き殺せるか」

 ひとまず将門は退いた。

(この調子だ。このまま力を高めてやっていくしかない)

 自身の力について未知であると察した正清は、力を高める呪文を唱え、磁力を高めた。徐々に高くなっていく磁力。気が付けば彼の周り一帯に赤気オーロラが立ち上っている。

赤気しゃっきを出すか、面白い」

 不敵な笑みを浮かべた将門は、小烏丸を変化させた。峰が赤い鱗で覆われた小烏丸は、赤い火焔を常に纏っている。

(無傷では済まなそうだな)

 正清は出力最大の電磁波力の二割を結界へ流した。これで結界の強度を上げ、将門の一撃から何としても身を守らねば。そして、体にある全ての気を集中させて将門を倒す!!

「出力8割、磁力焼殺波」

 正清は全力の8割を費やした電磁波殺人光線を放った。

「これは少しマズいな」

 将門は結界の強度を上げた。

 結界は正清の殺人光線を何とか防ぐ。

(いける!)

 このまま照射を続ければ確実に傷をつけられる。問題はここで気を切らしてしまわないかということだが。

「小烏丸の火龍よ、出力をもっと上げろ」

 そう言って将門は、片手に持っていた小烏丸を天高く掲げた。

 小烏丸に纏わりつく火焔は次第に大きくなり、天をつくほどの巨大な火の竜巻となっていた。

 将門の張っていた結界が壊れた。

「熱い」

 煙を上げてもなお気にすることなく将門は熱さに耐える。

(このまま照射を続ければ確実に傷を、いや、運が良ければ勝てるかもしれない)

 正清は照射を続けた。

 が、全力の攻撃には、エネルギー切れが付きもの。将門の体に火をつけ、火傷を負わせたところで正清の気が切れた。

「哀れだな」

 将門は水たまりの泥水で消火し、再生能力を駆使して正清が与えた火傷を瞬時に治した。そして小烏丸に渦巻く火焔の竜巻を放ち、力尽きて呆然とする正清の方へ放った。

「小烏丸奥義一の秘剣、黒縄火旋風」

 正清の四肢は炎の混じった斬撃で切り刻まれ、全身に大火傷を負った。

 虫の息となり、真っ黒になって原形を留めていない正清に、清盛に顕現した将門は、

「貴様は強い。先ほどは弱いと言って申し訳なかった。この将門に火傷を負わせたことを誇れ、秀郷の末裔」

 と言い残し、義朝の元へと歩いて行った。


   2


「さてと、楽しみは済んだ」

 正清との戦いを済ませたあと、将門は時間停止を解いた。止まっていた矢は再び動きを取り戻し、次々と五条河原の戦場を飛び交う。

(そろそろあいつに戻ってもらうか)

 将門は肉体の主導権を清盛に戻そうと考えていた。まだ完全に力は戻っていないうえ、彼の野望を達成するには、器の主である清盛に生きてもらわねばならない。本当は助けたくも何ともない。が、こうした事情があるので、渋々清盛の心と体を守らねばならない。また、この戦いは清盛と友のこと。自分の出る幕ではない。

(でも、久しぶりに表に出たわけだし、一暴れしてやろうではないか)

 そんな思いもある。久しぶりに現世うつしよへ顕現できた。先ほどの異能の者との戦いで久しぶりに楽しめたが、まだまだ余裕はある。誰か自分に勝負を挑みに来る者が出て来ないだろうか。

 また戦いたくてうずうすしている将門のところへ、

「平清盛、覚悟しろ!! 俺は源義朝が長男悪源太義平だ‼」

 と叫びながら、日に焼けた肌が特徴的な青年が、体格に不相応な大剣を軽々と大上段に構え、清盛の、いや、正確には彼の身体を使ってこの世に顕現している将門を目掛けて斬りかかった。

「面白い奴が来たぞ」

 刀を構え、笑みを浮かべた将門は、義平の勝負に応じた。

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