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第45話 偽源氏軍の六波羅襲撃事件③─平教盛参上!─


   1


「1人2人乱入してきたところで何も変わらん。やっちまえ!」

 偽源氏軍の部将の一人は、号令をかけた。

「怪我したくなかったら、さっさと逃げな」

 迫りくる偽源氏軍団に教盛は立ち向かった。

 飛び交う白刃を器用によけ、次の一撃を放とうとするところでできる喉元や股間などの隙を狙い、拳打や蹴りを入れていく。必要によっては指で目つぶしをしたりしながら。

 先ほどまでは討ち取ろうと躍起になっていた偽源氏軍団の兵士たちは、教盛の拳打や蹴りを受け、あまりの痛みに起き上がれなくなっている。起き上がれないのも無理はない。彼らは人体の急所に一撃をうけているのだから。

「何なんだ、あいつは」

「徒手空拳のわりにはあまりにも強すぎる」

 一瞬のうちに素手で10人を戦闘不能にした教盛の拳打や蹴りに圧倒された偽源氏軍の兵士たちは、あっけに取られている。

「おっと、どうした!? これでおしまいか?」

 余裕の笑みを浮かべながら、自分のことをポカンと見ている兵士に問いかけた。

 一同、部隊の体調と思しき大鎧を着た男が、

「お前ら、ポカンとしてないでやれ!」

 と言ったあとに、

「弓矢隊、矢を放て!」

 と命令をした。

「借りるぜ」

 教盛は斬り殺された武者から薙刀を奪った。

 偽源氏軍の一斉射撃が、教盛を目がけて

 教盛は薙刀を風車のように回し、自分目がけて降ってくる弓矢の雨を弾き飛ばした。

 がむしゃらに撃っていたので、偽源氏軍団の矢が尽きた。

「くそ、矢が尽きやがったか」

 そう吐き捨てたあと、偽源氏軍の部隊長は、

「打ち物を持っている奴は全力でこの宋人もどきを討ち取れ」

 と命じようとしたが、急激に意識が朦朧としてきて馬から落ちてしまった。

 落馬した偽源氏軍の部隊長の目と目の間には、矢がぐさりと刺さっている。顔色は青白くなり、徐々に硬直していく。

「お返しだ」

 教盛はそう言って微笑んだ。

「おのれ、よくも部隊長をこんな姿に」

「そんなに欲しいか。なら──」

 お前にもくれてやるよ、と言って教盛は持っていたもう一本の矢をひょいと投げつけた。

 加速した矢は上官の仇を討とうとした一般兵の首元に突き刺さり、血しぶきの舞とともに倒れた。

「こんな大軍を率いて警備の少ない屋敷を襲うとか、武士として恥ずべき事じゃないのか? ちょっと大将を呼んで来い」

「そんなこと、誰がさせるか!?」

 薙刀を持った兵士2,3人が教盛の首を取ろうとした。だが、薙刀の柄を二等分、三等分され、斬る前に斬られてしまった。

 そこには2本の刀を両手に持った忠清の姿があった。

「久しぶりだな、教盛」

 襲いかかる偽源氏軍の兵士を片手の太刀二振りで切り落としながら、忠清は挨拶をした。

「忠清、久しぶりだな」

 敵を倒しながら、教盛は敵を倒していく。

「おう。すっかり唐人みたいになってしまってよ」

「まあ数日前に帰国したからな」

 久しぶりの友人との再会に教盛の心は弾んだ。

 敵の一撃を左手に持っていた刀で受け、右手の刀で思い切り喉元を突いた忠清は、刀を引き抜きながら、

「そういえば、清盛と盛国はどうしたよ?」

 と聞いた。

 襲い掛かってきた兵士の顎下に思いっきり蹴りを入れた教盛は楽しげに答える。

「あっちで倒れてる。下人らが今頑張って守ってるよ」

「そうか。姫様と二人の息子は無事だ。今家貞に守られて、東寺へと入った。家長は早馬で六波羅の屋敷へと向かうそうだ。あと、清盛と盛国のことは俺たちが守っておくから、行って来い」

「わかった。じゃあ、頼んだぜ」

 教盛は勢いよくジャンプし、築地の上の棟の上に飛び乗り、敵の本陣のある場所目がけて走っていった。

「謎の唐人が出たぞ、討ち取れ!!」

 突然の教盛の登場に、屋敷の外を囲んでいた偽源氏軍の兵士たちは、弓の弦を引き、矢じりの先を向けた。

「そうはさせるか!」

 教盛を討ち取ろうとしていたところで、家貞や家長らの軍勢が加勢に入った。

 大鎧を着、馬上で戦っていた家貞は、

「おお、唐人かと思いきや、これは教盛様ではありませぬか」

 3年ぶりの再会を喜んだ。

「家貞、久しぶりだな」

「遠路はるばる、よくこの京都へやって参りました」

「悪いが、奴らの本陣はどこにある?」

「忍者部隊の報によれば、鴨川の南と聞いております」

「わかった。今から行ってくる」

 教盛は戦場の合間をダッシュし、敵の本陣へと向かった。敵と戦ったりしながら。途中で清盛の屋敷へと向かっていた家長らの軍勢50人と合流し、彼に事情を説明したあと、偽源氏軍の本陣へと突っ込んだ。


   2


 ──今ごろ平家方は大混乱の渦に巻き込まれているだろうな。

 楽しげに六波羅清盛邸襲撃部隊の総指揮官をしていた時兼は、うきうきとしながら清盛や平家一門に重きをなす一族の首品がやってくるのを待っていた。もしこのまま清盛を討ち取れば、自分は侍所の長官、いやもしくは貴族になれたりして。

 玉虫色の妄想をしていたところへ、

「よう、お前が源氏軍の大将か?」

 返り血で真っ赤になった教盛がやってきた。

「誰だ、お前!?」

「俺か? 俺は平忠盛の四男教盛ってんだが?」

「そうか。我が名は伊豆国北条の領主で、坂東平氏の血を引く北条時兼」

「源氏軍の討手の指揮官だか知らねぇが、オッサン大して強くないだろ? 退くなら今だぜ」

「そ、そんなわけ、ない。い、いざ、尋常に勝負!」

 時兼は震えながら、一の矢を放った。

 俊敏な動きで教盛は避け、

「バカには何を言ってもわからないか」

 教盛は姿勢を低くし、掌底を突き出した。

 先ほど教盛が避けた矢は、河原の砂利に深く食い込んでいる。

 二の矢をつがえ、時兼は教盛を撃とうとした。

 教盛は身をよじり、矢をよけ、2年間老師の元で修行を重ね、習得した奥義を教盛は放った。

「こんな距離から打撃を入れるなんてできるのかよ?」

「さて、それはどうだろうな?」

 奥義をまともに喰らった時兼は、血反吐を吐きながら、10メートルほど離れたところに生えていた木に吹き飛ばされた。気を失い倒れていた時兼が着ていた大鎧の腹部には、大きな風穴が開いている。

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