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第36話 後日談①─再会─


   1


「眩しいな……」

 目を覚ますと俺は、寺の僧房の中にいた。

 正清、祐継、景義、時兼。見慣れた同志たちの顔がそこにはあった。

「みんな、義朝が目を覚ましたぞ!!」

 いつもの落ち着いた感じに似合わぬ高い声で、正清は叫んだ。いつも暗い表情も、このときは喜びに満ちた優しい表情になっていた。

「心配してました」

「良かったなぁ」

「よかったよかった」

 泣きそうな顔、ほっとした顔、うれしそうな顔。三者三様の表情で、景義と時兼、祐継らは俺の手を握った。

「みんなありがとう!」

 そう言って俺は手を握り返したとき、

「俺を忘れてないかい?」

 という声がした。

 振り向くと、そこには正清の父通清の姿があった。

「やあ、義朝くんとお仲間たち」

 正清の父通清が僧房にやってきた。

「お前誰だよ?」

 いぶかしげに時兼は30後半の中年男に聞いた。

 少し申し訳なさそうに正清は、

「俺の親父だ」

 と紹介した。

「どうも、正清の父です」

 手を不利ながら通清は仲間たちにあいさつをした。

「なんだ、親子かよ」

「君は伊豆に住んでいるそうだね」

「お、おう」

「隣だから、何かあったときに世話になるかもしれないね」

「おう、任せておけ。この北条時兼は伊東祐親の邸宅に──」

 時兼の自慢話を遮り、俺は、

「それで、なぜ通清殿ははここに?」

 と聞いた。

「コラァ! 人の話は最後まで聞かんかーい!!」

 突っ込みを入れる時兼。

 通清ははっとした顔になり、

「おお、そうだった。私がなぜここにいるのか話さなければいけないのだった。それはね──」

 と語り始めた。


   2


 通清の話はこうだ。

 俺が大庭景親と戦ったと聞いたものだから、通清は俺に加勢をすべく兵を挙げた。だが、駆け付けた時にはすでに戦いが終わっていた。どうしたらいいものか、と考えているときに、同じく遅れてきた熱田神宮が送ってきた援軍がやってきて、その神人の一人が、

「立派な胴丸の鎧を着た少年と小具足姿の少年が血まみれになって倒れているのを見つけた」

 と言ってきた。

 報告してきた神人に道案内をさせ、俺が倒れているところまでやってきた。

 念のため、どちらが俺なのかを確かめるため、顔を知っている神人に確かめさせた。

 お互いの血を拭いた。顔を見て、神人は鎧を着た方が俺だということがわかった。そしてそのことを通清に伝えた。

「息は、あるか?」

 そう通清は聞くと、神人は、少しなら、と答えた。

「なんだって!? 早く義朝を安全な場所へ運べ! 手当だ!!」

 通清は気絶していた俺を郎党たちに運ばせ、この僧房に運ばれたという次第だ。


   3


「なるほどな」

 通清と岩倉で戦った熱田神宮の神人の話を聞いて納得していた俺は、

「助けてくれて、ありがとう」

 と言って手を握った。

「いえいえ」

「神人にもこのことを伝えてやってくれ」

「はいよ」

 通清がうなずいたあと、廊下から騒がしい足音が聞こえた。

 足音のする方を見ると、松葉杖をついた包帯グルグル巻きの広常がやってきた。

 広常は嬉しそうに言う。

「何、義朝が目覚めただと!?」

 声が大きいので、少しびっくりした。目覚めたことを祝ってくれるのはうれしいけど。だが、同時に、あのとき死んだはずなのにどうして生きているのか? という疑問が湧いてきた。地面の奥底へ落ちようとしていたとき、広常はつき飛ばして俺を守った。その瞬間を俺はしっかり見ていたのに。

「広常、なぜ生きてる!?」

 生きている理由について、俺は聞いた。

「生きてる? 何をおかしなことを言ってんだ?」

「お前、あのとき死んだはずじゃ!?」

 死んだところを俺は確かに見た。

「死んだ? 何を言っているんだ。まあ、お前を守ったのは事実だがな」

 はははっ、と笑い飛ばしながら広常は答えた。

「おう、義朝。目覚ましたか」

 頭に包帯を巻いた義明がやってきた。

 義明もあのとき死んでいたはずだ。五郎の操る土の兵士たちに囲まれて。直接見てはいないが、倒れているところはしっかり見ていた。

「義明、お前も生きてたか」

「おう。土の兵隊にやられてしばらく気を失ってしまっててな、目が覚めたときには、戦いが終わっていた」

 少し照れくさそうに、義明は生存したことを語った。

「何がともあれ、みんな生きていてよかった」

 俺が見たものとは違う。けれども、みんなこうして生きているというだけでも、うれしい気持ちになれる。

「よーし、こうなりゃ宴会だ!!」

「ダメです。まだ義朝くんは目を覚ましたばかりです。安静にさせてやらないと」

 目覚めた報を聞いてやってきた医僧は、落ち着いた口調で言い放った。

「何なんだよ堅物坊主が」

「宴くらいいいだろ」

 子どものようなオッサンをまともに相手することなく、医僧は俺の手首に手を当て、脈をとった。

 医僧からは、

「かなり疲れているようだから、しばらくの間はここで安静にしていなさい」

 と言われた。

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