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第28話 鎌倉奪還戦争④─景親の居場所を暴け!(前編)─


   1


「貴様が武田か? 俺が源義朝だが、何の用だ?」

「貴様らが神聖なる鎌倉を汚す義朝の一党のようだな」

「違う。俺たちは囚われた仲間を取り返しに来ただけだ」

「ほう」

 甲斐国の住人で自称「源氏の正当後継者」に、景義の行方について聞いた。

 清光はしばらく黙ったあと、

「さあね」

 と小馬鹿にする口調で答えた。

「それなら力づくで……」

 刀の柄に手をかけ、俺は清光を斬ろうとした。

 だが、隣にいた正清に、

「辞めとけ。こいつと戦ったら、ここにいる俺たちは全員壊滅してしまう」

 と制止させられた。いつも白い正清の顔が、このときは不気味な青白くなっていた。

「お前には鉄を引き付ける力があるのに、どうしてこの男と戦わない?」

「義朝。力には相性っていうものがある。仮にここでこいつと戦っても、勝負がつかない」

 自信の無い口調で、正清は俺の口調に答えた。

 清光は自信満々な笑みで、俺たちに返す。

「君の郎党の言う通りだよ。源氏の『大将』。仮にここで私と君の郎党が戦っても決着がつかない」

「んなもん、やってみなきゃわかんないだろうが」

「頭の悪い大将だ」

 イラついた口調で信光は言い、手刀を虚空に切った。

 すると突然ものすごい風が吹いて、血しぶきとともに目の前にいた何人かの兵士たちが首だけの状態になった。俺の周りは血で真っ赤になった兵士たちの屍と首が散乱している。

「これで、わかっただろう」

 このとき俺は、人生で初めて圧倒的な異能ちからを目の当たりにした。前に義明が、

「武田一族の当主は代々風を操る力を持っている。そんな人間離れした奴らと戦えるかってんだ」

 と言っていたことがあった。

 最初この話を聞いたときは、権威付けのために吹聴していた嘘だろうと思っていた。だが、今この場で、清光が手を振っただけで、かまいたちのような人の体に傷をつけられる威力を持った起こしたのを見て、義明が言っていたことが嘘でなかったことを知った。今ここで信光にたてつくような素振りを見せたら、自分も確実にこうなる。そう考えると恐怖で体がすくんで動けない。

「大将を名乗るなら、せいぜい自分の力量を見極められるようにならないとな。まあ源氏重代の太刀である鬼切丸があれば、私に手傷の一つや二つ負わせられるのに。持っていないところを見る限りでは、君にはその資格が無かったということか。というわけで、お前たち全員ここで死んでもらおう」

 再び清光は、先ほど前列にいた数百人の兵士を一気に殺した風を出すため、手刀を振ろうとした。振ろうとしたそのとき、

「義朝、武田殿辞めてくれ」

 正清が俺と清光の間に入ってきた。

「なんだ。君も私に歯向かうというのか? 見かけと態度よりも聞き分けの悪いやつだ。君はあのバカ大将よりも話のわかるやつだと思っていたのだけどね」

 清光は、やれやれ、と言いたそうなで、顔ため息を一つついた。

 正清は首を横に振った。そして、交渉を切り出してきた。

「ほう。いいだろう」

 先ほどよりも覇気のある声で、清光は話し合いに応じた。

 正清は先ほど吸収した赤金丸の異能の籠った人型を出して、

「先ほど義明が殺した異能の者から奪いし力をお前にやろう。その代わり、俺たちを攻めないと約束してくれ」

「わかった。今回は見逃してやる。正直あんなクソガキ集団に付き合ってられない。次こそは、容赦しないからな」

 そう言い残し、清光は自軍を率いて去っていった。

「はぁ……」

 ため息を一つ、俺はついた。

 もし義明が赤金丸を倒していなかったら、正清が戦闘ではなく交渉を選んでいなかったら、間違いなくみんなここで清光の起こす風でなます切りにされていた。


   2


「そういえば、景親のやつら、どこにいるんだ?」

 武田の軍勢が去ったあと、俺は正清に聞いた。

 先ほどからこうして景親の屋敷を攻めているわけだが、総大将である景親がいる気配がどこにもない。

 でも、由比ヶ浜に兵力を残存させておいたり、由比若宮の近くにあるこの屋敷や、亀ヶ谷の坂に兵力を配置したりしていることだから、景親がここ鎌倉にいることは確かだ。夜逃げしているとなれば、このようなことはまずない。一体景親はどこにいるのだろうか? 

「俺もよくわからない。だが、亀ヶ谷を守っていた秩父重隆を討ち果たしてこっちへ向かっているとき、一瞬だが、景親の屋敷方面に大庭家の家紋が入った旗を見た」

「何だと!?」

 景親がここにいる。そんなことはまずあり得ない。げんに姿かたちが見えないのに、どこにいるというのだ。

「もしかしたらだが、景親はこの屋敷かにいるかもしれない」

「そんなわけあるか。げんにあいつの姿かたちがどこにも見当たらないじゃないか?」

「まあな。でも、可能性はある。それに賭けてみないか?」

「いるとしたら、どこにいるんだよ」

「考えられるとしたら、屋敷の隠し部屋か、もしくは結界の中」

「結界って、意味が分かんねぇよ」

「ある特定のモノを寄せ付けないための空間さ。例えば、神社の鳥居とかあるだろう? あの中だ。あれを神社のそれよりも強いものを貼っていると考えればあり得なくもない」

「なるほど──」

 つまりは、邪魔な何かを遠ざけるためのものということか。

「とにかく、みんな。屋敷の中を徹底的に調べよう。その過程で目ぼしい出入口や呪符、仕掛けを見つけたら言ってくれ」

「呪符ってなんだよ。それと、仕掛けって」

 門の前で見張りをしていた義明は聞いた。

「例えばそうだな、『急急如律令』とか、よくわからない文字みたいなものが書かれた紙片だったり、庭にある石が四角形や五角形を成していたりしたら、教えてくれ」

「あいよ」

 見張りを祐継に任せた義明は、結界の元となっているであろう石や呪符を探しに向かった。

 俺たちも今ここにいる者たちと力を合わせ、呪符や特定の形に並べられた石を探した。

 母屋の縁の下や屋根裏、蔵の中にある俺たちは景親の屋敷の隅から隅まで調べ尽くした。だが、結界の元となっている呪符や特定の形に並べられた石はなかった。あったのは石造りの灯篭や南北の門に縛ってあった注連縄くらいだった。

 探した結果について、俺は正清に報告した。

 正清は頭を抱えながら、

「おかしいなぁ……」

 ため息をついた。そして、

「石造りの灯篭があったそうだが、それは南北の門の手前にあるだけか?」

「ああ」

「なら、普通の石灯籠の可能性が高いな」

「そうか」

 やっぱりそうだ。いくら石でできた灯篭が南北二つの門にそろって並んでるからといって結界と決めつけるのは、こじつけが過ぎる。

「一番怪しいのは、門にあった注連縄だ。念のため、石灯籠も破壊する」

「わかった」

 俺と正清は注連縄を切り、石灯籠を破壊した。だが、それで何か変化があるわけでは無かった。


   3


「何も、起きないぞ」

 注連縄を切っても、攻城の際門を破壊するために用意していた鉄製の槌で、石灯籠を破壊しても何も変化が起きなかったことに、俺たちは呆然としていた。

「狙いが外れることはよくあること。特に俺のようなまだ力を完全に使いこなしていない人間はな」

「そんなこと言うなよ」

 何の力もない俺からしてみれば、正清は十分すごい力を持っている。

 鉄を引き付ける力を使って忍者を倒したり、義明の矢を無効化したり。それで俺は何度も命を救われた。

「結界を使ってないとなると、姿を消す術を使っている可能性が高い」

「姿を消す術? 何だそれは?」

「敵に自分たちの姿を認識させないようにする術だ」

「そんな術あるのかよ……」

 何でもありな術者の世界。話があまりにも飛躍しすぎて、どう返したらいいかわからない。

「ある。かつて平貞盛が将門と戦っているときに使ったとされている陰陽道の秘術だ。今考えてみれば、景親の周りには異能の力を持つやつらが多いから、その力の使い方についてよく知っている僧侶や陰陽師、神官、巫女が使っているのだろう」

「ほう。破る方法は?」

「術者を殺す。それしかない」

「なら、その術をかけている誰かをぶっ殺してしまえってことか。話が早い」

 俺はすぐさま動ける者たちを率いて、術者を殺しに行こうとした。だが、正清に引き留められた。

「なんでだ?」

「術者が術を使っているとき、お前らのような普通の人間が倒す、いや認識するのはのはまず難しい。そこで、これの出番だ」

 腰に下げていた巾着袋から、正清は鳥の形をした紙人形を取り出した。

「何だ、それは?」

「まあ見てろって」

 正清は鳥の形をした紙人形に向かって小さな声で呪文を唱えた。

 呪文を唱えたあと、鳥の形をした紙人形は、長い尾を持った赤茶色の山鳥へと姿を変えた。

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