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2:メスガキはスキルを選ぶ

「もー、乱暴すぎないあれ!」


 アタシは大声をあげながら街を歩く。


「聖女じゃないから追い出すとかあの皇子サイテー!」


 オルスト国の首都、オルストシュタイン。この<フルムーンケイオス>の始まりの街。これでもかというほど大きな城と、そして先ほどまでアタシがいた神殿。そしてそれを中心に広がる街並み。


 その神殿から続く街並みを歩きながら、アタシは大声をあげていた。


「ったく。何が『聖女』よ。強いけどレベルアップが大変な苦行の道じゃない。

 あーあ、あの子かわいそう」


 一緒に召喚されたんだろう女の子――結局名前も聞けてなかったけど――のことを想いながらため息をつく。聖女は強いのだが、レベルアップに必要な経験点が他ジョブより多い。レベルが上がらなければ、スキルもろくに覚えられない。大器晩成型だ。


「ま、アタシには関係ないもんね。折角の遊び人だもん。こっちでも楽しまなくちゃ」


 ――あの後、何度も夢なら覚めないかと頬をつねったり長い間目を閉じたりしたけど、やっぱりこれは夢じゃないんだと理解した。どこかのアニメとかである転生とか転移とかそう言うものなんだなー、と思う。


 ここが<フルムーンケイオス>の世界で、アタシはそのゲーム内に召喚されたのだ。自分で言っててなにがなんだかなんだけど。


 ……実はトラックに轢かれて醒めない夢を見てるんじゃないかとも思うけど、それならそれでもうどうでもいい。騒いでも何しても状況が変わらないなら、この状況を受け入れるしかない。


 そんな葛藤を乗り越え、アタシは目の前の現実に思考を切り替えた。この<フルムーンケイオス>のキャラ育成で最も重要な部分をやらなくちゃ。


「んー……じゃあ、あれ言わないと出ないのかな? 『ステータス』」


 アニメで見たことを言ってみる。すると<フルムーンケイオス>のゲームっぽく、ステータス画面が開いた。スマホみたいにフリックして操作できるようだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


★アサギリ・トーカ


ジョブ:遊び人

Lv:1 

HP:5/5

MP:4/4


筋力:2(+1)

耐久:1(+1)

魔力:2

抵抗:1

敏捷:2

幸運:12(+3)


★装備

ナイフ

派手な服


★ジョブスキル(スキルポイント:50)

なし


★アビリティ

なし


★トロフィー

なし


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


<フルムーンケイオス>は筋力が武器で殴った攻撃力になり、魔力が魔法を使ったときの攻撃力になる。物理防御は耐久になり、魔法防御は抵抗。敏捷が高ければ攻撃そのものを避けられる。幸運は高いとバッドステータスにかかりにくくなったり、クリティカルヒットしやすくなる。


 遊び人は幸運特化。20ポイントの初期能力値が幸運に集中している。筋力2とかだと、皮鎧を着た軽戦士にすらろくにダメージは通らない。


 カッコの中の数字は装備品の補正。ナイフと派手な服は遊び人の初期装備。


「うーん。派手かなぁ?」


 アタシは改めて自分の格好を見る。

 髪型はツーサイドアップ。身長は130センチを少し超えた程度。ピンクのシャツにミニスカート。ソックスとフラットなシューズ。

 アタシとしてはフツーの服だけど、装備品としては派手な服らしい。


 そう言えば、通り過ぎるオトコの人達がちらちらと、やーらしい視線でこっち見てる。太ももとか、おへそとかそう言うのをチラ見してた。手を振ってあげると慌てて顔を逸らして去って行った。ウケる。


 装備品はどーでもいいのよ。メインはスキル。ジョブスキルを選択して、そのウィンドウを開く。スマホみたいに指先で触ったら内容が表示された。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


★スキル所得

<共通>

【筋力増加】:10

【耐久増加】:8

【魔力増加】:10

【抵抗増加】:8

【敏捷増加】:7

【幸運増加】:5


<遊び人専用>

【笑う】:5

【着る】:5

【買う】:5

【食う】:5

【遊ぶ】:5


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 スキルは全ジョブが持っている能力増加系と、そのジョブが持つジョブ専用スキルの二種類。横に書かれた数値は所得に必要なスキルポイントの係数ね。


 レベルを上げるのに『次のスキルレベル×係数』のスキルポイントが必要になる。例えば【筋力増加】だと、係数が10なので1レベルにするのに10点。2レベルにするのに『2×10』で20点。なので一気に2レベルまで上げるなら、30点必要になるの。


 スキルの最大レベルは10。レベルが1上がるごとにもらえるスキルポイントが5点なので、レベル最大値の100になっても初期のスキルポイント50と合わせても550ポイント。


 仮に係数10のスキルをレベル10にすると、それでぴったり550ポイント要ることになるわ。なので計画はご利用的にっ! レベルアップ以外でもスキルポイントを得る事はできるけど、まあ今は関係ないので置いておくわ。


 能力増加系は、取ったスキルのレベルに応じて、能力値に補正がかかるわ。例えば戦士系なら【筋力増加】を取って攻撃力をあげるのが王道ね。それぞれのジョブに応じた能力値増加をあげるのがいい――というのは遊び人には当てはまらない。


「きまってるでしょ、こーよ!」


 アタシは指でウィンドウをタップしてスキルポイントを消費する。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


★ジョブスキル(スキルポイント:0)

【笑う】:Lv0→4


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【笑う】一点集中! これ一択よ!

 スキルポイントに限りがあるんだから、能力増加系とかとってる余裕なんてないのよ!

 ファンファーレと共に、脳内にアナウンスが響いてきた。


<【笑う】がレベル2になりました。アビリティ【笑顔の交渉】を獲得しました>

<【笑う】がレベル4になりました。アビリティ【微笑み返し】を獲得しました>


「は、あん♡」


 同時に得体のしれない何かがアタシの身体をいじっていく。アサギリ・トーカが知らないはずの経験と技術がどろりと塗り込まれていく。初めての感覚に、体が震え、やだこれなに……。


 アビリティ覚えるのってこんな感覚なんだ……。よくわかんない何かがアタシの中をぐちょぐちょにして作り替えていく。知らない技を無理やり調教されてるんだ、アタシ。

 

(……クセになりそ)


 ……ん、落ち着いたわ。

 話を戻すけど、ジョブスキルを上げていけば2レベルごとに特殊なアビリティを得ることができるの。


 戦士なら高い攻撃力を持つ一撃の【スマッシュ】や武器で弾く【パリィ】とか。魔法だと、炎魔法を使う時に威力が上がる【炎魔法適性】や回復魔法の効果が上がる【慈悲の精神】みたいなの。


 こうやってジョブスキルを上げていくことで新たなアビリティを得て、攻撃方法を増やしていくのがこのゲームのレベルアップなの。


 で、肝心のアタシのアビリティだけど、


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


★アビリティ

【笑顔の交渉】:笑顔は交渉の基本。購入金額を『遊び人のレベル(最大30)%』減少させる。常時発動。

【微笑み返し】:殺気に対して笑顔を返す。相手に<困惑>のバッドステータスを与える。MP1消費。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


【笑顔の交渉】は説明文を読んでの通り、商人から物を買う時に安くなるの。ポーション類を安く買う時に便利なぐらい。こっちはまあ、オマケ?


メインは【微笑み返し】。<困惑>と呼ばれるバッドステータスを与えることができる。<困惑>は命中を低下させる精神系バッドステータス。ただし確実にかかるわけじゃない。ステータス次第では完全無効してくる敵もいるし、そもそも精神を持たない魔法生物とかには効かない。


「逆に言えば、全然抵抗できないおバカさんもいるのよね」


 アタシは笑みを浮かべる。


「さー、レベル上げに行きましょー!」


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