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友人に、嘘をつく
「なあ、山川、……好きな人、いるか?」
幼馴染みである伊藤の唐突な言葉に、鼓動が止まる。
解いていた数学の問題から、伊藤の方へと視線を上げる。ペンを回しながら窓の外をぼんやりと見ている伊藤の顔色は、普段通り。おそらく、課題が1問も解けないが故の現実逃避。
「いないなぁ」
小野寺のことだけは、隠し通さなければ。一瞬で、心を決める。小野寺は、伊藤の幼馴染み。互いに無意識に想い合っている二人の心を、乱したくない。
「サッカーやって、本読んで、勉強もやってたら、そんなこと考える暇なんて」
それだけを、なんとか口にする。
「そうだな」
僅かに口の端を上げた伊藤に、透は、課題を解き終わった自分の数学のノートを押しやった。




