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渡れません
全身の震えは、サシャのものかトールのものか。堀の向こうからこちらを睨む蒼い瞳から視線を逸らす。堀に架かる半分だけの石の橋と、日没後の風に揺れる斜めになった木製の橋桁を見張り窓から見やり、トールは首を横に振った。日没から日の出まで、帝都を守るために小さな跳ね橋を上げておくことは、黒竜騎士団の規則。たとえ団長でも、その規則を曲げることはできない。
「ダメですよ、バルト」
いつの間にかサシャの横にいた黒竜騎士団の副団長、フェリクスが、堀の向こうに声を張る。
間違っていることは「間違っている」と言う。その勇気も必要。サシャの肩を叩いて微笑んだフェリクスと、震えたまま頷いたサシャに、トールはほっと息を吐いた。




