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武装集団

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「旦那様。武装集団が向かってきています。まだ遠いですが、予想進路にこの軍施設が含まれています」


「武装集団って人間のこと?」


 ミュータントや殺人マシーンならそんなふうに言わないだろうと思いつつガレイが問う。


「はい。20名程度でございます。この軍施設周辺は私たちが来てからずっと旦那様の慣らしで狩りをしていましたので、ミュータントや殺人マシーンがいません。下手をすると、この周辺が安全だと気づいて拠点にされるかもしれません」


「……何かまずいのか?」


 殺人マシーンは壊れかけの物から武器弾薬の整った状態のいいものまでピンからキリまである。中には戦車砲やミサイルまであったりする。

 そんな中で状態の良い殺人マシーンをゴミくずのように扱うバイオロイドたちだ。人間程度が勝てるはずもない。

 ガレイにとっては野盗なら殺せばいいし、無害なら放っておけばいいくらいの感覚である。


「…………実を申しますと、この周辺は旦那様の拠点としようと思っていたのでございます」


「この軍施設が拠点だろ? ここなら壁にも囲まれてる」


「はい。この軍施設を『城』と見立て、周辺は『城下町』という区分にしようと思っておりました。そのために手間をかけて除染などもしていたのですが……」


「……は?」


(しろとじょうかまちってなんだ? というかこの軍施設だけあれば十分だろ。この施設だけでも持て余し気味なのに)


「つまり、旦那様を主とした『国』を作ろうということです」


「しろとじょうかまちとくにってなんだ?」


「……旦那様は私に出会うまで街という拠点に住んでいましたよね? とても簡単に言うと、街がとてつもなく大きくなったものが国です。城は国の偉い人がいるところです。城下町は、まあ普通の人たちがいるところです」


「…………いくらなんでも、この周辺って、具体的にどのくらいか知らんけどでかすぎでは?」


「国となると小さいくらいでございます。『農業』『畜産業』海も近いので『漁業』もしたいですので、そういった土地も必要になりますし」


「いや待って!? 海のほうまで周辺に入ってんの!? 思ってたより周辺が数倍デカいんだけど!?」


「それは国でございますから」


 また意味が分からない言葉が出てきたのもそうだが、あまりの広さに理解が追いつかなくなるガレイ。


「……で、武装集団をどうしたいわけ?」


 とりあえず国がどうのというのは放置することにした。


「どういった手合いかで変わってきます。野盗であれば殲滅になります。あとはこちらに従うかどうかで、受け入れるか追い出すかといったところかと」


「追い出す……。この超高範囲を独り占めするのは無理があるんじゃ?」


「私たちで駆除、除染をしましたし、もはや旦那様の土地と主張してよろしいと考えます。従わないのなら、危険分子となりえます。受け入れるのはやめたほうがよろしいかと思いますが」


 実はガレイはこの数日で覚えた便利な言葉がある。


「……良きに計らえ」


 これを言っておけば何とかなるという魔法の言葉である。

 でも割と暴走したりする諸刃の剣でもある。


「はっ! 承知いたしました。すべては旦那様のために! マリー! 形だけでいいので国を囲うように、重力制御で瓦礫や建物を押しつぶし圧縮して壁を造ってきなさい。大至急です。いけますね?」


「はい。ガレイ様のためならば」


 マリーが行った。


「ツクシ! 武装集団と接触してきなさい。少しでもこちらに危害を加えようとするなら、即座に殲滅しなさい。接触したらローカルネットワークでこちらにリアルタイムの映像を送ってください。殲滅以外の場合、どうするかは私が判断し、指示します」


「はっ! では、行ってまいります」


 ツクシも行った。


「ススキとヨモギ。あなたたちはここで私とともに旦那様の護衛を続けなさい」


「はい!」


「はいです」


 ススキとヨモギはここにいるようだ。


「なあ、武装集団って具体的にどのくらいの距離にいるんだ?」


「歩いて1日でこの国と廃墟との境界、国境につく程度、約30キロメートルほどの場所にいます。ちなみに、この国はこの軍施設をだいたいの中心として、国境まで短いところで約5キロメートル、長いところで約10キロメートル、面積は約5000平方キロメートルとなります。障害物を計算に入れなければ、歩いて3時間程度で端から端までたどり着けます。……本当に小さな国です。申し訳ありません」


 ガレイは時間や距離も知らなかったので教えられている。

 そこから考えると、3時間で縦断できるなら案外広くはないのでは? という気持ちになる。距離は大きすぎてよくわからなかったが。


「いや、謝られることでもねーが。むしろ大きすぎるよりわかりやすくていいだろ」


「旦那様っ!」


 このときガレイは5000平方キロメートルというのがどれだけ大きいかわかっていなかった。

 そしてガレイの気遣い(?)に感激したクロユリは、絶対にガレイを巨大帝国、いや世界統一国家の帝王としようと思った。


「……旦那様。例の武装集団ですが、拠点が殺人マシーンによって破壊され、そこの住人が散り散りになって逃げたうちの一つのようです。今のところ敵対の意思は見せていないどころか、従順ですらある様子です」


 クロユリがツクシからの連絡をすでに受けていたようで、そう知らせてくる。


 これだけ早くツクシが武装勢力に接触できたのは、重力制御による飛行ができるためだ。

 バイオロイドは普及型でも、ハイエンドモデルには威力も制度も劣るが重力制御が使える。

 そしてこれが、ガレイがバイオロイドに絶対に勝てない最大の理由だった。


 ガレイは重力制御が使えないのだ。


「従順ならまあ、わざわざ殺すこともないか?」


「そうですね。ツクシの姿を見ても侮るような様子もありませんし、受け入れる方向で、しばらく様子を見るということでいいと思います」


 武装集団たちは拠点が殺人マシーンに潰され、ミュータントや殺人マシーンがはびこる廃墟をさんざん怯えながら逃げてきていた。

 そこに、こちらに飛行してくる何かを見つけてしまったのである。

 飛行するような殺人マシーンは特に状態のいいものだ。それを目にした時点で、武装集団は生きることを諦めたのだとのちに語った。

 十代後半の美女の見た目であっても、武装集団にとってツクシは恐怖の対象以外の何物でもなかったのだ。



◆◇◆



 【ご主人様が】バイオロイドローカル掲示板 その786【頂点だ!】


 ・ガレイ様に絶対にバレてはならない

 ・ここのノリを外で出さない

 ・必要以上に喧嘩しない

 ・次スレは950が立てること

 ・ルールは随時追加される


 ・1 クロユリ

  新スレです



  ところで旦那様から離れて仕事をする人を募集中です


 ・2 マリー

  現在進行形で離れておりますが


  現在半分ほど囲みましたわ


 ・3 ツクシ

  同じく現在離れていますが


  もうガレイ様のもとに帰りたいのですが


 ・4 ススキ

  離れません!


 ・5 ヨモギ

  い、いやです……


 ・6 クロユリ

  この度の武装集団ですが、受け入れることになりました


  つきましては、この国の国民としてしかるべき教育が必要であると考えます


  また、見張るだけならば人工衛星からの映像という手もありますが、建物の中

  は見えませんし、変なことを考えないようにする抑止力という意味でも、近く

  に誰かがいたほうがよろしいのではないかと


 ・7 マリー

  任せましたわクロユリ


 ・8 ススキ

  頑張ってくださいクロユリ!


 ・9 ツクシ

  言い出したのはクロユリ


  つまり発言の責任を取る義務があるのでは?


 ・10 クロユリ

  上位者権限で無理やり決めるぞコラ


 ・11 ヨモギ

  あの……



  そういった警備のような仕事なら軍用のバイオロイドに任せればいいのでは?


 ・12 マリー

  それですわ!


 ・13 クロユリ

  天才です


 ・14 ススキ

  最高ですヨモギ!


 ・15 ツクシ

  良くやってくれましたヨモギ


 ・16 ヨモギ

  ……申し訳ありません新しく来るバイオロイドさん



  私たちの代わりに犠牲になってください


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― 新着の感想 ―
[一言] ド変態ショタ好きのお姉さん女房達、たまげたなぁ…いいぞ、もっとやれ!
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