表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

再び死出山へ


 その翌日の事だった。朝、目覚めた梨乃は窓を開けて周囲の『風』を感じる。普段と変わらない気配に混じって、死出山がある方向から、妙な『風』を感じた。

「清蓮さんが、私を呼んでる…?」

梨乃は外に出た。その『風』はどうやら気のせいではないらしく、少しずつその気配は強くなっていく。




 梨乃は卓と連絡して、死出山に行こうとした時、偶然玲奈と出会った。梨乃は、玲奈にもその話をする。

「死出山へ…?」

「うん、卓兄さんも同じ気配を感じたんだって、今から行ってくる。」

「私も行きたい!」

「俺達も行っていいか?」

勤と智もやって来て、梨乃にそう言う。梨乃は仕方ないなと思いながら、こう答えた。

「分かった、卓兄さんに聞いてみるよ」

梨乃は、そう言って玲奈達を連れて卓の家に向かった。




 そして、梨乃達は卓の車に乗って死出山に向かった。以前、梨乃の記憶を思い出す為に向かったが、その様子は以前と変わらない。

 

 だが、梨乃は『風』、魂の流れが以前よりも弱くなっている事に気づいていた。死出山の力が弱くなっている。そうなれば、この地が魂の循環に使われる事はなくなるだろう。恐らく、清蓮が梨乃を呼んでいたのは、それを伝える為だろう。



 

 梨乃は卓達を冥徳寺に預け、一人で死出山に登っていった。いつでも戦えるように御札と数珠は持ち合わせている。

もし、麓に何かあっても、智がみんなを守ってくれるだろう。それを信じて、梨乃は歩いていく。山に掛かる霧は深くなり、道も険しくなった。



 そして、梨乃は崩れかかった神殿に辿り着いた。『風の神殿』、風見清蓮が死出山を守護する為に造った神殿だ。梨乃かその中に入ると、眩い光に包まれ、風見清蓮の意思が残る亜空間に来た。


 

 そこでは、風見清蓮がずっと梨乃を待っていた。

「来たか、梨乃よ」

「清蓮さん、お呼びでしょうか」

清蓮は、力が弱まりつつある死出山の方を振り向いて、こう言った。

「この世にあるものは全て死に、滅びゆく。死出山とて例外ではない。死出山の力を使って存在している我の意思も、それと共に滅ぶだろう。」

清蓮は、自らの術で御札を一枚燃やした後、こう言った。

「梨乃、巫蠱(ふこ)の術は知っているか?」

「それは…、何でしょう、霊術の類ですか?」

「陰陽道で使われる術の一つだ、妖や虫を狭い壺や場所で戦わせ、生き残ったものを蠱毒(こどく)という強大な妖にする。我は決して生き物を粗末にしなかったが、それを使った陰陽師が居た。生きていた頃、我は都で妖達を退治していた。その時に出会った陰陽師だ。」

清蓮の背後で唸り声が聞こえた。梨乃がその方を向くと、黒い式服を着て、赤い目を幾つも持った異形の妖が居る。

「愚かだな、自らの術で妻子を滅ぼし、挙げ句の果てには自らを蠱毒と化すとは…」

清蓮は、その妖に御札を向けた。

「我の力が弱る所を付け狙ったか、宵宮義尚(よいのみやよしたか)!」

宵宮は、清蓮に向かって獣のように吠える。既に、人間だった頃の理性は残されてはいないようだった。

「梨乃、行くぞ」

「はい!」

梨乃と清蓮は、御札を構えて宵宮に向かって行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ