二人きりで
玲奈と智は、その後二人で歩いていた。智は玲奈が髪切った事に驚いているのか、中々声を出さない。
「智君、どうしたの?」
「いや、どうして髪切ったのかなって」
智は頭を掻きながら玲奈にそう言う。智は玲奈を前にして、思うように言葉が出て来ないようだった。
「大分切ってもらったけど、やっぱり前の方が良かった?」
「いや、可愛いよ」
智は顔を真っ赤にしながらそう答えた。すると、二人の間に割り込むように勤がやって来て、声を上げた。
「玲奈、髪切ったんだな!」
「うん!」
玲奈は勤に切った髪を見せていた。その間、智は玲奈の会話の間に入る事が出来ず、ずっとつまらなさそうにしていた。
その日は席替えで、玲奈と智は席が離れてしまった。玲奈の後ろには、勤が座っている。玲奈は、遠くにいる智を見ながら、勤と話していた。
「やっぱり寂しいか?」
「まぁ…、でも、離れ離れになった訳じゃないんだし」
すると、勤は玲奈に小声でこう話した。
「あの時の返事、まだしてないのか?」
「まだ…、二人きりになったら話したいなって思ってたけど…。」
「まっ、最近事件も起きないし、二人でゆっくり話したらいいんじゃないか?俺だって、梨乃さんと二人きりになる事はなかなかないけどな。二人だったらいけるだろ?」
「そうだね…」
玲奈は、放課後になったら、智と一緒に話そうかと思っていた。
そして放課後、玲奈は智と一緒に『光の樹』がある丘に来ていた。玲奈は、智に昨晩届いた手紙を見せる。
「これ、夜鳴飛脚っていう人から受け取ったんだけど…」
智が玲奈から手紙を受け取って読み始めた。どうやら、智には読めるらしい。
「えっと…、『玲奈さん、先日はありがとうございます。挨拶もなく立ち去ってしまってすみませんでした。玲奈さんに貰ったクッキーが美味しかったので、作ってみました。冥界では手に入らない材料もあって、大変でしたが、良かったら食べてください。』玲奈、いつの間に俺以外の死神と知り合っていたなんてな」
「死神からだったの?」
「ああ、と言うか夜鳴飛脚っていうのが死神の配達員なんだけどな」
智によると、夜鳴飛脚というのは、冥界で郵便の役割をする死神達の事なのだそうだ。また、手紙や荷物を配達する以外に、文書を書きまとめるという仕事もしている。
「そのフォレスって子、クッキー作ったんだってな。冥界で材料集まらないのに、よく作ったもんだよ」
智は袋からクッキーを取り出して食べた。固くて甘さは控えめだが、ちゃんとクッキーになっている。玲奈も、智の反応を見て一つ食べた。お菓子という文化がなく、フォレスもお菓子作りは初めてのはずだが、よくできている。
そして、クッキーを食べ終わった玲奈は、今までずっと考えていた自分の気持ちを、率直に智に伝える事にした。
「私、智君と同じ事を思っていたよ。」
玲奈は智の手を取ってこう言った。
「私、智君の事が好きだよ。ありがとう、こんな私の事を大切に思ってくれて。」
それを聞いた智は顔を赤くして、笑った。
「玲奈…、こちらこそありがとう」
智は玲奈の手を握り返して、そう答えた。
玲奈と智は手を繋ぎながら、『光の樹』に寄り掛かっていた。そして、他愛のない話を日が暮れるまでずっとしていた。夏の日差しが、そんな二人の間を照らしていた。




